国立研究開発法人科学技術振興機構 主幹/産学官連携ジャーナル編集長
大妻女子大学 地域連携・地域貢献プロジェクト専門委員
山口泰博

2035年までに国内での乗用車の新車販売で電動車100%を実現することが、国の方針として戦略に明記された。世界の潮流は、EVに置き換わろうとしている。

■2050年カーボンニュートラル宣言
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」は、2020年10月に政府が出した「2050年カーボンニュートラル宣言」を実現するために策定された。具体的には、産業としての成長が見込まれ、そして温室効果ガス削減が望まれている14分野に対する「実行計画」を策定している(図1)。

14分野とは、①洋上風力産業、②燃料アンモニア産業、③水素産業、④原子力産業、⑤自動車・蓄電池産業、⑥半導体・情報通信産業、⑦船舶産業、⑧物流・人流・土木インフラ産業、⑨食料・農林水産業、⑩航空機産業、⑪カーボンリサイクル産業、⑫住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業、⑬資源循環関連産業、⑭ライフスタイル関連産業だ。

14分野は幅広く、成長のフェーズもそれぞれの分野で異なる。中でも環境・エネルギーは、脱炭素社会を目指す上で大きなウエイトを持つと考えられる。

資源エネルギー庁「集計結果又は推計結果(総合エネルギー統計)『時系列表』」によれば、日本の2020年度のエネルギー供給は、化石燃料による火力発電が76.3%。内訳は石油が6.3%、石炭が31.0%、LNG(液化天然ガス)が39.0%だ。火力発電は化石燃料を燃焼する際に温室効果ガスを排出し、地球温暖化に影響を及ぼしている。再生可能エネルギーの割合を徐々に増やしていく必要があるが一長一短あるこれらの発電は急速に置き換えることは困難だ。私たちは、コンセントに電源ケーブルを差し込むことで、暑ければエアコンをつけ、スマホを充電しゲームに興じ、利便性といった豊かさを享受している。今できることは節電意識を当たり前にし、SDGsを契機に市民レベルでの環境意識を高める必要がある。

■電動車100%へ
そんな中、自動車業界ではどんな取り組みをしているのだろうか。ふと思い立ち、取材がてら「人とくるまのテクノロジー展2022 YOKOHAMA」(主催:公益社団法人自動車技術会、2022年5月25日〜27日、パシフィコ横浜)に行ってきた。自動車や部品、材料メーカー、関連企業の技術を展示するイベントで、3年ぶりのリアル開催だ。主催者企画では、カーボンニュートラルをテーマに掲げて講演会と展示が併催されていることから、自動車業界の最新動向を知る機会とあって多くの来場者で賑わっていた。

政府は2018年の時点で「2030年までに、国内の乗用車における新車販売の5〜7割をハイブリッド車(HV)やEVにする」目標を示していたが、2021年には「2035年には全ての新車を電動車にする」ためグリーン成長戦略を策定した。その流れで、2035年までに国内での乗用車の新車販売で電動車100%を実現することが、国の方針として戦略に明記された。世界の潮流は、EVに置き換わろうとしているからだ。

日本の自動車メーカーの強みは、HVだ。いや「だった」と言うべきかもしれない。一般的に、ガソリンで動くエンジンと電気で動くモーターの二つの動力源を備え、低速時はモーターを使って走行し、燃費の効率が良い速度になったときには、ガソリンで動くエンジンに切り替え走行をすることで、ガソリン車より燃費の効率が良くなり、CO2や排気ガスの量を抑えることが可能だ。しかし、街中走行時はいいが、高速道路などを頻繁に使う場合は常にガソリンによるエンジン走行となるため、燃費の差が出ない。軽自動車やバイクに至っては、そもそも燃費が良かったことから立ち遅れ、ようやくHVがお目見えしている。今、そのお家芸が揺らいでいる。

EVの普及拡大には、様々な課題をクリアにする必要があるが、一番の課題は航続距離が短く不安定なのが難点で、バッテリー性能の向上は必要不可欠だ。蓄電能力の効率化や気温の低い冬季でも安定的に電力供給でき航続距離が延伸できれば一気に市場は開放へ向かう。そのほか、軽くて丈夫な素材や部品、電装品の省電力化など1メーカーだけでは解決できない問題が山積する。

株式会社カネカ(東京都港区)のブースで興味を引いたのは、太陽電池モジュール、ソーラールーフだ(写真1)。車のルーフを結晶シリコン太陽電池でコーティングし、発電しながら蓄電させる。開発した車載用結晶シリコン太陽電池は曲面状に設計することができ、自動車ボディへの設置が可能になったことからトヨタの低速自動運転EV「e-Palette」に採用されている。

旭化成株式会社(東京都千代田区)は、樹脂やセンサーなど計22種類の同社製品を使用した新たなコンセプトカー「AKXY2(アクシーツー)」を出展(写真2)。ドーム形状の屋根はポリカーボネート(PC)製で、水系塗料でコーティングすることで、傷が付きやすく目立ちやすいPCの欠点を補完している。行列ができるほどの人だかりで関心の高さを物語っている。

自動車のEV化は、今や待ったなしの状況だが、産業界と研究機関がタッグを組んで実用化を加速させることが待ち遠しい。

注)仕様上、写真、図表の掲載は1点のみとなっています。他の写真図表は、産学官連携ジャーナルのウエブサイトでご覧ください。