「ポスト安倍」をうかがう自民党岸田派(宏池会)会長の岸田文雄外相が8月3日予定の内閣改造・党役員人事を前に、煮え切らない態度をとり続けている。憲法改正や経済政策で安倍晋三首相との違いを強調する一方、政権を支えると繰り返し、つかず離れずの姿勢だからだ。派内に閣内残留と閣外に出るべきだとの両論がある中、岸田氏の判断が「ポスト安倍」の試金石となる。(小沢慶太)

 岸田氏は16日、米ニューヨークの国連で開かれる「持続可能な開発目標(SDGs)」フォーラムに出席するため出発した。4年半以上務めた外相として最後となるかもしれない外遊だ。

 17日は日本政府主催のレセプションで「PPAP」で有名になった歌手のピコ太郎さんと「共演」する。ピコ太郎さんを12日に外務省に招き、ともに踊りながら「官民挙げてアピールしたい」と訴えた。パフォーマンスが苦手な岸田氏には珍しい光景だった。

 岸田氏の変化は別の面でも表れている。憲法9条改正で自衛隊の存在を明記する首相の提案に対し、安全保障関連法の成立を理由に「今は9条の改正は考えない」と距離を置く。4日に開いた宏池会創立60周年の記念シンポジウムでは「アベノミクスは確かに企業収益や雇用において大きな成果を挙げているが、残念ながら消費がなかなか伸びない」と述べた。

 シンポジウムでは「政権を取ることを将来考えた場合、やはり大事なのは忍耐や謙虚さだ」とも発言した。宏池会創設者の池田勇人元首相のキャッチフレーズ「寛容と忍耐」になぞらえ、緩みやおごりが都議選大敗を招いたとされる安倍政権を当てこすったのだ。

 岸田派内には閣外に出て自由に活動すべきだとの声が多い。若手議員は昨年8月の内閣改造で閣内残留を固辞した石破茂前地方創生担当相を引き合いに「首相に引き続き頼むといわれてもきっぱり断れるかどうかだ」と語る。

 岸田派幹部も「昨年も閣外に出た方がいいという声は多かった。今回も頼まれて残るというのでは石破氏にどんどん水をあけられる」と漏らす。ただ、党三役などの要職就任の確約はなく、無役になれば存在感の低下は否めない。

 一方、岸田氏は13日の派閥会合でこう呼び掛けた。

 「(世論調査の)数字や批判に振り回されているのでは情けない限りだ。安倍政権をしっかり支えて政権与党としての責任を果たすべきだ」

 自民党が惨敗した東京都議選に触れた約3分間で「政権を支える」と4回繰り返した。閣内で首相を支えるのは当然だが、石破氏がメディアで政権批判を繰り返す姿とは対照的だ。

 首相にとって8月の内閣改造・党役員人事は政権浮揚を懸けた一手となる。慰安婦問題に関する日韓合意やオバマ前米大統領の広島訪問などの実績を挙げ、安定感のある岸田氏に留任を求める可能性はある。岸田派若手は次々回の4年後の総裁選を見据え、閣内で外相の実績を積むべきだとし、「閣内からでも言うべきことはしっかりと言った方が存在感も高まる」と残留を支持する。

 外交で連携する首相と岸田氏だが、政局の話はほとんどしない。初当選同期とはいえ「お友達」でもない。岸田氏は13日、官邸で首相と約20分間面会したが、2人とも人事を話題にしなかった。岸田氏が「首相に何か言われるかと思っていたが…」と周囲に語るように、すれ違いだった。

 22日に香川県内で大平正芳元首相の墓参りを行う岸田氏。元宏池会会長の大先輩の墓前で果たして何を誓うのか…。