『散歩の達人 日帰り低山さんぽ』より、旅先で気軽に楽しめる散歩コースを紹介。歩行時間や歩行距離も明記しておりますので、週末のお出かけにご活用ください。 鳶尾山の先、八菅神社は八菅修験で知られる神社。修験道の開祖と言われる役小角(えんのおづぬ)や奈良時代の僧、行基が八菅山と大山の峰々で修行をしていたという。昔は修験者の行場、現代は健康ウォーキングの道、どこか通じるものがあるのでは。どちらも身体を使い、山から生きる力を得るというところは、ほとんど一緒ではないか。 <神奈川県 厚木市・愛川町>
◆散歩コース◆
体力度:★☆☆
難易度:★☆☆
- 登山シーズン 1月〜6月、9月〜12月
- 最高地点 234.1m(鳶尾山)
- 登山開始地点 99m(鳶尾団地バス停)
- 歩行時間 2時間40分
- 歩行距離 約7.5km
スタートは本厚木駅からバスに揺られて約半時間、鳶尾団地バス停から。登山口の入り口になる天覧台公園まで車道を歩く。
団地の中を抜けて5分も歩くと公園へ。およそ200段の石段が待っていた。上がって行くと背後に大山が見えたが、春霞のせいで、なんとも今日はもわっとしている風景だ。それはまた春らしい風景ともいえるが。
山の中腹に広く平たい場所があり、かつては小屋のようなものがあった。これが金毘羅宮の跡のようだ。ところが令和になり、社が朱色の鳥居も鮮やに再建された。金毘羅宮は1650年(慶安3)に創建され、相模、武蔵国では最古のものらしい。
その最古の宮から少し先には、びっくりの展望台。高い、高すぎて登りたくない。らせん状の階段がぐるぐると2回転ほど。天まで届くような展望台である。高さは17m。
展望台からいったん下って、再度上がると鳶尾山山頂だが、その手前の西側が開けていた。近くにいたおじさんは、ここからの眺めが好きだとおっしゃってました。
今日は春霞なのでいまひとつだが、眺めは悪くはない。左から高取山、華厳山、経ヶ岳だろう。
鳶尾山の山頂から愛川町の市街地を望む
鳶尾山の山頂は広い。山頂の周辺には桜の木が植えてあり、桜の名所でもあるという。展望もまあまあで、北側の下方に中津川と愛川町の市街がよく見える。丹沢方面の眺望もまずまず。
山頂から舗装の道が横切る鳶尾峠(別名やなみ峠)に出て、舗装の林道歩きに。八菅神社方面に下ると、やがて八菅神社の鳥居に到着。石でつくられた鳥居が重厚でいい感じだ。そばに八菅山の説明板。それによると、八菅山は古名があり、蛇形山(じゃぎょうさん)といった。山容が竜に似ていることからで、つけたのは日本武尊(やまとたけるのみこと)だそうだ。近くには剥げかかった「八菅山修験場跡要図」があり、ちょっとすごいところなのだと初めて知った。八菅神社は明治期の神仏分離で神社になったが、江戸期までは別当寺・光勝寺のほか、院坊が五十余もある修験の一大霊場だった。
女坂を使わずに、直進する男坂の石段を上がって八菅神社へ上がった。大きな社殿が一大霊場の雰囲気を今も醸し出しているように思えるほどだ。見事な造り。
登山道は本殿の裏手から続く。すぐ桜の名所でもある八菅山いこいの森の中にある「お花見広場」に。
荘厳な修験の雰囲気に浸っていたが、裏手に回ると、この落差。さすが日本だ。ということで、お花見広場からゴルフ場脇の道を通り、下山にかかった。
山歩きメモ
八菅神社から裏手に行かずに鳥居のほうに戻って、中津川の八菅橋を渡って国の有形文化財、古民家山十邸に寄る手も。明治期の建物で、戦前の思想家、大川周明が住んでいた。
アドバイス
このコースでは土道が半分もない。最初の階段を登り切ったところから鳶尾峠くらいまで。あとはすべて舗装になる。急坂もないので軽めのウォーキングシューズでもOKだ。
八菅神社
修験道の開祖、役小角が入山したという古い神社
八菅修験で知られる八菅神社は修験道の開祖、役小角が703年(大宝3)に入山し、修行を開始したところだとか。中世以降は一帯が修験道場として発展していく。江戸時代に入ると天台宗の本山派に属し、最盛期には50余りの院坊を擁した。大きな社殿は1866(慶応2)の建立。ちなみに八菅修験は明治初期の修験宗廃止令で解体。
『居酒屋 十和田』
駅前に王道の居酒屋あり。昼から飲めるうれしいお店
昼から飲める店ということで昔から一部の人に人気があった店のようだ。駅前で午後も早い時間に店を探すと、やはり『十和田』に引き寄せられてしまう。安いわりには魚なども旨い。安かろうまずかろうでは誰も行かない。おすすめ。
●11:00〜22:30(22:00LO)、日・月休。 小田急電鉄小田原線本厚木駅から徒歩2分。 ☏046-224-8510
取材・文=清野編集工房
『散歩の達人 日帰り山さんぽ 低山をきわめる!』より
清野 明
編集者
散歩の達人ムック『日帰り山さんぽ』シリーズ編集長。1994年、幻の雑誌「探険倶楽部」編を立ち上げる(4号で休刊)。『散歩の達人』では創刊の頃から「東京探険倶楽部」を10年近く連載。昨年から「ニッポン面影散歩」を連載中