せっかく飲みに行くなら、とびきり楽しい夜にしたい。群雄割拠の東京の居酒屋シーンにあって、近年オープンの料理・酒ともに新鮮な驚きがありながら、価格帯や居心地も抜群の“絶妙”な5軒を紹介。

『キクヤ』飽くなき好奇心がワクワクの原動力[三軒茶屋]

いか玉1200円。黒色の正体は生地に混ぜたスルメイカの炭パウダー。「どんな味なのか、食べてみてのお楽しみ!」
いか玉1200円。黒色の正体は生地に混ぜたスルメイカの炭パウダー。「どんな味なのか、食べてみてのお楽しみ!」
ナスのマスタードオイル和え、新大根の浅漬けなど季節の前菜5種盛り1500円。
ナスのマスタードオイル和え、新大根の浅漬けなど季節の前菜5種盛り1500円。
インド料理店のカレーから思いついた、サンバルと和風出汁を合わせたスパイスおでん盛1200円。
インド料理店のカレーから思いついた、サンバルと和風出汁を合わせたスパイスおでん盛1200円。

マスタードシードで漬け込んだ新大根の浅漬けやエスニックな香りが広がるおひたしなど、前菜から個性的。おでんはサンバルと和風出汁を合わせ、いか玉は普通のお好み焼きかと思いきや仕上げにパルメザンチーズを振りかけて、九条ネギたっぷりのふわふわ新食感! ワクワクするメニューが並ぶが、店主の三木さんは元々調理経験がなく、「大阪出身=お好み焼き」という発想が始まりだったとか。途中で調理技術を磨こうと飲食店で修業し、その過程でスパイス料理と出合って遂にクラフトビールまで造るように。「思いつきで動いているだけ」と三木さんは笑うが、訪れたお店で気になる料理があればメモするなど、実はコツコツ積み重ねてきた集大成が『キクヤ』なのだ。型にはまらない自由さが楽しくて仕方ない!

店主・三木基弘さんとのおしゃべりも人気の秘密。
店主・三木基弘さんとのおしゃべりも人気の秘密。
ビリヤニ1500円はインド人の友人直伝。本格的な味でクラフトビールとも相性抜群。
ビリヤニ1500円はインド人の友人直伝。本格的な味でクラフトビールとも相性抜群。
(こんなお酒揃えてます)クラフトビール1100円〜は10タップほど用意。うち3種はオリジナルで、左から刻んだ干しブドウがこだわりの「キクヤ秋味」、フルーティーな「ふたりセゾン」、ホップが華やかな「乾杯IPA」。自家製漬け込み焼酎も。
(こんなお酒揃えてます)クラフトビール1100円〜は10タップほど用意。うち3種はオリジナルで、左から刻んだ干しブドウがこだわりの「キクヤ秋味」、フルーティーな「ふたりセゾン」、ホップが華やかな「乾杯IPA」。自家製漬け込み焼酎も。

『キクヤ』店舗詳細

キクヤ
住所:東京都世田谷区太子堂5-1-12-1F/営業時間:18:00〜23:00(金は18:00〜翌2:00、土は15:00〜翌2:00、日は15:00〜22:00)/定休日:月/アクセス:東急電鉄田園都市線三軒茶屋駅から徒歩7分

『かまびす』滋味深い料理と楽しむ蒸留酒の世界[清澄白河]

白身魚の発酵白和えなど、おつまみ3種盛り1200円と季節のジンのハイボール1000円。
白身魚の発酵白和えなど、おつまみ3種盛り1200円と季節のジンのハイボール1000円。
鰤刺しのゆず胡椒風味おろし1300円。ゆずの酵素シロップの丸みのある酸味がメリハリを効かせている。
鰤刺しのゆず胡椒風味おろし1300円。ゆずの酵素シロップの丸みのある酸味がメリハリを効かせている。
なんこつソーキと発酵白菜の煮込み1200円。
なんこつソーキと発酵白菜の煮込み1200円。

店主は『虎ノ門蒸留所』で蒸留家として働く一場鉄平さん。「料理もお酒もおいしくて値段のバランスがいいと思うお店がない。じゃあ自分で作ろう」というのがオープンのきっかけだという。料理は、『虎ノ門蒸留所』で共に働いていたもみさんが担当。和食やビーガンの経験があるため、素材や調味料の使い方が実に繊細。例えば、軟骨ソーキの煮込みの味付けは塩のみなのに、発酵白菜や豚肉の滋味深さが身に染みる。合わせるクラフトジンのおすすめの飲み方は、なんとお湯割り! 深いうまみと溶け合いながら、赤丸薄荷(はっか)のふんわり立ち上がる爽快な香りの余韻がいい。体になじむようなやさしい味の料理とクラフトジンがこんなに合うなんて。驚きと心地良さが見事に共存。これこそグッとくる酒場に欠かせない要素だ。

料理担当・女将のもみさんが常駐。一場さんは週1〜2回カウンターに立つ。
料理担当・女将のもみさんが常駐。一場さんは週1〜2回カウンターに立つ。
(こんなお酒揃えてます)『虎ノ門蒸留所』のクラフトジンは定番から季節ものまで全種類が揃う。焼酎は一場さんお気に入りでレアな白石酒造「天狗櫻」や大和桜酒造「大和桜コップンカー」、富田酒造の黒糖焼酎など。そのほか、日本酒も用意する。
(こんなお酒揃えてます)『虎ノ門蒸留所』のクラフトジンは定番から季節ものまで全種類が揃う。焼酎は一場さんお気に入りでレアな白石酒造「天狗櫻」や大和桜酒造「大和桜コップンカー」、富田酒造の黒糖焼酎など。そのほか、日本酒も用意する。

『かまびす』店舗詳細

かまびす
住所:東京都江東区深川1-8-12/営業時間:17:00〜22:00/定休日:日・月/アクセス:地下鉄半蔵門線・大江戸線清澄白河駅から徒歩8分

『酒肴 あおもん』店の活気と細やかな心配りが人を呼ぶ[五反田]

青盛一人前1188円(写真は二人前)。サバのほか高知から仕入れる旬の魚も。
青盛一人前1188円(写真は二人前)。サバのほか高知から仕入れる旬の魚も。
お通しはカウンターの大皿料理から選べる。
お通しはカウンターの大皿料理から選べる。
炙り鯖寿司2貫968円。赤酢めしとガリでさっぱり。
炙り鯖寿司2貫968円。赤酢めしとガリでさっぱり。
レアと完熟のハーフ&ハーフ1280円前後(時価)。広島レモンを漬け込んだ焼酎&ビールの檸檬ビアーが合う!
レアと完熟のハーフ&ハーフ1280円前後(時価)。広島レモンを漬け込んだ焼酎&ビールの檸檬ビアーが合う!

口の中でサクサクという軽快な歯触りが響くアジフライ。まさに、メニュー名にも謳っているとおり、重さゼロ! 火入れに2種類あり、レアは内側がしっとりとして、完熟は身がふわふわだ。薄〜くまとったきめ細かいパン粉の衣と油も特注で、揚げ時間も秒単位で調整したという。飲み始めて数品つまんだあとに提供されるタイミングもベスト。「アジフライだけでなく、お客さんの食べる速度を意識して料理を出す順番を考えたり、活気ある雰囲気の中で心地良く過ごしてほしいので、個々には丁寧に対応するよう心がけたりしています」とは、店長の永野さん。料理の味だけでなく、お客さんとの絶妙なコミュニケーションで、また来たいと思ってしまうのだ。平日も19時以降はほぼ満席。予約は必須!

右端が店主の渡辺さん。
右端が店主の渡辺さん。
(こんなお酒揃えてます)鯖専用の日本酒という「SABA de SHU」グラス660円のほか、厳選された日本酒リストも。濃厚な芋焼酎「六代目百合」、「七田」の粕取り焼酎のほか、山椒&ブラックペッパー、カルダモンなど自家製スパイス酒も人気。
(こんなお酒揃えてます)鯖専用の日本酒という「SABA de SHU」グラス660円のほか、厳選された日本酒リストも。濃厚な芋焼酎「六代目百合」、「七田」の粕取り焼酎のほか、山椒&ブラックペッパー、カルダモンなど自家製スパイス酒も人気。

『酒肴 あおもん』店舗詳細

酒肴 あおもん
住所:東京都品川区西五反田2-31-4 KKビル B1F/営業時間:17:30〜23:30/定休日:不定/アクセス:JR・私鉄・地下鉄五反田駅から徒歩5分

『ヨイノフネ』お出汁料理と日本酒の一期一会を[久我山]

梅干しと共に2時間コトコト煮込む、子持ち鮎 香梅煮1320円。燗酒と合わせて頭も骨も余さずに味わいたい。
梅干しと共に2時間コトコト煮込む、子持ち鮎 香梅煮1320円。燗酒と合わせて頭も骨も余さずに味わいたい。
おまかせコース4品3300円の前菜盛り合わせ。酒蒸し白子は白子の出汁と塩で味つけ。
おまかせコース4品3300円の前菜盛り合わせ。酒蒸し白子は白子の出汁と塩で味つけ。
同コース1品目、海老芋のだし煮。カツオの一番出汁を含ませて。
同コース1品目、海老芋のだし煮。カツオの一番出汁を含ませて。

静かにゆったり日本の豊かな旬を楽しみたい夜は、ここ。ふわぁ〜っとリラックスできる雰囲気と上質な料理、酒通もうならせる日本酒が迎えてくれる、居酒屋と割烹の間をゆく新店だ。料理長の渡邉北斗さんが大事にするのは、お出汁と旬菜。塩ベースの透明に近い出汁は、とことんやさしく素材を引き立てる。日本酒の担当は石本孝生さん。10年以上お燗番を勤め、温度帯で表情が変わる日本酒の個性を知り尽くしている。二人は飲食店で働き始めた頃に知り合い、「いつか一緒に店を」と約束。個々に腕を磨き10年目の2023年春、夢を叶えた。孝生さんが客の好みを探り日本酒を選び、北斗さんが料理を合わせる。あるいはその逆もあるが、二人の感性の沸点が最高に心地良い。今宵も二人にすべて託して、ほろ酔いたい。

石本さん(右)と渡邉さん。
石本さん(右)と渡邉さん。
天井が高く落ち着く店内。
天井が高く落ち着く店内。
(こんなお酒揃えてます)定番は据えず、本醸造から純米大吟醸まで新顔を続々とラインアップ。なじみの3軒の酒店と密に相談しながら、季節限定酒やあまり見かけない個性あるものを選ぶ。時にはジャケ買いも。5勺(半合)550円〜で注文OK。
(こんなお酒揃えてます)定番は据えず、本醸造から純米大吟醸まで新顔を続々とラインアップ。なじみの3軒の酒店と密に相談しながら、季節限定酒やあまり見かけない個性あるものを選ぶ。時にはジャケ買いも。5勺(半合)550円〜で注文OK。

『ヨイノフネ』店舗詳細

ヨイノフネ
住所:東京都杉並区久我山4-1-4 松村ビル103/営業時間:17:00〜23:00LO(22:30以降の入店は要連絡)/定休日:水(不定休あり)/アクセス:京王電鉄井の頭線久我山駅から徒歩1分

『山田ワイン』街角で軽やかに、ワイン三昧しよう[幡ヶ谷]

キュウリしらすディルのサラダ500円は、やさしくうまみのあるオレンジワインと。華やかさと果実味が調味に使ったレモン、ナンプラーに合う。
キュウリしらすディルのサラダ500円は、やさしくうまみのあるオレンジワインと。華やかさと果実味が調味に使ったレモン、ナンプラーに合う。
燻香を放つ京都『ekaki』のベーコンでベーコンエッグ950円。天火で焼く香ばしい定番。 赤ワインと!
燻香を放つ京都『ekaki』のベーコンでベーコンエッグ950円。天火で焼く香ばしい定番。 赤ワインと!
柿、オレンジ、モッツァレラのカプレーゼ880円はミネラル感あふれる白ワインを合わせて。
柿、オレンジ、モッツァレラのカプレーゼ880円はミネラル感あふれる白ワインを合わせて。

「ふらっと寄ってさっと飲んで食べて。そんな店にしたい」。2022年3月、店主の大村(旧姓:山田)有香さんは、この街にナチュラルワインに親しむ日常の種をまいた。幡ヶ谷という土壌はワイン好きが多いのかすぐに人気店となり、仕事帰りに一杯、読書しながら一杯と、毎夜グラスを傾ける人の笑顔でいっぱいだ。現在育休中の大村さんと店長の岡崎渚さんは京都出身で、大村さんが働いていた河原町のワイン酒場『ekaki』で親しくなった。個性あるナチュラルワインの友は、フレンチのエッセンスを感じる小皿料理。京都市内で醸造する「千鳥酢」を使ったり、特産漬物「すぐき」を春巻きの具にしたり、さりげなく潜む京都愛がチャーミングだ。デザートにフランス菓子のカヌレが登場することも。

大村さん、1歳のきのちゃん、岡崎さん。
大村さん、1歳のきのちゃん、岡崎さん。
(こんなお酒揃えてます)フランス産を中心に泡・白・オレンジ・赤、ナチュラルワインを選りすぐる。リストはなく、生産者の思い、ワイン畑の風景を伝えながら初心者にも分かりやすく味わいを伝えている。グラス1000円〜/ボトル6000円台〜。
(こんなお酒揃えてます)フランス産を中心に泡・白・オレンジ・赤、ナチュラルワインを選りすぐる。リストはなく、生産者の思い、ワイン畑の風景を伝えながら初心者にも分かりやすく味わいを伝えている。グラス1000円〜/ボトル6000円台〜。

『山田ワイン』店舗詳細

山田ワイン
住所:東京都渋谷区西原1-21-16 パラスト西原 1F/営業時間:17:00〜23:00(土・日・祝は15:30〜)/定休日:火(不定休あり)/アクセス:京王電鉄京王新線幡ヶ谷駅から徒歩2分

取材・文=井島加恵(キクヤ、かまびす、酒肴 あおもん)、松井一恵(ヨイノフネ、山田ワイン) 撮影=加藤熊三(キクヤ、かまびす、酒肴 あおもん)、鈴木愛子(ヨイノフネ、山田ワイン)
『散歩の達人』2024年1月号より