待ちに待った、あの季節がやってくる。たちのぼる湯気と香りに誘われて、はふはふと口にほおばる至福の時。今やなくてはならない、日本の食文化として定着した鍋料理だが、発祥は江戸時代と意外にも最近。とはいえ、その種類は実に幅広い。江戸から平成まで、それぞれの時代を温めてきた、鍋料理の数々を追ってみた。

駒形どぜう

江戸っ子の胃袋を支えた滋養食

どぜうなべ1人前1850円(税別)。好みでささがきごぼう450円(税別)を追加して。

創業1801(享和元)年。ウナギの約9倍のカルシウムを含むドジョウは、江戸時代より滋養食として親しまれてきた。鍋にすると身がふわっと柔らかくなり、食べやすい。供するドジョウは、料理人自らが厳選。日本酒で酔わせ、独自の下ごしらえをしてから底が浅い鉄製の丸鍋に隙間無く並べてゆく。ネギをたっぷりのせ、程よい甘さの割下とともに炭火で煮込む。ネギがしんなりすれば食べ頃だ。七味や山椒などの薬味をかけて召し上がれ。

建物は江戸時代を代表する商家造りである、出し桁造り。 1階の入れ込み座敷は、江戸時代の形をそのまま残した風情になっている。

『駒形どぜう』店舗詳細

駒形どぜう
住所:東京都台東区駒形1-7-12/営業時間:11:00〜21:00/定休日:無/アクセス:地下鉄浅草駅から徒歩2分

もつ吉

口中にひろがる極上の“大トロもつ”

京都の厳選素材が満載の京風もつ鍋1628円。

もつは、和牛の小腸のみを使用。見るからにぷるっぷるで、噛みしめるたびに上質な脂があふれだす。十分すぎるほどにのった脂から“大トロもつ”と呼ばれるほどだ。「スープももつに負けてませんよ」と、店長の永島由以さん。牛骨、鶏ガラ、野菜を3日間煮込んでとる出汁に、手作りの西京味噌と麹味噌をブレンドして溶き合わせた甘めのスープ。もつの脂と相まって、するすると胃袋に入ってゆく。ゆず皮がふわっと香り、後味も◎。

鮮魚5点盛り4人前2420円。 1Fカウンター席。

『もつ吉』店舗詳細

もつ吉
住所:東京都杉並区上荻1-10-4 廣瀬ビル1F/営業時間:17:00〜24:00(テイクアウト11:30〜23:00、土日ランチ12:00〜15:00)/定休日:不定休/アクセス:JR・地下鉄荻窪駅から徒歩3分

かれー麺実之和 六本木

門外不出のカレーが鍋料理に進化

名代カレー鍋1人前1490円(2人前~)。ガラスープ、カレースープは500円~追加可能。

60年以上受け継ぐ秘伝の味が人気のカレー麺専門店。冬には9割もの客がオーダーするという「名代カレー鍋」は、鶏ガラを8時間じっくりと煮出し、旨味を十分に引き出したスープに、トロリと濃厚な特製カレールーを投入して仕上げる。豚肉や鶏肉、油揚げから染み出す旨味がカレーと合わさり、白菜やキノコなどの野菜とも相性抜群。グツグツと煮立つだけでスパイシーなカレーの香りが立ち、食欲をそそる。締めには特製麺をお忘れなく。

締めはもちもち中太麺300円を。 レトロな外観。

『かれー麺実之和 六本木』店舗詳細

かれー麺実之和 六本木
住所:東京都港区六本木3-13-8/営業時間:11:00〜翌5:00/定休日:日・祝/アクセス:地下鉄六本木駅から徒歩3分

暫亭 いろり

これぞ元祖!コクも甘味も格別

カニや地鶏など12種の具材が入る豆乳鍋1人前2750円。

豆乳鍋を考案し、世に広めたといわれる店。店主の松田篤徳さんが「健康に良い豆乳で鍋料理をできないか」と試行錯誤の末、1991年に完成させた。カツオとコンブの出汁を張って具材を煮込んだら、一晩かけてつくる自家製豆乳を注ぐ。ブレンドした白味噌も使っているが、甘ったるさは全くない。絶妙な味付けの出汁とまろやかな豆乳が織り成すスープは、「豆乳嫌いの人もまた来てくれる」ほど。一度食べれば虜(とりこ)になる味わいだ。

路地裏にたたずむ。 店主の松田篤徳さんと美智子さん夫婦。

『暫亭 いろり』店舗詳細

暫亭 いろり(しばらくてい)
住所:東京都港区西新橋1-17-7/営業時間:11:30~13:30・17:00~22:30/定休日:日・祝(応相談で営業)/アクセス:地下鉄三田線内幸町駅から徒歩3分

構成=フラップネクスト 取材・文=稲葉美映子、今田 壮(風来堂)、佐久間春奈、本田直子 撮影=井上洋平、本野克佳