エッジの効いた大学でクセがすごい大学事務職員 高まる存在感

金沢工業大学(金工大)は、地方の私大において、人材育成や社会連携で独自色を重ね異彩を放つ「クセが強い」大学だ。地方経済が縮小しがちな中、最近では中山間地に投資をしてキャンパスを新設した。そんな積極的な大学経営にも乗り出す。エッジの効いた大学には、「クセがすごい」経営者や教員、職員がいるものだ。金工大の産学連携事業には、地域の声に耳を傾け地方創生に奔走する「クセつよ」な職員がいる。

■エッジの効いた大学のゆえん
金工大には夢考房というプロジェクトがある。学んだ知識や培った技術を「ものづくり」に応用する力を養うために、個別ブースや実験設備、工作機械などが揃えられ学生が自由に利用できる。さらに工具室や部品を販売するパーツショップも併設され、ものづくり活動を支える様々な機能を備えていて、技術者となるべきアイテムが何でも揃う。

どんな学生が集うのかと言えば、通常は地元からの進学者が多い地方大学において、地元入学者はおよそ3割。コロナ下で影響を受けたとはいえ、残りの7割が県外からの入学者だ。地方の単科系私大の中で7,000人もの学生数を誇るのはまれで、数字からも学生の人気ぶりを物語っている。

そんな中、金工大は2018年には歴史ある金沢工業高等専門学校(金沢高専)を改称し、石川県白山市に国際高等専門学校(国際高専)を新設した。そのキャンパスには、金工大の白山麓キャンパスを併設し、地域と地元企業と共創を図る自然豊かな地域連携・産学連携の拠点として実証実験を行っている。

その拠点で奔走する一人が、産学連携局次長の福田崇之氏だ。

福田局次長は、生まれも育ちも金沢で、中学卒業後金沢高専(現国際高専)に入学し5年、卒業後は金工大工学部情報工学科に3年次編入し、卒業後は日本IBMのSEとして東京で働いた。IBMで3年間勤務した後に金沢に戻り、母校の金工大の事務職員として採用された。金工大では、情報処理系の部署、広報などで経験を積み、企画調整部門在籍時に大学教育の充実を目的とした文部科学省の「Good Practice」事業を担当。そこで地方創生や社会連携に関心を持ったことが今の仕事の契機となった。今では産学連携局次長として、自治体、地域、企業連携によるイノベーションプロジェクトや白山麓キャンパス産学連携拠点整備などの推進役を務め、地方創生に重きを置いた社会連携に奔走する。

福田局次長の地域の情報をキャッチし、人的ネットワークを作り上げるその手法は、地域の人々の声に細かく耳を傾け、溶け込み信頼を得ることだ。

日本IBMから金工大に来たてのころは、社会課題もシンプルで解決に寄与もできたが、ここ数年複雑化し、業界の枠を超えていくようなこともあるそうだ。そのため、関係のないような事業体や地域も巻き込み(つなぎ)ながら、得意のテクノロジーを併用し解決に導くように心掛けている。

■事務職員を対象にし働きながら大学院入学、授業料は大学負担
福田局次長のもう一つの転機は、大学で働きながら修士を取ったことだ。当時の大学経営者のはからいで、大学の事務職員にも学んでほしいと、職員を対象にした大学院入学制度を構築。働きながら学ぶ2年間の修士課程の入学料や授業料は全て大学が負担してくれた。働きながら給料が支給され、学ぶことができ、130万円前後の費用も負担してくれる。何て素晴らしい大学だろうとうらやむばかりだ。

福田氏は、率先して5年前に修士を取得した。

「情報学系出身ですが、工学にかかわらず、社会科学系はもとより、アートなどにも関心を向け、地元の中小企業には技術系社員向けにデータ活用の勉強会を開催しています」と付け加えた。

注力している分野には、関心のアンテナを広げて勉強しています。修士で学ばせてもらい大きな転換点になったし、貴重な体験をさせてもらいました。時代の変革期には学ぶ必要性をより一層感じています」と強調する。

さらに「中山間地域を学生たちが学ぶキャンパスにしていこうとしているので、国際高専は地域の人に地域の住民と認めてもらわなくてはなりません。絵だけ書いてそれでおしまいにはできない性分で、泥臭くやる、学んで事務方が積極的に現場に降り立つべきです。だから、大学の仕事としてではなく、プライベートで積極的に地域の飲み食いにも参加します」と笑った。福田局次長の「クセつよ」の真骨頂はここにある。

きっかけは、白山麓キャンパスの産学連携機能を都内から情報発信するイベントの中で「熱いやつがいるぞ」と口伝で広がったことだ。事務職員が前に出るにあたり、おそらく学内でも賛否両論があるに違いないが、当人も承知の上で、事務職員もビジョンを共有したうえで主体的に、現場で学んだことを仕事に反映させる必要性を感じているようだ。

その上で福田局次長は、「社会と連携していかなければ大学が成り立っていかない時代。自分たちが勉強しながら、先生方や学生と並走していかなければなりません。大学は民間企業と違い、利害関係のない中立の立場なので、場を作っていくには都合のいい組織です。それを先生方だけに任せていれば先生方に負担がかかり過ぎます」と語った。

そもそも金工大には、夢考房やロボコン、ソーラーカーレースなどで学生とともに、教育支援の観点から事務職員も学生と一緒に汗をかき、涙を流す先輩方がいて当たり前にやってきたことだというから、事務職員の意識レベルのポテンシャルは元々高いのかもしれない。

大学が実践する社会連携活動は、価値観が合理性追求に偏っているようにも感じているとか。その地域ごとの文化や慣習、現場の細かな声に合わせながら、目標を実現するために心身を使い、粒々辛苦する熱いハートの持ち主だ。

社会連携の成果を確認まで捉えると息の長いプロジェクトだ。多くは、異動や転職、定年などの節目で自分の取り組んだプロジェクトの成果を見ることなくその仕事から離れていく。

だからこの質問は意地悪な質問で誰もがちゅうちょする。それを承知しながらも聞いてみた。社会連携はどうなったら成功なのか。

「それを自分が見ることができるかどうか分かりませんが、金工大で学んだ人(学生)が経済と環境と社会を調和するビジネスに寄与できる人材になったら成功です」と間髪を入れずに応じたのは福田局次長しかいない。

2021年9月15日(山口泰博)