東京都議選(22日投開票)が13日告示される。近年の選挙戦は街頭演説での握手など有権者と直接触れ合いに加え、交流サイト(SNS)を活用した「空中戦」も欠かせない。一方、偽・誤情報の拡散や誹謗中傷、過激な動画で収益を得ようとする悪質なケースも横行。現行法制で規制が追い付かない部分もあり、選対や警察当局が神経をとがらせている。
慎重な陣営も
「ビラなどの紙を配布するだけでは、有権者は動かない時代だ。SNS、動画が有権者に伝える有効なツールになっている」
長年選挙に携わってきたある党の関係者は告示前、SNS対策の重要性を強調した。
インターネットによる選挙運動は平成25年に解禁。今回の都議選でも、多くの候補者がSNSを通じた有権者への浸透に力を入れる。ただ、一部の陣営は、公職選挙法との兼ね合いから、発信や配信に慎重を期している。現行法で選挙運動の報酬が認められるのは、ウグイス嬢などの車上運動員などに限られる。
昨年11月の兵庫県知事選では、斎藤元彦知事の陣営に入ったPR会社の経営者がSNSの運用を含む《広報全般を任せていただいた》などと発信。公選法に抵触する可能性について、一時物議をかもした。
前出のある党の関係者は動画配信について「告示後は外部に発注しない」と説明した。
この党の候補者は、外部業者に作成依頼した動画を政治活動の一環でSNSで配信してきた。しかし、告示後は、同じ行為が選挙運動の対価としての報酬支払いを禁じる公選法に抵触する恐れがあるため、「候補者の陣営が演説などの動画を自前でアップする」(関係者)という。
別の党から立候補する新人の男性は「どんなことが公選法に抵触するかは、かなり勉強したつもりだ」と話す。その上で、「業者に映像制作を依頼しての選挙戦はアウトになるケースも排除できず、積極的にやろうとは思わない」と語った。
収益も要因
時にSNSの投稿が虚偽の内容や、誹謗中傷を含み過激化する要因の一つに、閲覧数などに応じて収益を得られる仕組みも存在する。
昨年4月の衆院東京15区補欠選挙では、政治団体「つばさの党」メンバーが他陣営の演説を妨げたり、選挙カーを追跡したりする動画を配信し、再生回数を稼いだ。のちに公選法違反(選挙の自由妨害)で摘発された。
与党内では、プラットフォーム事業者が違法動画の収益支払いを停止できるような議論も浮上している。都議選や、参院選を前に警視庁も警戒を強めている。SNS選挙も念頭に捜査幹部は「ありとあらゆる事案を想定しながら、厳正公平に取り組む」としている。(原川貴郎、海野慎介)
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5月2日に施行された改正公職選挙法では、SNS上での偽情報の拡散などを念頭に、対策について「必要な措置」を講じると付則に明記した。
これを踏まえ、与野党7党は、選挙運動に関する協議会を設置した。SNS事業者へのヒアリングも通じ、偽情報や収益化を目的とした投稿への対応を巡り議論を続けている。
自民党は、偽情報の拡散などによる悪影響を軽減するよう事業者に求めるべきだと、主張している。立憲民主党は、事業者に問題がある投稿を削除する努力義務を課すための法整備を求めている。
「表現の自由との関係で、どのくらい規制をすべきか」といった提起もあり、意見集約には至っていないが、夏に参院選を控えていることから与野党は今国会中に一定の方向性をまとめたい考えだ。
ネット選挙規制「現行法と法改正の両面で」
岡田陽介拓殖大教授(政治学)
インターネット選挙の解禁以来、SNSは、政治家、有権者ともに使いやすい情報ツールになっているが、近年は現行法で追い付かない課題も浮上してきた。
偽情報や誹謗中傷は、政党でチェック態勢を整える動きもあるが、公職選挙法の「選挙の自由妨害」など、現行法で対応する流れは必要だ。SNS運営の専門家が選対陣営に関わることもあるだろうが、対価については現行の買収罪の枠内での監視も必要となる。
選挙は本来、議員への当選を目的とし、最低限の運動ができるよう一部を公費で負担する。他候補の当落や収益目的など本来の目的外の立候補は規制が求められる。一部地域で「自らの当選が目的」と宣誓させる制度を導入しており、公選法に反映させてもよい。
SNSを運営するプラットフォーム側が期間中に限り候補者には報酬を支払わない仕組みづくりをする議論を進めることや、陣営側もSNSの収益分を透明化して、有権者に是非を問うのも一手だろう。(談)


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