陶磁器などの焼き物(セラミックス)の一種で、原料を高度に精製した「ファインセラミックス」。硬くて熱に強いのが特徴で、スマートフォンや自動車などの部品に使用されている。名付け親は京セラ創業者の稲盛和夫名誉会長だ。そんな工業用素材であるファインセラミックスがアートとの融合を果たした。

 世界でも珍しい「ファインセラミックスアート」を手がけたのは、宝塚大学専任講師で陶芸作家の上田順平さん。これまで加工の難しさなどから、ほとんど芸術作品に用いられなかったファインセラミックスをあえて取り上げたのは、「新しいジャンルに挑戦したかったから」という。

 一方、京セラも「ファインセラミックスの新たな魅力や可能性を見いだせるかもしれない」(文化施設部責任者の塚田俊彦氏)と応じ、上田さんの要望通りに加工を行った。

 作品は真っ白で、形状も四角形の板や筒形、枡形といたってシンプル。機能性の追求から生まれたファインセラミックスを表現したものというが、飾り気の全くない不思議な物体を前にすると、「これは何だ」と考え込まされてしまう。

 だが、それこそが作品の狙いだと上田さんは言う。

 「見る人自身でじっくりと作品の意味や使い道を考えてほしい。そんな余裕やゆとりも必要でしょう」

 日進月歩の最先端技術を支えるファインセラミックスが、芸術という真逆の“用途”で人々に問いかける。作品の魅力はそうした点にあるのかもしれない。