鎌倉には欠かせない、2022年で開業120年を迎える人気電車。その姿を見るだけで、乗るだけで心浮かれるのはなぜだろう。乗れば約18分で着いてしまう長谷〜江ノ島間の7駅を、山から海から住宅地から、追っかけながらのんびり散策。

極楽寺に見つけた緑深きパラダイス

鎌倉駅に着いたらば直行するは江ノ電乗り場。鎌倉の街に後ろ髪も引かれるけど、今日は江ノ電を楽しむのだ。はりきって先頭車両に乗り込んでいざ出発。

長谷駅で降りて、人けのない路地からぷらぷら。ガラス越しに見えた焼きたてのシナモンロールにひかれて『CINNAMON & MORE』へ。アメリカンな朝食プレートでおなかが満たされたら、長谷寺に鎌倉大仏と名所や店が集まる駅北側もちょっと巡ろう。遠足の中高生に紛れて観光気分も高まり、坂を上れば極楽寺。山の上の集落か、と思いたくなるほど静かでのどかな住宅地。小さな「coffee」の看板に導かれ恐る恐る入った『テラスカフェ YUKI』では、まさか見上げる崖に緑が生い茂る癒やしのテラスが待っていたとは。風が通るたびにサワサワと葉が揺れ、ウグイスなどいろんな鳥のさえずりが響き渡る。ああ、ここは極楽か!

長谷の路地にはアンティークの食器や生活道具の無人販売が! 鎌倉の良心が試される!?
長谷の路地にはアンティークの食器や生活道具の無人販売が! 鎌倉の良心が試される!?

海岸と並走すること、1世紀以上。通れば時間がわかる、沿線住民にとって時計!?

江ノ電と合流して並んで歩けるゆるやかな下り坂。海が見えた! と思えば、稲村ケ崎に到着だ。迷い込んだ小道の奥には鉄橋の架かる野趣ある絶景水路を発見。でも目の前で暮らす人はさぞうるさかろうと思えば、
「もう時計代わり! だいたい12分おきで来るから、そのたびに何時くらいだかわかるのよ」と笑う。

線路はいよいよ海と近づき、七里ガ浜では丘を上がるうちに見つけたウクレレ店に入店。興味はあっても手が出せずにいたけど、ウクレレの似合う鎌倉でなら!
「このあたりはなぜかウクレレのあるご家庭が多くて、弾く人も多いし教室もある。ウクレレが身近なんです」
と『Quiet ViIlage』の堀口潤さん。海沿いでは手作りアイスも頰張っちゃおう。

稲村ケ崎駅そばの水路を渡る鉄橋。ちょっとした渓谷みたい。
稲村ケ崎駅そばの水路を渡る鉄橋。ちょっとした渓谷みたい。
七里ケ浜駅と鎌倉高校前駅の間の踏切で、江ノ電と海。乗客も眺望を楽しんでいるようだ。
七里ケ浜駅と鎌倉高校前駅の間の踏切で、江ノ電と海。乗客も眺望を楽しんでいるようだ。

海と江ノ電に挟まれ歩き続けて、さて腰越。漁師町の空気を感じつつ、義経&弁慶にちなんだ古寺に丼にと堪能。至近距離で道路を堂々と走る江ノ電にはドキドキが止まらない。

1日かけてようやく着いた江ノ島駅。だけど名残惜しくて寄り道・回り道。ボート小屋に“川沿いの台所”なんて看板を目にしたら寄らずにはいられない。『やすざみや』と覚えにくい店名も
「腰越の漁師だった“やすざえもんさんの網屋”という意味」
と聞いて納得。韓国や台湾の味も取り入れた野菜たっぷりの料理は、小躍りするほど箸が進む。おいしいオマケで疲労回復。最後まではしゃがせてくれる江ノ電沿線歩きだった。

江ノ島駅前にあるピコリーノ(小鳥付き車止め)。地元の人が服を手編みし、毎月1日に衣替えをしているとか。
江ノ島駅前にあるピコリーノ(小鳥付き車止め)。地元の人が服を手編みし、毎月1日に衣替えをしているとか。

1. CINNAMON & MORE(シナモン アンド モア) [長谷]

アメリカンダイナー気分で朝食を

ニューオーリンズで暮らした大久保尚子さんが現地のダイナーを懐かしみ2019年に開いたカフェ。看板はシナモンロール250円だが、パンがなくなるまでなら何時でも食べられるブレックファースト1300円もぜひ。自家製ソーセージがたまらない。

●7:30〜16:00、水・木休。☎090-9335-5384

2. 日曜製作所 [極楽寺]

日曜製作所

鎌倉と江の島でTシャツ店を営む甲州優さんが、年代物のミシンを駆使してサコッシュ4800円やサーフパンツ、ジーンズを手がける工房。特殊なミシンのハンドル操作でぬり絵のように描かれるチェーンステッチの技術にも感動。

●11:00〜日没、不定休。☎0466-67-0976

3. アナン [極楽寺]

古民家に開かれた、スパイスの小宇宙

築100年の古民家でスパイス輸入卸やオリジナルスパイスの開発を行う会社。玄関奥の一室は売店として開かれ、多彩なスパイス、カレーをはじめインド料理が簡単に作れるキットなどを販売する。スパイスの量り売りも便利。

●11:00〜16:00、不定休。☎0467-25-6416

4. テラスカフェ YUKI [極楽寺]

住宅の裏に現れる、穴場カフェ

崖下の緑茂る住宅の庭に、ウッドデッキのテラスを設けた小さなカフェ。風がよく抜け避暑地気分が味わえる。地元食材を使った鎌倉パンのしらすトースト650円は、四万十川の海苔の佃煮が絶妙なアクセント! コーヒーフロート650円。

●10:30〜17:30、不定休。☎0467-95-2478

5. minamo [稲村ヶ崎]

使いたくなる生活雑貨と出合える部屋

部屋のようにくつろぐ店内に並ぶのは鎌倉のコーヒー豆に東京の手刺繍アクセサリー、泉州のタオルに岩手の器など、全国の作り手から届く生活用品や雑貨。「私がときめくものや愛用するものを選んでます。でも集まりすぎちゃって(笑)」と中村紘実さん。企画展もあり。

●11:00〜18:00、火・水休。☎なし

6. Quiet Village(クワイエット ビレッジ) [七里ヶ浜]

マニアな一点ものも、初心者思いの商品も

堀口潤さん、暁子さん夫妻が営むウクレレ専門店。国内メーカー製や作家による一点物など、優れた国産ウクレレが充実。初心者でも使いやすい1本を選んでくれる。暁子さんお手製のブローチ600円〜やシロクマ人形も愛らしい。

●10:00〜18:00、月・第4日休。☎0467-91-1124

7. HOLIDAY ICE CREAM STORE [七里ヶ浜]

目移りしちゃう、楽しいバラエティ

バナナ&マンゴーソルベ(左)、チェリーチョコレート(右)。その下にはともに県産牛乳を使ったミルク。ダブル 600円。
バナナ&マンゴーソルベ(左)、チェリーチョコレート(右)。その下にはともに県産牛乳を使ったミルク。ダブル 600円。

海に面した商業施設の一角に今年1月オープンした手作りアイスの店。フレーバーは定番のミルクをはじめ常時9種類ほどで、旬の果物やその時々で手に入るユニークな素材も使う。口どけがよく、喉の渇かない自然な甘さだ。イートインスペースあり。

●11:00〜18:00、水休。☎なし

8. 満福寺 [腰越]

義経&弁慶ゆかりのあれこれが!

天平16年(744)に行基が建立したとされる真言宗大覚寺派の寺。源義経が兄・頼朝へ宛てた手紙(腰越状)をしたためた地といわれ、その下書きを書いたのは弁慶だとか。境内にはその伝説を表す石像や欄間の彫刻(写真)や、弁慶の腰掛石や腕試しの手玉石も。

●☎0467-31-3612

9. Rei [腰越]

ハワイアンと思わせて魚料理が充実!

あじフライ 600円〜、5種ほど刺し身が付く刺身定食 1880円。
あじフライ 600円〜、5種ほど刺し身が付く刺身定食 1880円。
釜揚げしらすとまぐろ漬けが乗った弁慶丼 1580円。
釜揚げしらすとまぐろ漬けが乗った弁慶丼 1580円。

ハワイムード漂う店内で、刺し身や揚げ物などの魚料理が充実する食堂。そばの満福寺にちなんで義経、静御前、弁慶の3つの海鮮丼もあり、あじフライはふっくらして肉厚で食べ応えあり。店内の造りも半地下で面白い。

●11:30〜14:30・17:00〜22:00、火・水・木休。☎0467-32-8409

風情ある外観。
風情ある外観。

10. 星野写真館 [江ノ島]

もうすぐ百寿の文化財級建築

丸窓が2つ並んだモダンな建物は関東大震災直後に建てられた木造2階建て。飴色の階段も天井の高い撮影スタジオも時が止まったよう。「画家志望だった2代目の主がデザインしたそうです」と4代目の星野敬三さん。

●9:00〜17:00、不定休(予約制)。☎0467-32-4237

11. 小さなパン屋ena [江ノ島]

週2日だけ開く、幻的ベーカリー

食全パン 530円、長時間発酵フランスパン 281円、豆乳とココアのスコーン各 194円。
食全パン 530円、長時間発酵フランスパン 281円、豆乳とココアのスコーン各 194円。
息子さんが作ったアプローチ。
息子さんが作ったアプローチ。

植栽に囲まれた細く長いアプローチの先に現れるパン工房。笑顔で迎えるenaさんが2014年からマイペースに少量ずつ、5種ほどを製造販売する。塩麴とオリーブオイルを使った全粒粉の食全パンは毎日でも食べたい。

●10:30〜17:00、金・土のみ営業。☎080-5485-8653

12. やすざみや [江ノ島]

アレンジ上手な多国籍料理に大満足!

前菜おまかせ盛 550円、ヤンニョムチキン、自家製水ぎょうざ 各770円、全粒粉ペンネの生姜クリーム 1430円、YOROCCO BEER 900円。
前菜おまかせ盛 550円、ヤンニョムチキン、自家製水ぎょうざ 各770円、全粒粉ペンネの生姜クリーム 1430円、YOROCCO BEER 900円。

境川沿いにひっそりある飲み食い処。「日本の食卓はいろんな国の料理が混ざって出るから楽しい」と店長兼料理人の飯塚純子さんは、和洋ほか近隣国の韓国、台湾の味も意識。アレンジ上手で野菜もたっぷり味わえる。

●17:00〜22:00(土・日は16:00〜)、月・火休。☎0466-77-3022

取材・文=下里康子 撮影=加藤昌人
『散歩の達人』2022年6月号より