厚生労働省と文部科学省が26日発表した令和5年3月卒大学生の就職率(4月1日時点)は97・3%と、前年の同時期より1・5㌽上昇し、統計開始以来3番目の高水準となった。コロナ禍からの回復基調に新卒採用枠を戻す企業が多かったためだが、就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートによると、来春の6年3月卒の大学生の就職内定率は、前年を上回って推移しており、6月1日の大手企業の選考の本格化を前に動向が注目される。
リクルートの「就職みらい研究所」の調査によると、就職活動する大学生の5月15日時点の就職内定率は72・1%で、前年同時期(65・4%)と比べ6・7ポイント上回る。就職・採用活動の日程が現行と同じ平成29年卒以降、今春に大学を卒業した令和5年卒の昨年2〜5月までの内定率は過去最高を更新する出足の速さをみせたが、「今年はそれを上回っており一層の加速化が進んでいる」(同社担当者)という。
内定加速化の要因の一つが、コロナ禍を契機に導入されたオンライン採用に、企業が慣れたことだ。その結果、選考プロセスの効率化が進み、すべてを対面で行っていた時と比べ日程調整などがしやすくなり、選考過程が短縮化した。1次面接や2次面接をオンラインで実施し、最終段階は対面とする「ハイブリット型」を採用する企業も増えているという。
もちろん、人手不足感やコロナ禍からの復調で、企業の採用意欲はさらに高まっている。同研究所の調査では、5年卒での新卒採用計画に対し、「採用予定数を充足できた」とする企業(昨年12月時点)は4割程度と、調査を始めた平成24年卒以降で過去最低。計画を下回った企業は、内定辞退が予定より多かったり応募者が少なかったりしていた。「昨年に採用できなかった分を今回の6年卒で採りたいとの思いが、企業の採用を加速化させている可能性もある」と指摘する。
大手企業の選考は6月1日から本格化する。すでに内定を得ている学生の7割近くが、6月も就職活動を続ける意向を示している。大手企業は狭き門ながら、全体としては「学生が優位な状況にある」ようだ。(日野稚子)