連日、高校野球の熱戦が続く甲子園球場で、日本中の野球ファンを熱狂させた「清宮フィーバー」をプチ体験できるスポットをご存じだろうか。球場に隣接する甲子園歴史館に今年登場したばかりのVR(バーチャル・リアリティー)。春の選抜大会で清宮幸太郎を擁する早稲田実業などが入場行進するシーンを完全収録。専用のゴーグルで疑似体験できる。今大会では高校通算最多タイ記録の107号本塁打を放った清宮の活躍を見られない分、仮想現実の世界でその雄姿をひと目見ようと、多くの高校野球ファンが同館を訪れている。(岡野祐己)

■VRはイチ押しの目玉企画

 甲子園球場の外周を左翼席付近まで歩くと、甲子園歴史館の入り口が見えてくる。通路を順に進むと、松坂大輔(横浜、現ソフトバンク)や田中将大(駒大苫小牧、現米大リーグヤンキース)らが繰り広げた過去の名勝負を振り返る企画展や、阪神の藤浪晋太郎やマテオ両投手らの豪速球を捕手目線で体感できる映像コーナーが現れる。

 これらは大半の入館者が足を止める人気展示なのだが、同館の尾野幸香さんが「いま、一番人気」と教えてくれたのがVR(バーチャル・リアリティー)だ。

■マウンドから見える景色も味わえる

 展示の一番奥にあるのがVRコーナー。専用のゴーグルを装着すれば、360度の視点で2種類の映像が楽しめる。

 1つ目は、今春の選抜大会の入場行進のリハーサルを収録した映像で、カメラマンが選手の背後に立って撮影した。早稲田実業の清宮らが力強く行進する姿を間近で見ることができ、まるで高校球児として野球の聖地を歩いているような気分が味わえる。

 2つ目は、甲子園球場の上空を散歩したような映像が楽しめる「甲子園空中散歩」。あこがれの甲子園のマウンドから見える景色も体験できるのが特徴だ。県大会を勝ち上がった高校球児やプロ野球選手しか見られない特別な情景にうっとりする人も多い。見学に来ていた神奈川県の中学生硬式野球チーム「湘南ボーイズ」の投手、塚越智也さん(15)は「マウンドから見える景色が新鮮だった。いつか自分も投げてみたい」と甲子園での活躍に夢を膨らませていた。VR利用料が入館料に含まれているのもうれしい。

■「KANO」効果で台湾人観光客も急増

 甲子園歴史館によると、ここ数年、台湾からのインバウンド(訪日旅行客)が急増しているという。

 そのほとんどのお目当ては、台湾が日本統治下にあった1931年の第17回大会で、台湾から初出場して準優勝を果たした「嘉義農林学校」の校名が記された大会のトーナメント表だ。表の同校部分は来館者が指でなぞるからか、そこだけ白くなっている。

 台湾からの来館者は嘉義農林学校の実話をベースにした映画「KANO〜1931海の向こうの甲子園〜」が台湾でヒットした2014年ごろから目立って増えており、ここ2年ほどは毎年約1万5千人が来館している。目を閉じれば、快進撃する嘉義農林学校の選手たちに大きな声援を送る当時の人たちの姿が浮かんでくる。

 その名の通り、甲子園にまつわる新旧の歴史に触れられる甲子園歴史館。この夏、暑い甲子園のスタンドで野球観戦にひと息入れるなら、空調の効いた静かな空間で、高校野球の伝統に思いをはせてみるのもいいだろう。

 入館料は大人600円、4歳〜中学生300円。大会期間中の21日までは特別料金で高校生300円。問い合わせは同館((電)0798・49・4509)。