東芝の昨年7月の定時株主総会をめぐり、同社と経済産業省が一体となり「物言う投資家」に圧力をかけていたとする外部弁護士の調査報告書が波紋を広げている。経産省は「経済安全保障」を理由に東芝の株主対応を〝支援〟。一方の投資家側も「株主の権利」を盾に経営陣への揺さぶりをもう一段引き上げるのは必至で、国策銘柄をめぐる狂騒が鎮まる気配はない。

「東芝の今後の社内調査の報告を待ちたい」

報告書の公表から一夜明けた11日、梶山弘志経産相は閣議後の記者会見でこう述べ、東芝の対応次第では省独自で調査に乗り出す考えを示した。

株主情報やりとり

東芝は昨年7月の総会に関する報告書を10日に発表。経産省幹部と東芝が物言う株主の動向の情報をやりとりしていた点について「法令等に抵触する疑いのある行為すら見受けられる」と指摘した。調査は海外投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントが今年3月の臨時総会で調査を求めた提案が可決したことで実現した。

問題点として挙げたのが、議決権の15%超を保有していたエフィッシモに対し、同社の推す社外取締役の選任議案を取り下げるよう働きかけたことだ。経産省で東芝を所管する商務情報政策局の情報産業課長がエフィッシモに「ルール・規制を担当している局が財務省とともに動き始めるらしい」などと牽制(けんせい)していた。

報告書には、車谷暢昭社長(当時)が菅義偉官房長官(同)に株主の状況を説明したとみられる経緯も記され、東芝と国の蜜月ぶりが浮き彫りになった。

情報産業課長は他の投資ファンドにも総会で議決権を行使しないように圧力をかけていた。「隣が大火事のときにバーベキューをしていると、それでは済まないこともある」として、エフィッシモの取り締まりに他の投資家が巻き込まれる可能性を示したという。

経産相「問題ない」

ただ、東芝は原子力発電や防衛装備など安全保障上の重要技術を抱え、軍事転用の恐れがある技術や製品を国の許可なく外国企業などに提供することを禁じる外為法の「コア業種」に指定されている。梶山氏は11日の会見で、外為法の下、安全保障などの観点から規制対象となる株主の行為を審査する上で、事業者から情報を得ることはあり得ると説明。「このような対応が直ちに問題になるとは考えていない」と語った。

「株主の権利」と「国の安全保障」のどちらを優先するのか。いずれも重要な両概念のせめぎ合いが問題をより複雑にしている。

東芝が25日に開く定時総会を前に、11日はもう一波乱が起きた。会社側が提案する取締役13人の選任のうち、取締役会議長の永山治氏ら5人について、米議決権行使助言会社が反対を推奨していることが判明した。総会の結果次第では、東芝の経営が再び混乱に陥る恐れがある。(米沢文)