バイオリニスト、前橋汀子(81)は昨年、右肩を痛めて手術し、7カ月間、演奏活動の中断を余儀なくされた。60年以上のキャリアで初めての経験だったが、湧き上がったのは「ここでは終われない。まだ勉強しなければ」という思い。リハビリに励み、今年2月には復帰を果たした。大阪でも今月14日、ザ・シンフォニーホール(大阪市北区)で、コンサート「前橋汀子&弦楽ストリングス」を開く。

傘寿を迎えても精力的な活動を続けていた昨夏のこと。しばらく右肩に痛みを抱えながら痛み止めの注射を打つなどして演奏していたが、肩の腱板(けんばん)が断裂していることが分かった。バイオリニストにとって弓を持つ右手の動きをコントロールする右肩は、曲のニュアンスを作る重要な部位だ。

デビューから60年以上、バイオリンを弾き始めてからも70年以上がたち、「ようやく何かをつかめそうだ」と思っていた直後のことだった。「90歳まで弾きたい」と医師に訴え、手術に踏み切った。

術後しばらく、バイオリンを持つことさえできなかった。突然空いた時間を利用し、往年の名バイオリニストたちの演奏をCDや動画で聴くことを重ねた。「刺激を受けました。改めて新鮮な目で曲に向き合おうと思うことができました」と前向きな気持ちに切り替えることができたという。「音楽に取りつかれちゃっているから、勉強を続けたいと思います」

復帰してベートーベンの録音を発表したばかりだが、今後、ブラームスの録音も計画する。「偉大な作曲家たちの音楽は生命力にあふれ、いろいろ語りかけてくれる。時代は変わっても人間の本質は変わらないことを知らされる。年齢を重ねることで見えてきたことかもしれないけど」とほほ笑む。

今月14日、大阪でビバルディの「四季」などの名曲を奏でる。協演するのは年下の実力派たちだ。「若い皆さんの音楽の感じ方は私にとっても刺激的」と練習も楽しんでいる。「お客さまとのやりとりができるステージは学びが大きい。休んでいる間、いろいろな方が支えてくださった。その感謝の気持ちも込めて弾きたい」と話している。(安田奈緒美)

◇ 

コンサートは午後2時開演。全席指定4500円。問い合わせはABCチケットインフォメーション(06-6453-6000)。