都電荒川線の沿線には王子や大塚といった多くの酒場を擁する街があります。しかし、今回注目したのは地元密着で元気いっぱいに営業する“下町酒場”。街をとことん愛し、街にとことん愛されている店をピックアップしました。

オール荒川区な停留場前酒場『吉まぐれ屋』[三ノ輪橋]

荒川おでん5点盛り980円に長野県の井筒長700円(120㎖)。蔵元の黒澤酒造からは仕込水ももらっている。左の皿は焼きにくまん380円。
荒川おでん5点盛り980円に長野県の井筒長700円(120㎖)。蔵元の黒澤酒造からは仕込水ももらっている。左の皿は焼きにくまん380円。

お店からあふれ出るのは“荒川区愛”。名物の荒川おでんに使用する食材のほとんどを区内の老舗から仕入れており、出汁は地元の鰹節問屋にオリジナルの調合を依頼したものだ。「南千住のソウルフード・にくまん(魚のすり身の揚げ物)もぜひ。ウチだけで荒川区を観光した気分になってもらえれば」と、オーナーの林和広さん。おでんの出汁が隠し味の牛すじカレー 1000円も人気の一品なんです。

おでんの締めは牛すじカレーで決まり!
おでんの締めは牛すじカレーで決まり!
提灯の文字は江戸手描き提灯の伝統を受け継ぐ町屋の『前森商店』に依頼した。
提灯の文字は江戸手描き提灯の伝統を受け継ぐ町屋の『前森商店』に依頼した。

『吉まぐれ屋』店舗詳細

吉まぐれ屋(きまぐれや)
住所:東京都荒川区南千住1-16-8/営業時間:17:00〜23:00(土・日・祝は12:00〜)/定休日:月・火(祝の場合は営業)/アクセス:都電荒川線三ノ輪橋停留場からすぐ

路地裏で珍しい魚たちに舌鼓『海鮮DINING 永』[町屋]

魚は「渦巻処理」という新手法で活け締めされたものも。コシオリエビの唐揚げ500円は殻も美味。常時数種類の八海山の地ビール各900円も楽しめる。
魚は「渦巻処理」という新手法で活け締めされたものも。コシオリエビの唐揚げ500円は殻も美味。常時数種類の八海山の地ビール各900円も楽しめる。

「えっ?」と思うほど細い路地の奥に海鮮メニューだけで勝負する名店あり。まずは、おまかせ刺盛3点1000円を注文。生インドマグロと共に、ヨロイイタチウオ、クロザコエビという見慣れない魚介が登場。「仕入れは足立市場がメイン。市場での人付き合いを深めた結果、親しくなった仲卸さんが入荷情報を教えてくれます」と、オーナーの小林永昌さん。停留場から遠くても歩く価値あり。

アブラボウズの煮付け950円は舌の上でとろける。
アブラボウズの煮付け950円は舌の上でとろける。
迷うこと必至の海鮮メニューがびっしり!
迷うこと必至の海鮮メニューがびっしり!
木彫りの鮭が目印。
木彫りの鮭が目印。

『海鮮DINING 永』店舗詳細

海鮮DINING 永(かいせんダイニング はる)
住所:東京都荒川区町屋8-4-20/営業時間:11:00〜21:00(14:00までは定食のみ)/定休日:日・祝/アクセス:都電荒川線町屋駅前停留場から徒歩9分

本気のラーメンまである地元酒場『居酒屋 姫』[東尾久三丁目]

懐かしのすももサワー495円。ごま豆腐の揚げ出し660円の豆腐は手作りで、鶏そぼろチーズ550円も手間隙かけた一品だ。
懐かしのすももサワー495円。ごま豆腐の揚げ出し660円の豆腐は手作りで、鶏そぼろチーズ550円も手間隙かけた一品だ。

お店に入ると、静かな住宅地のどこにこんなに大勢の人がいたのかと驚くほどの繁盛ぶり。オーナー・森川吉成さんのおすすめは懐かしのすももサワー。下町情緒があっていいですね。面白いのはメニューに締めレベルを超えたラーメンがあること。聞けば鶏ガラと豚骨を長時間煮込んだ自家製スープに、カエシも手作りするというこだわりよう。近所にあったら常連になりたいと思わせる店。

オーナーのラーメン愛が炸裂する一杯!
オーナーのラーメン愛が炸裂する一杯!
ワンオペで働く森川さんを気遣った常連客が皿洗いを手伝うシーンも。
ワンオペで働く森川さんを気遣った常連客が皿洗いを手伝うシーンも。
地元民が夜な夜な集う店。
地元民が夜な夜な集う店。

『居酒屋 姫』店舗詳細

居酒屋 姫
住所:東京都荒川区東尾久2-19-8/営業時間:17:00〜24:00/定休日:火/アクセス:都電荒川線東尾久三丁目停留場から徒歩4分

沿線唯一の“ホーム上”酒場『炭火焼 御代家』[庚申塚]

炭火で焼き上げるねぎま、つくね、レバーは各220円。とんこつ煮680円は料理酒ではなく焼酎でコトコトと煮込むのが御代家流。
炭火で焼き上げるねぎま、つくね、レバーは各220円。とんこつ煮680円は料理酒ではなく焼酎でコトコトと煮込むのが御代家流。

停留場のホーム上にあるので、電車を降りて数歩で入店。生まれも育ちも庚申塚の店主・御代恒(みよひさし)さんは「僕が昔からよく飲んでいる『六代目百合』はどう?」と、大の焼酎好き。国分酒造など人気でレアな銘柄も多数取り揃えている。フードメニューは日替わりなので、とりあえず串をお任せで。客層は地元の人と、都電の利用者が半々。ホームから気になって、のぞき込んで来る客も多いそうだ。

さつま寿は前割焼酎として召し上がれ!
さつま寿は前割焼酎として召し上がれ!
店内にはシックなジャズが流れている。
店内にはシックなジャズが流れている。
都電のホーム上とはいえ、地主が所有する一般の土地だそうだ。
都電のホーム上とはいえ、地主が所有する一般の土地だそうだ。

『炭火焼 御代家』店舗詳細

炭火焼 御代家(すみびやき みよけ)
住所:東京都豊島区西巣鴨2-32-10/営業時間:17:30〜24:00/定休日:毎月5・15・25日/アクセス:都電荒川線庚申塚停留場からすぐ

旬の食材を燗酒とワインで堪能『酒菜 ほくら』[巣鴨新田]

ポークのグリル1580円(写真は2人前)は長野県上田市・『大桂商店』の味噌でいただく。料理に一番合うのは燗酒とのこと。常時60種類以上あり。
ポークのグリル1580円(写真は2人前)は長野県上田市・『大桂商店』の味噌でいただく。料理に一番合うのは燗酒とのこと。常時60種類以上あり。

“北大塚エリア”で気炎を上げるダイニングバル。この場所で勝負することを決めた店長・中本涼さんが愛するのは純米酒と自然派ワイン。「千葉県四街道市の農家から仕入れている西洋野菜を味わってみてください」と、旬の食材から日々メニューを考える。目玉は甘くてモチモチとした食感を味わえる信州太郎ぽーくのグリル。フランクな中本さんとの会話を楽しみながら燗酒の世界に誘われたい。

エゾ鹿の赤ワイン煮込み1380円には自家製パンを添えて。
エゾ鹿の赤ワイン煮込み1380円には自家製パンを添えて。
彩り豊かな西洋野菜たちを味わおう!
彩り豊かな西洋野菜たちを味わおう!
週末は店頭で野菜を販売。
週末は店頭で野菜を販売。

『酒菜 ほくら』店舗詳細

酒菜 ほくら
住所:東京都豊島区北大塚3-25-11 アサヒ大塚ビル1F/営業時間:17:00〜翌2:00(土・日は14:00〜で要予約)/定休日:火/アクセス:都電荒川線巣鴨新田停留場から徒歩3分

癒やし系のご夫婦が営む串焼き店『澤』[向原]

赤ワイングラス350円、串焼きはカシラ、白、レバー各150円とお安い! 鶏手羽大根煮480円はマスターご自慢の一皿。
赤ワイングラス350円、串焼きはカシラ、白、レバー各150円とお安い! 鶏手羽大根煮480円はマスターご自慢の一皿。

寡黙なマスター・下澤洋勒(ようろく)さんとチャーミングなひとみさん夫妻が営む串焼き店。もともと建築設計士だったマスターの手による内装はおしゃれで和モダン。その雰囲気にしては、値段はリーズナブルだ。隣のテーブルの男性客曰く「おいしいと評判を聞いて栃木から来たんです」。赤ワインを注いでくれたひとみさんは「私、いつも多めに入れちゃうのよ」。そんなやり取りにも癒やされる空間だ。

締めは玄米の焼おにぎりセット500円を注文!
締めは玄米の焼おにぎりセット500円を注文!
常連客同士の会話が大いに弾む。
常連客同士の会話が大いに弾む。
大塚駅からも歩けるが、やっぱり都電で向かいたいものだ。
大塚駅からも歩けるが、やっぱり都電で向かいたいものだ。

取材・文=石原たきび 撮影=逢坂聡