緊迫感を増す中印関係について米紙では、偶発的な要素によって万が一の戦闘に至る可能性には言及しつつも、比較的冷静な筆致で分析している。

 米紙ワシントン・ポスト(電子版)は7月20日、「再びインドと中国の間で戦争が起こるか」との社説を掲載。1962年に中国がインドに侵攻した国境紛争が再度起こる可能性を分析した。社説ではインドのネルー首相が提唱した「ヒンディー・チニ・バイ・バイ」(インド人と中国人は兄弟だ)という言葉を引用して、関係が深い時期もあった両国の歴史を紹介した。

 現在、中国が本当に気になるのは「インドが米国に近づいていること」と言及する。中国の習近平国家主席が提唱する現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に対抗するかのように、インドのモディ首相が「日本、ベトナム、韓国との関係構築にエネルギーを注入しており、そうした行動のすべてに中国が疑念を抱く事態となっている」と指摘している。

 ただ、社説では、緊張感こそ高まってはいるが、この40年間、両国間では一発の銃弾も発射されていないと分析し、にらみ合いの“着地点”は「地域からの兵士の相互撤退である可能性がある」としている。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は8月4日、「中国がインドに国境での紛争で『撤退しない』と伝達」とする記事を掲載。中国、インド、ブータンが接する一角は、34平方マイルで「小さく遠隔地だが、地政学的な問題は大きい」と指摘する。また、中国と敵対することなく、インドとの緊密な関係も享受してきたブータンの不満が増しているとも触れた。

 記事では、中国の専門家のコメントを引用する形で、外交的努力がついえた場合など「物事が制御不能になると、軍事的紛争に発展する可能性は完全に排除することはできない」とするが、「軍事衝突の危険性は軽微だ。双方はまだ外交的解決策を探している」と伝えている。(森浩)