あっという間に梅雨が明けてしまった。「この季節には梅だろ!」と勇んで『わかやま紀州館』を訪れた日は薄曇りだったのに、店を出る頃にはカンカン照り。帰り道に汗だくで「夏じゃん!」と半ギレになりながら、リュックサックに顔を近づけると購入した完熟梅の甘い香りがした。梅って手に入れるだけで、心が安らぐらしい。 今回ご紹介するのは、和歌山県のアンテナショップ『わかやま紀州館』。梅干し、梅酒!以外の一面もお伝えしよう。

予算1000円!旅とは

我が家の電子レンジが壊れたことにはじまる。旅行に行けるその日まで残そうと決めていたお金が最新家電になってしまった。そのショックと出かけられないストレスが沼の化身になって現れて、私を飲み込む。節約と旅を両立できる場所を求めて、行き着いた先がアンテナショップだった。

ここでアンテナショップを巡る1000円旅、略して「せんたび」のルールを説明したい。

・予算1000円
・予算内ならなにを買ってもOK
・オーバーしたら、自腹

1000円ポッキリでご当地を堪能する品を買う。これだけだ。

交通会館にある『わかやま紀州館』の旬は梅雨!?

『わかやま紀州館』は、有楽町のアンテナショップのメッカでもある交通会館に構えている。名産品の梅や柑橘、魚介を使ったアイテムに加えて、なかなか手に入らないローカルグルメも。販売スペースの横には和歌山県の観光や移住の相談コーナーも併設している。

和歌山観光PRのゆるキャラ、“わかぱん”と共に出迎えてくれたのは、わかやま紀州館の物産担当で県出身者の橋本さん。

知らない人のために解説しておくと、和歌山県にあるテーマパークのアドベンチャーワールドにはジャイアントパンダがいる。関西人としては、アドベンチャーワールドと聞くとテレビCMのあの曲とともにシャチとパンダがフワッと頭に浮かぶのだが……、気になる人は検索してほしい。

橋本さんにさっそく店を案内してもらう。

6月中旬から7月初旬までは名産の梅が旬を迎え、大量に入荷。店先も梅の香りが漂っている。「扱っているのは南高梅がほとんど。パープルクイーンという品種もあり、時期にもよりますが、完熟と青梅を揃えています。梅干し、シロップ、ジュースなど作るものによって向いている熟度が違うので、店内のポップやスタッフに聞いて参考にしてください」と橋本さん。

梅は2〜3日に一度入荷し、取材中にも問い合わせ電話が入るほどの人気ぶり。橋本さんの話からも、かなり問い合わせに慣れているのがわかる。「梅干しって、作ったことありますか?」と尋ねると「もちろんです」とのお答え。今はジップ付きのビニール袋で簡単に作れるレシピもあり、初心者でも手軽にチャレンジできると教えてくれた。頼もしい。

梅談義で盛り上がりながら、店内へ。もちろん、一番品揃えが多いのは梅干しだ。「常時60種類以上揃えていて、それぞれ味わいもかなり違います」と橋本さん。

甘みが少なく塩味が強い白干梅、シソを一緒に漬け込んで香りも豊かなしそ梅、はちみつ入りで少し甘みのあるはちみつ梅などバリエーション豊かで、商品の指名買いも多いのだそう。にらめっこしながら好みの梅干しを探すのもいいし、スタッフに聞くのもおすすめだ。

ドリンクコーナーはオレンジ一色で、柑橘類がメイン。みかん、じゃばらなどの濃厚ジュースやゼリーが並ぶ。お酒コーナーは梅酒多めで、和歌山のウリが顕著にわかる。

和歌山県は、黒潮による海産資源が豊か。お店には水揚げしてすぐ冷凍したものも入荷し、年中海の幸が手に入る。ほかではあまり見かけない鯨も。古くから鯨類を食べる文化をもつ地域もあり、おつまみにぴったりなヒレの部分、テッパは常時扱っているのだそう。

10月から5月頃までの季節限定で郷土料理のさんま寿司も入荷するので、こちらも要チェックだ。

売り上げ第一位は、じゃばら?

一番売れているものを聞くと「じゃばらです。おいしいだけでなく栄養価も高くて、今日も人気商品が売り切れてしまって……。」と橋本さん。

じゃばらとは、和歌山県北山村で自生していた柑橘で、ユズやカボスと同じように果汁を利用する。花粉症にきくという噂でその存在が広まり、強烈に苦くて酸っぱうまい独特なお味で、料理に使ったり、ソーダで割ったり、他の柑橘と同じように使う人が多いという。

「県出身者が買っていくアイテムを教えてほしい」とお願いすると、迷わず店の真ん前の目立つ場所に案内された。ずらりと並んでいるのは、ダイナミックタレ。

橋本さんは、「昭和40年から地元の調味料メーカーさんが作っていた、地元で愛されるタレです。実は、新型コロナの影響で業務用に卸す数が減って製造中止になっていたのですが、つい先日他のメーカーさんががレシピを継いで復活しました。野菜炒めに、チャーハンに、料理に欠かせないご家庭もあるんじゃないでしょうか」と語る。“変わらぬこの味”と書かれていて、「地元民にとってこんなうれしいことはないだろうな」と思いを巡らせる。

はんぺんみたいだと思って手にとった南蛮焼。ずっしり重く身が詰まっていて、はんぺんとは別物なことがわかる。

「見た目はやわらかそうですが、かなり弾力があるんです。魚を崩して焼いているから焼きくずしとも呼ばれる地元のごちそうで、お祝いごとのときに食べます。ちょっと高いですが、お正月はすごく売れますよ」と橋本さん。南蛮焼は冷蔵コーナーに何種類かあったが、2000円以上する商品も。気になるが、1000円にはオーバーしてしまうな〜。

続いて教えてもらったのは、冷凍みかんの横に大量に入荷していたアイス。グリーンソフト……ってことは抹茶味?

「世界初の抹茶ソフトといわれています。安政元年創業のお茶屋さん、『玉林園』が夏にお茶の売り上げが下がることから考案されたそうです。もう県民なら誰でも知っています」と橋本さん。

昭和33年に生まれたそうで、抹茶ソフトクリームは誕生してから60年以上経つらしい。ちょっと気の抜けたアヒルちゃんのイラストも可愛い。

帰り際にちょっと食べ歩き。私はアンテナショップにソフトクリームがあると見逃せないタイプの人間だ。

袋を開けると、アイス部分にもコーンがかぶさっている。これを外すと……

淡いグリーンのアイスがお目見え。国産茶葉100%使用で、スッキリとした味わい。小ぶりでサッと食べていくのにちょうどいい。

たっぷりお店を堪能してお会計。
さて、今回の1000円セットは……?

私の和歌山県1000円セット

こちら!いつものごとく、気になる商品たくさんで誘惑に悩まされるも、海のつまみと梅干しサワーのコンビネーションに着地した。

くじらのテッパ 360円
はちみつ仕立て「極」 269円
ほねく 378円

しめて、1007円!これを盛り付けると……

ちょい飲みセットが完成。梅雨明けの日差しに梅干しサワーが映え、おつまみたちはいい感じに茶色い。

くじらのテッパはポン酢であえて、大葉を乗せてみた。心地よい歯ざわりでさっぱり食べ進められ、合いの手を打つように梅干しサワーをごくりと飲み進める。

梅干しは勝僖梅という和歌山でも評判のブランド。購入したのは、1粒ずつ包装された高級なもので、お中元やご挨拶などの贈答用に使われるものだそう。1粒から購入できるので、手軽に高級梅干しが味わえる。

はちみつ梅で、粒が大きくかじると肉厚で甘みがじんわりと広がる。くだものを食べているようなリッチな食べ応えだ。

黒はんぺんにも似た、ほねく。南蛮焼きと同じ冷蔵コーナーに並べられていて、橋本さんから「おでんや汁物に入れて、普段から和歌山県民の食卓に並ぶ」と聞いたので買わずにはいられなかった。

太刀魚だけを使い、骨ごとすり潰してあるので、歯ざわりが楽しい。冷やしてわさび醤油、焼いて生姜醤油のいずれでもおいしくて、クセが少なく料理にも使いやすそう。5枚入りで300円なのもありがたい。

1000円セットから漏れた、はみ出し購入品!

店頭に漂う香りに誘われて、1kg1700円の完熟の南高梅を「えいや」と購入した。知らぬ間に同行していた編集者のシラタキも梅を抱えてレジに並んでおり「梅酒にしようかな……」と言っていた。梅の香りに勝てるものはいないのだ。

ひとりで梅仕事をするのは初めてだと伝えると、橋本さんやレジにいたスタッフさんから、おすすめレシピを教えられ、丁寧にアドバイスももらった。自宅に帰って広げてみると、部屋中が梅の香りに包まれる。惚れ惚れする完熟具合に、このままずっと眺めていたい気持ちになった。

悪くならないうちに塩をして、教えに従いジップ付きのビニール袋へ。記事を書いている今は、重石を乗せてでた水分(梅酢と呼ばれる)に梅を漬け込んでいるところ。キッチンへ行くたびにふんわり梅の香りがして、少しずつ梅干しっぽく変化していく様子にニヤニヤしている。

旬の時期には、生産地のアンテナショップへ

梅といえば、和歌山県!と旬を狙ってうかがったら大正解。おいしい旬の味を狙って、名産地といわれる場所のアンテナショップにいくとありがたい実りが手に入る。夏は岡山県の桃、新潟県の枝豆、秋になったら高知県の鰹……次はどこへいこうか。

わかやま紀州館(わかやまきしゅうかん)
住所:東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館地下1階/営業時間:10:00〜19:00 (日・祝は10:00〜18:00)/定休日:無/アクセス:JR・地下鉄有楽町駅より徒歩1分

取材・文・撮影=福井 晶

福井 晶
ライター
1990年生まれ、兵庫県出身。酒場が人生の友と勝手に決め込む食いしんぼうライター。相撲の番付表の貼ってある居酒屋が好き。