ザル守備矯正と投手力強化−。矢野阪神は巨人追撃に2つの課題を克服しなければなりません。ならばショート植田海、セカンド木浪の固定と、狙い目はソフトバンクの2軍投手陣です。阪神は33試合消化時点で16勝16敗1分けの勝率5割。首位・巨人とは4・5ゲーム差です。サンズ、大山、ボーア、福留&糸井の中核打線が計算できるようになり、先発投手陣の質と量も他球団を上回っています。一方でチーム失策数24はリーグワースト。昨季も102失策を記録した守乱は全く改善されていません。糸原離脱後の二遊間の固定は急務ですね。そして、更なる投手力強化の大チャンス到来です。水面下の戦いでも巨人に勝ってほしいですね。

守備の乱れの負のデータ

 ある意味、今の阪神の重要課題を暴露した試合でしたね。再起を目指す藤浪の今季2度目の先発登板となった7月30日のヤクルト戦(神宮)は七回裏にショート北條の2つの失策で失点を重ね、7回4失点(自責1)。ゲームは0−6で敗れ、毎回の10奪三振の力投も報われませんでした。

 「誰もエラーしようと思ってエラーしていない。味方がエラーをしたとき、ミスが出たときに抑えてこそ。ああいうところでカバーできたらと思っています」

 試合後の藤浪は唇をかみしめながら同学年でもある北條をかばいました。

 最速154キロの直球と自身が「スプリット」と表現した140キロ台のフォークボールがキレ味抜群で、これなら近い将来、必ず勝てる…という予感の漂うマウンドでした。だからこそ、この試合で勝たせたかった…とも言えますが、ここで注目しなければならないのは、藤浪の足を引っ張った守備の乱れが30日のヤクルト戦の七回だけではない…という負のデータです。

 120試合制の今季、33試合を終えた段階で阪神のチーム失策数は24個。これはリーグワーストです。首位の巨人は同じ33試合消化時点でチーム失策数はわずか8個。チーム失点数は阪神が135で巨人は106ですが、この失点の差は、そのまま失策数の差と見てもいいかもしれません。

 阪神は昨季もチーム失策数102でもちろんリーグワースト。100以上の失策数は2000年の101個以来、19年ぶりでした。特に三遊間だけで53失策を記録しています。三塁手が22個、新人だった木浪が中心に守った遊撃手が31個のエラーをした結果でしたが、今季も順調?に失策数を伸ばしているのです。このペースならシーズン87個ぐらいの失策が記録されそうですね。優勝を狙うチームとしては、致命傷になりかねない守備の乱れです。

打撃陣に反発力はある

 舞台裏をのぞくと、問題は深刻ですね。二遊間で攻守に存在感を発揮していた糸原が7月19日の広島戦(甲子園)の試合途中に離脱。兵庫県内の病院で診察を受けた結果、「右手有鈎骨(ゆうこうこつ)骨折」と診断されました。糸原は今季、26試合に出場して打率3割1分、2本塁打、8打点。自身最長の12試合連続安打を記録するなど、チームの最大8あった借金を返済した立役者でした。しかし、長期離脱は確実な状況…。矢野監督ら首脳陣は二遊間の選手起用に苦心することになったのです。

 北條のダブルエラーに潜むチーム事情は、糸原離脱に起因するわけですが、ここでチーム全体の流れを見るとき、痛感することがあります。33試合消化時点で阪神のチーム打率2割5分、得点139はいずれもリーグ5位ですが、チーム本塁打数36はリーグ3位です。広い甲子園球場を本拠地としながらも、今季の阪神には長打力があります。さらにチーム盗塁数26はリーグトップです(記録はいずれも30日現在)。何が言いたいか…といえば、今季の阪神は昨季のような反発力のない打撃陣ではない、ということです。

 サンズ、大山、ボーアに糸井&福留が中核にいて、開幕時は打撃不振だった近本も調子を上げています。なので、昨季よりも点を取れるムードはあります。ならば、二遊間は徹底した守備重視でいいのではないでしょうか。特にショートは絶対!守備力です。北條の攻撃的な野球のスタイルも魅力的ですが、ここは守備重視の観点から「ショート植田海、セカンド木浪」の固定ではないでしょうか。

 梅野が正妻にドッカリ座り始めてから、チームも反転攻勢に出ました。捕手と二遊間の固定でセンター近本なら、チームの中心ラインは充実します。チーム失策数にも歯止めがかかるのではないでしょうか。しっかり守って、攻撃陣が点を取る! 巨人を倒すにはコレしかありません。

水面下で勝ってグラウンドでも勝つ

 そして、もうひとつの“強化策”はシーズン途中のトレード画策です。なぜなら現在、大チャンスが目の前にあるからです。と同時に水面下の補強策で巨人に競り勝つことこそが、グラウンドの優劣につながると考えるからです。

 狙い目はズバリ、ソフトバンクです。今季のソフトバンクは36試合消化時点で20勝15敗1分けの首位ですが、2位の楽天とは0・5ゲーム差。3位の西武とも2ゲーム差でまだまだ優勝争いはどうなるか分かりませんね。そのソフトバンクが補強ポイントとして、現在進行形で探しているのが右打ちの外野手ですね。

 昨季まで3年連続で日本一に輝いているソフトバンクですが、右打ちの外野手の層は薄く、昨年のドラフト会議でも1位指名にJR西日本から佐藤直樹外野手(21)を指名しました。1位に野手を指名したのは9年ぶりでした。それでも層の薄さは大きく変わらず、期待したバレンティンも打撃不振でスタメンを外れる日々です。

 一方で、ソフトバンクの投手陣は2軍も層が厚いですね。例えば14年のドラフト1位の松本裕樹投手(24)や、17年のドラフト4位の椎野新投手(24)、16年のドラフト1位の田中正義投手(26)らが2軍にいます。ソフトバンクでは1軍戦力になれず、今季はヤクルト移籍の長谷川宙輝投手(21)は今や、貴重な中継ぎ左腕です。ヤクルトの予想外の躍進の一因です。第二の長谷川がソフトバンクの2軍にはウジャウジャといるのです。

 当然ながら、ソフトバンクの若い投手に目をつけている球団があります。すでに今季、開幕後に2件の交換トレードを成立(楽天との間に池田−ウィーラー、高田−高梨)させている巨人です。球界の舞台裏ではソフトバンクの補強ポイントである右の外野手を交換要員にして、すでに交渉を始めている…という情報も流れています。

 ここで、さらに巨人の戦力層を厚くさせてはなりません。阪神にはソフトバンクが欲しがる右の外野手が豊富にいますね。なかには九州出身の選手もいます。巨人の機先を制して投手補強を成し遂げることが、夏場以降の超過酷日程を克服する決め手になるやもしれません。前向きに取り組んではどうでしょうか。

 これからのペナントレースは超過密日程&酷暑&コロナ禍の恐怖…との闘いです。チームのウイークポイントをできるだけ埋めて、戦力層を厚くすることが大事になるでしょう。巨人はだからこそシーズン開幕後も激しく動いているのでしょう。フロントと現場が束になって戦わないと、勝てる相手ではありません。今こそ英知を結集してほしいものですね。

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 【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。