大阪大学が、妊婦の子宮の収縮状態や胎児の心電図などのデータを遠隔で確認・診断できる新システムを開発したことが13日、わかった。妊婦の腹部に小型センサーを貼るだけで、センサーに搭載した人工知能(AI)が一日中情報収集し、スマートフォンなどを介して医療機関へ送信。通院しなくても、産婦人科医が胎児の健康状態を把握したり、陣痛を診断したりできる。平成34年をめどに実用化を目指す。(板東和正)

手のひらサイズのセンサー

 阪大産業科学研究所の関谷毅教授らが、妊婦の腹部に貼る小型センサー(縦約7センチ、横約2センチ、厚さ約6ミリ)を製作した。胎児の心臓の拍動や、子宮を形成する筋肉の微妙な変化を測定する部品を搭載しており、複数のデータをAIが仕分けする仕組みだ。

 センサーは手のひらサイズで、長時間装着しても負担が少ない。1回の充電で約10時間稼働できるリチウムイオン電池を使用する。データは無線通信で妊婦や家族のスマートフォンに送られ、インターネット上のサーバーに蓄積。医師がパソコンなどで確認する。

通院負担を軽減

 関谷教授らは昨年から、阪大の産婦人科医らと共同で臨床研究を開始。複数の妊婦の胎児から心電図の取得や送信に成功した。子宮収縮の測定方法も確立した上で、厚生労働省関連の独立行政法人に医療機器として認可申請する。

 産婦人科では通常、妊婦の来院時に専用機器を取り付けるなどして胎児や子宮の状態を確認している。新システムはいつでも確認できるため、妊婦と胎児の安全性を高め、遠方から通院する負担の軽減につながると期待される。実用化後は阪大病院で導入するほか、産婦人科医が不足する過疎地域の出産支援に役立てる方針だ。

 大阪大大学院医学系研究科の遠藤誠之講師(産科学婦人科学講座)の話

「特に初めて出産する方は、陣痛が起こる時期などが分からず、いつ病院に行けばいいか悩むケースも多い。妊婦が自宅にいても陣痛を診断できるようになれば、出産の安心感と安全性が高まる」

遠隔医療、大学病院が相次ぎ導入

 通信技術の発達に伴って活用が進む「遠隔医療」は、特に地方の患者に多大な恩恵をもたらしている。

 東北大学病院(仙台市)てんかん科の中里信和教授は約5年前から、約90キロ離れた気仙沼市立病院(宮城県)とテレビ会議システムで結んで患者を診察。「(仙台まで)数時間かかる患者には大きな助けになっている」と話す。

 外科手術でも効果が上がっている。旭川医科大(北海道旭川市)は昨年9月、地方病院のコンピューター断層撮影(CT)画像などを医師らがスマートフォンで共有する取り組みを開始。手術を要する患者が旭川医大病院の手術室に入るまでの時間が平均で約3分の1に縮まったという。

情報流出リスクも

 政府は今年4月、遠隔医療の保険適用対象を平成30年度中に拡大する方針を発表した。現在は2回目以降の問診などに限られるが、初回の問診や幅広い診療に広がると予想される。

 一方、情報セキュリティーの課題もある。東京理科大の平塚三好教授は「もし患者の個人情報流出や医療事故が続けば、データを悪用する犯罪や、被害回復を求める訴訟が後を絶たなくなる。送信時に情報を暗号化するなどサイバー対策を徹底すべきだ」と指摘している。