【カイロ=佐藤貴生】ロイター通信によると、イエメン近海で10日、密航船に乗ったエチオピアやソマリアからの移民180人が、密航業者によって船から突き落とされた。9日にも密航船に乗った移民120人が突き落とされ、海岸沿いに29人が打ち上げられているのが見つかった。国際移住機関(IOM)は、2件で少なくとも約70人がおぼれるなどして死亡したと推計している。

 IOMのサイトによると、密航業者らは、治安当局の摘発を恐れてイエメンへの着岸前に移民らを海に突き落としたもようだ。密航船はさらに別の移民を運ぶためにソマリアへ戻ったとみられ、IOMの報道担当者はロイターに、移民問題をめぐる「新たな傾向」の始まりだと指摘した。

 移民らは最大36時間に及ぶ乗船中、1〜2リットルの水とわずかな量の食べ物が与えられるだけで、トイレに行くことも許されなかったという。移民の多くは10代で女性も含まれていた。

 イエメンは、アフリカの移民が富裕なペルシャ湾岸諸国や欧州に向かうための主要なルートのひとつで、今年もすでに5万5千人が運ばれたもようだ。

 しかし、イエメン国内ではサウジアラビアなどが支援するイスラム教スンニ派系の政府と、イランが後ろ盾とされるシーア派系のフーシ派による内戦が泥沼化。人道危機が常態化し、移民に十分な保護を与えることも難しい状況にあり、IOMは密航業者を強く非難している。