外出先で珍しく外を闊歩している猫を見かけたとき、子供の頃の父と猫にまつわる思い出がよみがえってきた。
私が小学生の頃、あることがきっかけで猫を飼い始めた。猫嫌いの父は邪険に接していたのだが、この猫は不思議なことに上手になついていった。そうなると父も悪い気はしないらしく、しまいには夕食時に膝に乗せて自分のおかずを手から食べさせるほどに、そして母に癖になるからやめろと怒られるのだった。
そしてこの猫は、ネズミ捕りの名手だった。毎日のように家のどこかしらに、「見ろ」と言わんばかりの大きなネズミが転がっていた。昭和の時代の田舎の農家はネズミが多かったのである。
ある日の夕刻、晩酌で少し酔いが回った様子の父が、「ネコにも階級があるのを知ってるか」と珍妙なことを言ってきた。「知らない」と答えると、父は「教えてやるからよく聞いとけよ」と話しだした。
「まず一番上がネズミ捕りが上手で人の役に立つネコで、次が畑のモグラしか捕れないモコ、俊敏でスズメを捕まえられるのがスコ、そして一番下はヘビを捕まえてきて人を驚かす悪いやつでヘコだ」と、さもおもしろそうに笑った。
父のあんなにも楽しそうな顔を見たのは後にも先にも覚えがない。
寺沢みち子(70) 新潟県柏崎市


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