「かもめはかもめ」「夏をあきらめて」など多数のヒット曲がある歌手で俳優の研ナオコ(71)が、芸能生活55年目を迎えた。主演映画も公開中だ。マイペースの活躍を続ける大ベテラン。「55年なんてあっという間。何年やったかなんて関係ないですよ」。控えめに語ってほほ笑む。

多彩な活躍

昭和46年4月1日にシングル「大都会のやさぐれ女」で歌手デビューした。

シンガー・ソングライター、中島みゆきから「あばよ」をはじめ多数の楽曲を提供された。サザンオールスターズのアルバム収録曲をカバーし、日本レコード大賞金賞に選ばれた「夏をあきらめて」など哀愁漂う独特の歌声が魅力だ。

一方、コメディエンヌとしての才能も花開かせ、坂上二郎やザ・ドリフターズらとのバラエティー番組や、コミカルなテレビCMでも人気者になった。

もちろんシリアスな演技もこなし、俳優として役所広司主演の日独合作映画「PERFECT DAYS」(2023年、ヴィム・ヴェンダース監督)に出演するなど活躍。

特別扱いはしないで

現在、最新の主演映画「うぉっしゅ」が公開中だ。

この最新作では認知症が進んだ祖母を演じている。孫娘(中尾有伽)のことも忘れ、「初めまして」と挨拶する。

監督の岡﨑育之介(31)は新人で、あの永六輔の孫。脚本も手がけた。ポップで柔らかい色彩を駆使した個性的な映像。「本当は誰が誰のことを忘れてしまったのか」と観客に問いかける。

「風俗店で働く孫が数日、祖母の介護をすることになる。こういうテーマだからこそ明るく描きたかったので、ファニーなキャラクターをお持ちの研さんにお願いしました」と岡﨑。

研は「脚本を読んで面白そうだと思ったから、やらせていただいた。若い監督たちのお役に立ちたいという気持ちもありました」と話す。

また、監督には「ベテランだからと特別扱いはしないで」と頼んだ。

「監督の頭の中には、こういう映像にしたいというイメージがあるでしょう。それが撮れるまでは、妥協せず、何度やり直しても構わないし、そうすることを約束してもらいました」

もっとうまくなりたい

やはり「面白そうだ」と引き受けたのが梅沢富美男劇団の舞台で、近年、出演し続けている。

一方で、「時代が変わった。ダンスを見せる若い子ばかりの歌番組には出たくない」。少し寂しい。

激動の55年だったはずだが、振り返れば「あっという間」と笑って言う。

「人としても歌手としても役者としても、私はちょっとしか成長していない。まだまだ。もっと、うまくなりたいですね」

(石井健)