日銀が「マイナス金利政策」を導入して16日で2年が経過する。政策効果で民間銀行の住宅ローン金利や企業向け貸出金利が押し下げられ、各行の不動産向け融資は大幅に増えたが、収益力の低下に苦しむなど副作用も顕在化した。金融政策の正常化に向け、大規模金融緩和を手じまいする出口戦略の必要性が指摘される中、マイナス金利継続の是非をめぐる議論が活発化しそうだ。

 「徐々に金融機関の経営体力が消耗し、金融システムに障害が出てくる可能性がある」。全国銀行協会の平野信行会長(三菱UFJフィナンシャル・グループ社長)は15日の記者会見で、マイナス金利の長期化を牽制(けんせい)した。

 マイナス金利は、企業の資金需要を喚起してデフレ脱却を狙う政策だが、目標に掲げる物価上昇率2%が依然遠い中、利ざや(貸出金利と預金金利の差)の縮小で金融機関の稼ぐ力は弱まっている。

 大手銀行5グループは平成29年4〜12月期決算で本業のもうけを示す実質業務純益(単体または傘下銀行の合算)が合計1兆5719億円にとどまり、マイナス金利導入前の27年4〜12月期比約30%減少した。

 一方、超低金利で銀行の貸し出しは伸びた。牽引(けんいん)したのが不動産融資で、全国の新規融資額はマイナス金利導入の28年に12兆3547億円と前年比約15%増。都市未来総合研究所によると、29年に企業や機関投資家が公表した国内の不動産取引額は前年比14%増の4兆5775億円に上り、海外投資家の取得額が初めて1兆円を超えた。

 ただ、29年の不動産融資額はアパートの建設過剰による反動減から6年ぶりに減少に転じるなど、過熱感を指摘する声も出始めた。大規模緩和であふれた資金は「企業の収益性を高める前向きな投資につながっていない」(エコノミスト)ともいわれ、資金需要が偏っている状況だ。

 4月に再任される方向になった黒田東彦(はるひこ)総裁にとって、出口戦略は最大の課題になる。大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは、副作用の大きいマイナス金利について「解消を検討すべきだ」と提案する。

 ただ、株価の乱高下が続いて景気の先行き不安が広がれば、日銀は逆に追加緩和を求められる。その際、上場投資信託(ETF)の買い増しは株式市場を一層ゆがめる恐れがあるため、「マイナス金利の深掘りが検討課題になるのでは」との指摘がある。金融機関の懸念は深まりそうだ。

(田辺裕晶)