熊本、大分両県で計278人が犠牲となった平成28年の熊本地震は14日、最初の激震「前震」から9年。この地震でも問題となった避難生活中に亡くなる「災害関連死」について、危機管理が専門の鍵屋一・跡見学園女子大教授に聞いた。
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−−熊本地震では災害関連死が死者全体の約8割を占めた
「避難所へ支援に入った時は温暖な時期だし、政令指定都市の熊本市も近いので物流も心配なく、災害関連死はそれほど多くないだろうと思った。後で熊本県の報告を見ると関連死の約4割は自宅で亡くなっていた」
「認知症や要介護の人は一般の避難所には行かない。介護施設も被災して社会資源が失われ、在宅で弱っていく姿が浮かび上がった。平時に高齢者を支えている福祉の仕組みを災害直後からフル稼働できるよう支援することが重要。関連死が出るのは構造的な問題だ」
−−支援が必要な人のための「福祉避難所」への理解は深まった
「国は平成12年ごろまでには社会保障制度を整えたが、災害時の支援は自治体任せで抜け落ちていた。令和3年には福祉避難所を一般の避難所と同時に開設し、直接避難できるよう指針が改定されたが、多くの自治体はそこまで手が回らないのが実情ではないか」
−−「福祉サービスの提供」を明記した災害対策基本法の改正案が国会で審議されている
「(災害時に派遣される福祉専門職チーム)『DWAT(ディーワット))』の流れが法的に位置付けられるのは大きな一歩だが、形ができただけで派遣調整や訓練などの機能はこれからだ。災害派遣医療チーム『DMAT(ディーマット)』が過去20年間、訓練や実任務で経験を積んだ先例となる」
−−何が必要か
「都道府県単位の社会福祉協議会に『災害福祉支援センター』を常設する動きがある。平時は人材育成や情報提供を行い、災害時は円滑に福祉人材と連携できるが、まだ数えるほどしかない。DMATと同様に国にも派遣調整の中核を担う拠点が必要だ」
「お年寄りは大して食べないし、喉も渇かないからといって黙って動かないと、どんどん衰弱する。だから大規模地震後は関連死に至らなくても要介護の人が増える。平成23年の東日本大震災後には要介護の新規認定が約2割増えた。要介護者が増えれば財政悪化を招く。災害福祉支援は高齢者の命を守るだけでなく財政問題でもある」(聞き手 市岡豊大)
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かぎや・はじめ 早大法卒業後、東京都板橋区役所入庁。防災課長、福祉部長、危機管理担当部長などを務め、跡見学園女子大教授に。福祉防災コミュニティー協会代表理事。災害福祉や避難支援に関する政府有識者会議委員を歴任。監修著書に「福祉施設の事業継続計画(BCP)作成ガイド」など。


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