韓国・光州市で2019年7〜8月に開催予定の世界水泳大会で、同市は最近、総事業費を1697億ウォン(約170億円)と確定した。13年の誘致時の2.7倍に膨れ上がり、18年2月に開催される平昌五輪で総運営費の補填が重要課題に挙げられる中、光州市議は「どんぶり勘定行政ではないのか」と厳しく批判している。韓国ではここ数年、地方自治体が国際スポーツ大会を多数招致し、多額の赤字を残して政府の支援を期待する傾向にある「スポーツ大会貧乏」の状況だ。

 聯合ニュースなどによると、世界水泳の総事業費は政府の国際行事審査委員会の審議を経て、5月に決定したという。光州市が政府に承認を求めた総額は1935億ウォン(約194億円)で、238億ウォン(約24億円)減額された格好だ。政府が提供する国費に関しても、市の思惑では606億ウォン(約60億円)を想定していたが、実際は482億ウォン(約48億円)にとどまった。同市は入場券の販売、企業スポンサーの支援、積極的なマーケティングなどを掲げ、独自の収入でカバーすると計画を立てている。

 ところが、韓国経済の景気後退や平昌五輪開催の影響などで企業スポンサーの支援がままならない状況にある。聯合ニュースによると、韓国の政府系シンクタンク、韓国開発研究院(KDI)は5月24日、今年の国内総生産(GDP)成長率見通しを2.6%とし、昨年12月時点から0.4ポイント下方修正した。これは昨年の成長率(確定値)と同じだといい、政府が国費支援を約束しただけでも上出来なのではないか。

 というのも、世界水泳大会を招致する際、政府の財政支援に関する書類を偽造して国際水泳連盟(FINA)に提出し、招致委員会の事務総長らが有罪判決を受けたことで、政府支援が得られなくなる事態が懸念されていた。FINAからは、準備不十分なら開催を取り消すと「最後通牒」を突き付けられていた。

 経費削減し、赤字を出さないことが喫緊の課題だ。光州市は招致の際、15年7月に開催された夏季ユニバーシアード大会で使用した施設を利用するなど、施設への投資の抑制▽運営費の最小化▽高効率化など低コストを標榜し、総事業費として635億ウォン(約64億円)を掲げたが、実際は2.7倍に膨れ上がっている。

 光州市は、競技場の建設費などで事業費8171億ウォン(約817億円)が掛かった夏季ユニバで、国費の支援はあったが4330億ウォン(約433億円)を支出している。スポーツ行事に全力を注ぎ、本来市として市民のために行うべきの主要事業が後回しになったという批判が出ていた。韓国では度々、こういった国際スポーツ大会への巨額支出が問題視される。

 中央日報が13年に政府資料に基づいて試算した地方自治体が10〜13年に開催した国際スポーツ大会の赤字額は1兆ウォン(約1000億円)以上という。13年まで4回開催されたF1韓国GPは4年間の累積赤字が6761億ウォン(約676億円)。次いで、11年に大邱市で開催された世界陸上は2430億ウォン(約243億円)の赤字となった。その際、地方自治体は経済性の把握や費用算定もしっかり行わず、無責任に国際競技を突然誘致し、赤字になると予測されれば、すぐに政府に負担を移そうとすると、中央日報は指摘していた。

 平昌五輪の2兆8000億ウォン(約2800億円)に膨れ上がった総運営費で、組織委員会は不足する3000億ウォン(約300億円)の補填に公共企業を巻き込もうと躍起だ。景気後退や前大統領らが不正関与したとされる国政介入事件で民間企業の支援は鈍く、政府に働きかけて公共企業からの支出を要請している。

 東亜大スポーツ社会学の教授は中央日報に対し「大型スポーツ行事は最終損失を明確にし、地方財政に大きな打撃を与えた場合、誘致を強行した人たちが責任を取る制度を設ける必要がある」と提言する。そうでもしない限り、韓国では首長が国際大会を誘致して「スポーツ大会貧乏」になるという負の流れを止められないのだろう。

 韓国の4月の15〜29歳の失業率は11.2%と高止まり、経済の先行きは不透明だ。国民にとっては世界的なスポーツイベントよりも生活を何とかしてほしいというのが、実感なのではないか。