チェーン店が連なるショッピングモールとは違う、唯一無二のお買い物の場、商店街。ここでは、昭和のノスタルジーが漂いながらも今の街に根差して生きている、そんな姿にグッとくる3カ所をご紹介。駅から決して近くはないがわざわざ出かけたくなるのです。

【角栄商店街[霞ヶ関]】

“ちょっと前の昭和”が息づく

DATE

開業:1964年頃
全長:約300m
アクセス:東武鉄道東上線霞ケ関駅から徒歩12分。埼玉県川越市霞ケ関北1〜4

霞ヶ関駅から大小の商店街を通った先に現れるのは、纏を組み合わせたような一対のポール。“霞ケ関”で“角栄”商店街とは名の由来に妄想を膨らませてしまうが、「この街は地元の角栄建設が開発した、通称、角栄団地という住宅団地だったんです」と、理事を務める『mibunka』の吉田尚平さん。造成開始は1964年。一面桑畑だった土地に約2500戸が計画され、それに伴い生まれたのがこの商店街だ。

年代により建物の構造は異なるが、基本は1階店舗、2階住居の商店建築。片道1車線の両側にずらっと連なり、中間地点あたりからアーケードが増築されている。商店街の組合会員数は現在46店で、生鮮三品から花に文具、自転車に家電、着物に洋服に酒、パンに菓子……。スーパーマーケットとも共存し、日常生活には困らない。シャッターが下りた店も目につくが、ここ数年のうちに『雑貨と音楽 amist』や『つまずく本屋ホォル』などの個人店も増え、買い物以外の過ごし方も楽しめるようになってきた。「同じ川越でも小江戸というほどの歴史はないし、新しいわけでもない。中途半端な時間軸が逆に面白いと思っています」と吉田さん。ちょっと近くの昭和を感じに行こう。

『mibunka (みぶんか)』目的いろいろ、集う人もいろいろ

『mibunka』の吉田さん(中央)、『つまずく本屋ホォル』の深澤さん(右端)と「地域生活応援団」の方々。
『mibunka』の吉田さん(中央)、『つまずく本屋ホォル』の深澤さん(右端)と「地域生活応援団」の方々。

吉田尚平さんが運営する小さな複合施設。現在は『つまずく本屋ホォル』、『38℃カフェ』、高齢者の困りごとを支援する有償ボランティアの『地域生活応援団』の拠点、コワーキングスペースで構成。

・12:00〜20:00、金休(地域生活応援団の受付は12:00〜14:00、金・日休)。
・☎049-299-7454

『つまずく本屋 ホォル』偶然の出合いが待っている

うっかりつまずき放られた本を誰かが手にするような偶然の出合いを作れたら、と店名に思いを込めて2021年に開店。新刊と古書が混ざり合い、シェア本棚も設置。「地元の方が売りに来るのは、時代小説や企業小説が多いです」と店主の深澤元さん。読者イベントもあり。

・12:00〜20:00、金休。
・☎049-299-7454

『雑貨と音楽 amist』いつもの暮らしに小さな華やぎ

笠間焼や益子焼をはじめとする作家もののうつわ、雑貨、音楽CD・レコードのセレクトショップ。カフェも併設するので、ゆったりと選りすぐりの品々を手に取り、視聴できる。おすすめは自家製のレモンスカッシュ450円。2階でライブも企画中。

・10:00〜16:00(土・日は〜17:00)、木休。
・☎049-211-5633

『魚福水産』目利きが選んだ豊洲発の新鮮魚介

ショーケースにズラリと並ぶ、いきいきとした魚介、調理加工品。1976年の開店以来仕入れは築地で今も豊洲市場ひとすじだ。「あまのじゃくだから変わった魚もあるよ」と大将。壁に貼られた常連さんお手製レシピもぜひ参考に。

・10:00〜18:30、水休。
・☎049-231-5326

『きものや嵯が野』川越の呉服店が表す地元愛

1978年創業の呉服店。訪れたこの日は店内に飾っている繭玉の虫干し中で、「以前は店でお蚕さんを育てたこともあるんですよ」と店主・野田幸雄さん。川越をテーマにしたオリジナル着物も1993年頃から制作。和雑貨も販売。

・10:00〜18:00、水休。
・☎049-233-1391

【寺下商店会[みずほ台]】

店は少数精鋭、快い人情がある

DATE

開業:1969年
全長:約450m
アクセス:東武鉄道東上線みずほ台駅東口から徒歩23分。または志木駅東口から東武バス「ららぽーと富士見」行きほか約13分の「寺下団地」下車すぐ。富士見市貝塚1〜2丁目

新河岸川のそばに位置し、今の風情はさしずめ、ひなびた温泉地の商店街。誕生はみずほ台駅開業の8年前。周辺で一番にできた商店街だった。「分譲住宅地のなかに整備され、昔は“横のデパート”と言われるほど何屋さんでもあったんだから」と当時を知る『御菓子司千草』の月岡秀己さん。意外にも飲み屋やスナックも20軒近くあり、夜は周囲の駅から「寺下へ」とタクシーで繰り出す人も多かったという。現在は食品や日用品、飲食店など十数店が点々と、街の人の暮らしを支える。「店は少なくても人情がある。快く迎えてくれて助けられてます」と『Cafeいつつぼし』の佐藤富益子さん。100円で1枚もらえる昔ながらのてらちゃんスタンプシールも健在だ。

アーチが目印の商店街。右側にあるのは『Cafeいつつぼし』。
アーチが目印の商店街。右側にあるのは『Cafeいつつぼし』。
月岡さんは商店会副会長。店の名物は、近隣の水子貝塚公園にちなんだ縄文どら焼220円だ。
月岡さんは商店会副会長。店の名物は、近隣の水子貝塚公園にちなんだ縄文どら焼220円だ。

『渡辺食品』濃厚な豆乳がおいしさのもと

東京・清瀬から移転して2023年で35年、真っ青なファサードテントが涼し気な豆腐店。「うちは木綿のほうが売れますね」と渡邊伸行さん。自身も毎日飲むという豆乳1杯120円は、とてもまろやかで濃厚だ。豆腐1丁160円。

・10:00〜19:00、日休。
・☎049-254-4112

『住吉精肉店』日々の総菜もここにお任せ!

今や富士見市内に2軒しかないという精肉店。その貴重な1軒がここに。手作りのコロッケ108円をはじめ、15種類ほどある揚げ物にシュウマイ、餃子、サラダ、天ぷらまで、総菜のラインアップも豊富だ。

・10:00〜19:00、日・月休。
・☎049-252-4814

『Cafe いつつぼし』商店街のリビング的カフェ

佐藤富益子さん(写真下・右から2番目)が場所を気に入り2023年4月に開店。和三盆を使ったフワフワの白いコッペパンが看板だ。ほうじ茶ラテ150円、やきそばコッペパン250円、マフィン200円ほか。

・11:00〜17:00(土・日・祝は10:00〜)、木・金休。
・☎080-7265-2310

【宗岡ショッピング[志木]】

毎日が特価のミニ商店街⁉

DATE

開業:1971年
面積:約350㎡
アクセス:東武鉄道東上線志木駅から国際興業バス「西浦和車庫」行きほか約10分の「宗岡公民館」下車2分。埼玉県志木市中宗4-18-34

各店、ほぼ壁の仕切りなく分かれている。
各店、ほぼ壁の仕切りなく分かれている。

正確には商店街ではないし、一見すると青果、乾物、精肉、鮮魚コーナーに分かれた普通のスーパーマーケット。だが、個人店の集合体なので各店別会計。言ってみれば全天候型のミニ商店街だ。

ストライプのひさしが目を引く建物。
ストライプのひさしが目を引く建物。

「畑に田んぼ、道は未舗装の土地でしたが、建売りができ始めてここも作られたそうです」と最古参の『むさしや青果』の女将さん。薬局、パン屋、総菜店もあった店種は現在4店に減ったが、みな元気。世代交代が順調で、引退する店が市場などで声をかけ、引き継がれるパターンが多いのだ。また、「毎日が特売日のようなものです」と『肉屋のけんちゃん』の三瓶ゆかさんが言う通り、安くていいものが勢揃い! その上、毎月1回、大特価セールも開かれる。

『むさしや青果』探しやすい陳列とポップ

開業時から続き現在は2代目の前原秀樹さんが母とパートさんたちとで営む。高島平の市場から仕入れる野菜と果物は新鮮で、包装も陳列もほれぼれするほどきれい。元気のいいポップのひと言を読むのも楽しい。

・10:00〜19:00、日・祝休。
・☎048-473-3378

『肉屋のけんちゃん』上質な国産肉がとにかく安い

先代の精肉店から2018年に引き継ぎ開店。すべて国産の肉は上質で安く、酸化防止剤など不使用。遠方からまとめ買いに来る人も多いそう。写真は国産ブランド豚リブロース100g 216円。総菜も手作りだ。

・10:00〜19:00、日・祝休。
・☎048-424-2522

『堀川水産』市場の店が鮮魚を提供!

浦和卸売市場に店を持つ堀川洋一さんが2010年頃から出店。マグロがおすすめだが、鮭も人気。この日は大きな銀鮭の切り身が4切れで680円! 10時の品出し後は不在になることが多いので、会計は『北乃屋』にて。

・10:00〜19:00、日・祝休。
・☎なし

『北乃屋』“前の台”は要チェック!

先代の乾物店から声がかかり、角栄商店街から2017年に移転。浦和卸売市場より仕入れた乾物に菓子、乳製品、パン、米など食料品全般が揃う。「前の台(写真)は毎日お買い得品が出ます」と野村亮太さん。

・10:00〜19:00、日・祝休。
・☎090-1214-1706

取材・文=下里康子 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2023年10月号より