北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の合意内容を新たに取り入れるかも焦点の一つになる。米国はTPPで合意された先進的な貿易ルールが自国産業に有利な市場開放策と判断、NAFTAでも導入するよう求めているからだ。思惑通りに合意できれば、米国はNAFTAをモデルケースにして貿易赤字の縮小を狙い、日本に対しても自国に有利な自由貿易協定(FTA)を押しつけてくる恐れがある。

 米国が事前公表したNAFTA再交渉の目的では、メキシコなど海外に拠点を移した企業からの輸入品に対する高関税や、合意できない場合のNAFTA離脱など、トランプ米大統領が選挙戦で口にした極端な主張は影を潜めた。

 逆に電子商取引の環境整備や国有企業の優遇防止など、NAFTAになくTPPに盛り込まれた先進的な貿易ルールが数多く含まれ、再交渉を通じTPPの合意内容をNAFTAにも取り入れたい考えだ。

 トランプ政権のTPP離脱後、米国産牛肉は主要輸出先の日本市場で、経済連携協定(EPA)に基づく関税引き下げの恩恵を受けるライバルのオーストラリア産牛肉に後れを取るなど保護主義の副作用が顕在化し、批判が出ている。

 このため、TPPの合意内容をNAFTAに盛り込み、かつ関税分野などでも成果を上積みすることで、国内の支持者にアピールしたい思惑が透けてみえる。

 トランプ政権はこの手法をNAFTA以外にも応用する構えだ。今後本格化する日米の通商交渉でも、TPPを土台に自動車や農業などの分野でさらなる市場開放を迫る可能性が高い。

 一方、日本は米国を除くTPP11カ国で団結して理不尽な要求をはね返し、手詰まりになった米国を再び迎え入れる戦略を描く。そのためNAFTA再交渉や日米交渉でTPPの合意内容を大幅に上回る譲歩をしないよう足並みをそろえ、米国復帰に先行した11カ国の協定発効でも修正を最小限にとどめる必要がある。(田辺裕晶)