グラウンド内の“改造”が虎を12年ぶりのリーグ優勝に導くか。阪神の本拠地・甲子園球場の内野の土部分がこのほど2メートル拡張された。交流戦最後の6連戦を迎える直前の12日に突貫工事が施され、西武、楽天戦は“新しい甲子園”で戦った。6試合の成績は3勝3敗だった。

 外野の芝を刈り取り、内野の土部分を拡張した今回の処置は阪神の首脳陣や選手の要望に応えたものだ。グラウンドを管理する阪神園芸の運動施設部・金沢健児次長はこう説明した。

 「タイガースの要望です。実は昨年も内野の土部分を1メートル拡張しているんです。今回は2メートルですから2年前に比べると3メートルも内野の土部分は後ろに下がったことになります。なぜ? 内野手の守備位置が後ろになって、ゴロを捕球する箇所が土と外野の芝の境目になっているんです。捕球しづらいし、故障の原因にもなるので下げてくれ…と。ホームチームの要望ですからね。すぐに対応したわけです」

 内野陣の守備位置が後ろに下がれば、一塁送球の距離は長くなるものの守備範囲は広くなる。特に二塁手は一塁への送球間隔が短いだけに、守備範囲が広がることで相手のヒットを防ぐ確率がかなり上がるのだ。

 早速、拡張効果が出たのは18日の楽天戦。といっても相手、楽天の二塁手藤田の守備だった。四回1死二塁では糸原の二塁左のゴロをアウトにされ、六回無死一塁でも原口の二塁左のゴロを好捕、見事なグラブトスで併殺に取られた。新しい環境を味方にしたのは阪神ではなく楽天とはあまりに皮肉な結末…。

 そもそも土部分の拡張を最初に提案したのは平田チーフ兼守備走塁コーチだ。「ウチの内野手を深く守らせ、守備範囲が広くなればいいかと考えたんだ」と話しているが、狙いを生かすも殺すも実際には守備に就く野手の技量が問題になってくるわけだ。つまり阪神では上本や糸原、大和らの守備力が問われる。

 阪神は交流戦を終えた時点で64試合を消化し、37勝27敗の2位。首位・広島とは3ゲーム差だ。原動力は投手陣の安定。防御率2・90は素晴らしい。バッテリーを中心とする守りがしっかりしていれば、今後の戦いも楽しみだろう。

 実は32年前の1985(昭和60)年、ある部分だけ内野の土部分が拡張されていた。「二塁手の岡田さんが芝を後ろに下げてくれと要望を出されました。当時は1メートルぐらい下げました」とは金沢次長。あの21年ぶりのリーグ制覇や初の日本一の隠された“勝因”というのだ。二塁でレギュラーに定着した初年度にグラウンド改造を要望した岡田彰布氏(元監督)の“野球眼(やきゅうがん)”には改めて唸(うな)るばかりだが、広島と競り合っている今季も拡張効果が出れば夢は広がる。

 「ひとつ楽しみがあるんです。甲子園での次の広島戦(7月17〜19日)で菊池がどこを守りますかね。これだけ下げても外野の芝部分で守ったりして…」とは球団関係者。敵の二塁手は日本球界屈指の名手だった。う〜ん、アドバンテージは思惑通りにあるのだろうか…。

      植村徹也(特別記者)

植村徹也(うえむら・てつや)

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 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の月〜金曜日午後9時からの「」、土曜日午後6時半からの「」に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。