世界遺産石見銀山遺跡内で腐食した木製防護柵が折れ、観光客が川に転落死した事故を受け、大田市の楫野弘和市長が17日会見し、「安全を管理する市の対応が不十分だった」と陳謝した。市内の道路や観光施設の柵などを緊急点検した中間結果を公表。大森町内の市道2路線を全面通行止めにしたことを明らかにした。 

 事故は8日、観光で訪れた愛知県の女性(68)が大森町内にある羅漢町橋そばの防護柵にもたれかかった際、柵が折れ、川に転落して死亡した。柵は木製で2021年4月に腐食が確認され、市は注意喚起のためコーンを置きロープを張っていた。楫野市長は会見で「もっと早く直すべきだった。木柵の撤去だけでも先にした方が良かった」と述べた。

 緊急点検は14日までにとりまとめた結果で、市道1730路線のうち493路線(約246キロ)を調べ終え、防護柵の根元のさびによる揺れなどが確認された各箇所で計1・3キロに注意喚起を表示した。大森町内にある2本の木橋は桁が傷んでいたため、橋が架かる市道2路線を15日から全面通行止めにした。

 市内の観光施設なども点検し、20施設で遊歩道の手すりや階段など100カ所以上で修繕が必要とした。今後の点検でさらに増える可能性がある。

 道路や建築物の修繕については所管する担当課が予算内で検討し、優先度を判断していた。より迅速に対応するため、部横断の組織を近く立ち上げる。石見銀山エリアで景観に配慮した木柵は今後、耐久性のある金属製に変更する方針。