今回は埼玉県の鳩ヶ谷にあるお豆腐屋さん、『星野食品』のできたておでんを紹介しよう。豆腐の専門店にもかかわらず、本格的なおでんとおでん種を販売している。 鳩ヶ谷には『港屋』というおでん種専門店があるが、同じ商店街で営業する『星野食品』でもおでんを販売している。『港屋』を取材した際に偶然発見したが、非常に本格的で興味をそそられた。今回は店頭で調理しているできたておでんを購入して味わってみたいと思う。

おでんを販売するお豆腐屋さん、『星野食品』

埼玉県鳩ヶ谷は埼玉高速鉄道線(埼玉スタジアム線)の鳩ヶ谷駅が最寄り駅だ。南北線と繋がっており、赤羽岩淵駅から3駅なので東京からもアクセスしやすい。

駅から6分ほど歩くと坂下町商店会があり、その入り口付近に『星野食品』がある。黄色い雨よけを目印にすればすぐに見つかるだろう。

『星野食品』は50年以上の歴史があり、地元だけでなく遠方のお客さんにも愛されるお豆腐屋さんだ。豆腐関連の商品は種類が豊富で、そのほとんどは手づくりとなっている。

茨城県産の国産大豆を使用した豆乳は濃厚な甘味があり、その日のコンディションによってにがりの量や混ぜ方を調整して豆腐をつくっていく。

木綿、絹豆腐はもちろん、ごま豆腐、おぼろ豆腐、生湯葉や生搾り豆乳などが揃う。おでんに重宝する揚げたての生揚げや油揚げ、がんもどき、さらにおから煮やひじきの煮物といったお総菜も豊富だ。おからを使用した「ふんわり天使のおからドーナツ」もある。

お店の人たちの接客は非常に丁寧で親切であり、人のぬくもりを感じることができる。カウンター越しに工場(こうば、厨房)を覗けるが、多くの商品を慌ただしく製造している。忙しさにかまけず、お客さんを第一に扱う姿勢には頭が下がる。

注目のおでんは毎年10月から4月まで販売している。ただし気温などによって発売日が変わるので、訪れる際は注意が必要だ。お店の右側でおでんの調理販売をしており、注文は鍋やメニュー表を見ながら行う。鍋は仕切りが12ほどある大きなもので、おおよその種類で分けられている。

たっぷりの汁でじっくり煮てあり、どの具材もよく味がしみてそうだ。大根や玉子といった定番の種から豆腐類、練り物も充実している。

実はこの練り物、北区赤羽の『丸健水産』で働いていた方が作られているという。『丸健水産』の1番人気であるスタミナ揚をはじめ、餃子巻やうずら巻などおでん種専門店でしかお目にかかれない本格的な練り物が並んでいる。これらは自宅調理用としても購入できる。

できたておでんのメニュー表を見てみよう。合計25種類あり、どれにしようか迷う楽しみがある。2022年に比べて若干値上げしている種もあるようだが、まだまだお値打ち価格である。

自宅調理用のおでん種は練り物のほかに、こんにゃくやちくわぶも販売している。ちくわぶと小結白滝は北区の赤羽(志茂)にある『川口屋』のものを取り扱っており、こんにゃくやつきだしこんにゃくは埼玉県草加市の『盛林商店』のものを揃えている。また、おでん汁の素は正田醤油とハウス食品の2種類があった。

『星野食品』のできたておでん

店頭で調理されたできたておでんを購入し、自宅へ戻ってきた。今回は12種類となる。

時計回りに12時から、大根、玉子、牛すじ、ちくわぶ、結こぶ、じゃがいも、餃子巻、鳥つくね、フランク、タコボール(中央左)、とりつみれ(中央右)、肉野菜詰め。

おでんのほかにもおからドーナツと三角生揚を購入した。「ふんわり天使のおからドーナツ」はふんわりとしながらもちっとした食感が素晴らしく、豊かな甘みがある。ほどよく腹持ちもするのでおやつにも最適だ。

三角生揚はじゅわっとした油のうまみと肉厚の豆腐の甘みが絶妙だ。そのまま食べてもいいし、炙って少し表面をかりっとさせてもいい。もちろん、おでんに入れてもいいだろう。

おでんはお持ち帰り専用となり、購入するとおでん汁とともにポリ袋に入れてくれる。しっかり輪ゴムで止めてあるので汁が漏れ出す心配はない。牛すじは串のまま提供され、別の袋に分けてくれる。

1時間程度なら熱々のままだが、食中毒を予防するために食べる直前にあらためて火を通しておこう。強火でぐらぐら煮る必要はなく、弱火で種の中心まで温めるだけでいい。

大根は煮崩れしておらず角もしっかり立っていて美しい仕上がりだ。中心まで半透明の飴色になっていて、しっかり味が染みていることが分かる。やさしいおでん汁の味わいと大根のうまみの両方を楽しめる。

玉子は表面が褐色に染まっているが乾燥しておらずフレッシュな白身の味わいを楽しめる。もちろん黄身もぱさついておらず、ねっとりとした食感を楽しめる。

肉野菜詰めは大きめの油揚げに白菜や白滝、人参や椎茸などがふんだんに詰め込まれている。袋を開けるとたっぷりの汁があふれ出る。野菜のやさしい味わいが心地よい。

餃子巻は餃子を魚のすり身で巻いた揚げ蒲鉾だ。ふんわりジューシーな餃子だけでなく、ほどよく弾力が残るすり身も絶品だ。しっかり身が詰まっており、職人の高い技術力を感じ取ることができる。

とりつみれは1串3個の販売だが、タコボールがひとつ入っていた。このようなイレギュラーな組み合わせが個人商店ならではの面白さといえる。ボールはふわりとした食感にうまみがぎゅっと詰まっている。タコボールはタコの風味が漂い、豊かな味わいになっている。

一方、こちらは鳥つくねだ。棒状に成形してあり、味付けはとりつみれに比べてしっかりしている。2種類を食べ比べてみるとそれぞれの個性が分かるので、ぜひ両方購入することをおすすめする。

牛すじはくにくにとした食感が残っているが柔らかく、噛めば噛むほど肉のうまみがしっかり感じられる。1串がボリュームがあり満足感が高い。

フランクはぷりっとしていて、食べ応えはじゅうぶんだ。どこか幼少期を思い出させる懐かしい味わいとなっている。

ちくわぶはとろっと柔らかく煮てあり、おでん汁もしっかり染みている。それでいてくたくたになりすぎず、小麦の風味も残っている。

じゃがいもは型崩れしておらず、美しい形をとどめている。中心部分まで均一に火が通っており、ほくほくとした食感に身も心もほっこりリラックスできる。

結び昆布は2本セットでの販売だ。通常よりも大きめで食べ応えもじゅうぶん。柔らかく煮てあるがうまみは逃げておらず、ひと口噛むだけで豊かな香りが広がっていく。

真摯に食材や製法にこだわり、50年以上豆腐を作り続ける『星野食品』。そのこだわりはおでんにもしっかり息づいている。しかし、練り物を製造する職人さんは高齢とのことでいつまで仕入れることができるかは分からないそうだ。次の機会には自宅調理用のおでん種を紹介できればと思うので、楽しみにしていただきたい。

『星野食品』の基本情報

『星野食品』
〒334-0003 埼玉県川口市坂下町2-2-11
048-282-4053
定休日:日、祝、夏季休業、年末年始
営業時間:8:00〜20:00

取材・文・撮影=東京おでんだね

東京おでんだね
東京のおでん種・蒲鉾・練り物の魅力を紹介
「おでん種やさんでおでんを買って、家で調理して食べる」文化を盛り上げるべく、都内各地を奔走中。ビジネスでなく趣味でちまちま活動しています。