入団6年目の宝塚歌劇団月組男役スター、暁千星(あかつき・ちせい)が単独初主演する「Arkadia−アルカディア−」(作・演出、樫畑亜依子氏)が12月12日まで、兵庫・宝塚バウホールで上演される。組でも主要な役割を務める1人の暁は「成長した自分をお見せしたいですし、下級生を言葉ではなく姿勢で引っ張りたい」と屈託のない笑顔で話す。

 ナイトクラブを舞台に、幼い頃の経験から、人に心を閉ざし、満たされぬ思いを躍りで消化する主人公のミネットが、美園(みその)さくら演じる花形ダンサーのダリアとの出会いで変わる姿を描く。

 主人公は陰のある人物。素直で明るい性格の自身とは真逆の役柄だ。「人を信用しないことは、あまりないんです。悪い人が自分の回りにはいないので。だから多分、だまされやすい方だと思います」と笑う。

 主人公の孤独を理解するための“疑似体験”をした。休みは公園で1人でベンチに座って役を考えた。毎日、真っ暗な部屋の中、窓の光だけで彼の過去を思う。「実際にやってみないと分からないから。夜に何も持たず、さまようことも試そうと…。危ない? ですよね」と笑った。

 ダンスは自身の大きな武器。だが近年、「練習しても成長を感じられない」と伸び悩んでいた。難度の高い踊りが詰まった今公演の稽古で開眼。「新しい技だけではなく、踊りと踊りのつなぎもていねいに教えていただいているので、成長できるかなと思う」

 98期生の首席で、来春から新人公演で最上級生となる若手。若き月組トップ、珠城(たまき)りょうの体制となり、本公演でも主要な役割を務める機会が増えてきた。「月組の下級生は個がしっかりしていて、“心の意志”がある。そこは大切にしたいなと思う。この公演を機に、リーダーシップを学べたら」

 以前は、さほど映画や本に興味がなかった。「見るより先に、自分がやりたいタイプだったので(笑)」。最近は視野を広げるために積極的に見る。特に本をよく読むそうで、「後味の悪いものに惹(ひ)かれます。え、こんな人もいるんだ!と(笑)。心の揺れ方が役作りの勉強にもなります」

 父は元プロ野球の山内和宏投手。長身と広い肩幅という男役として恵まれた体形は父譲りだ。父の現役時代を知らない。が、最近は「プレーしている姿を見たかった」と思う。そこで極力、父とプロ野球の試合を一緒に見る機会を持つようにしているという。

 父の試合展開の“読み”は的中する。それゆえ、幼い頃は「先に結果が分かるので面白くなかった(笑)」とも。「でも今は父がどう考えて試合を見ているのかが気になる。私は男役の後ろ姿が好きで宝塚に入りたいと思った。自分も格好いい背中を見せたい」

 今年は女役、三銃士の1人と本公演でさまざまなタイプの役柄と出合った。「役のどこを深めればいいのかをつかむまでに時間がかかったので。来年は、それを的確にとらえ、早く役と向き合いたい。お客さまに共感していただける舞台を作れたら」と話す。

 主演公演を終え、まもなくすると新年。クリスマスよりも誕生日よりも、「1年で最も好き」という正月を迎える。「年が変わる、おめでたい雰囲気が大好きなんです。1日で、皆も自分の気分も変わる、お正月のパワーってすごい。後は大好きなお餅を食べ過ぎないように」とほほ笑む。

 今年3月から食生活を大きく変えた。肉を控え、魚を中心に玄米や発酵食品をとるように。「上級性の方に教えていただき、試したら自分に合っているようで。気持ちが安定するし、お肌にもいいみたい」。心身ともに健やかな、“若手のエース”が着実に歩を進める。