米ワシントンでの20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、世界経済がようやく本格的な回復期に入りつつあるなかでの開催となった。これまでのG20は2008年の金融危機後の対応が中心議題だったが、参加国の間では、危機の震源地となった先進国と打撃を受けた新興国が採った対策が奏功したとの見方から、危機対応の収束が意識されている。ただし、金融危機を乗り越えた米欧が金融緩和の縮小に向かう一方で、新興国からの資金流出という新たなリスクにも目が向けられている。(ワシントン 塩原永久、蕎麦谷里志)

 「世界経済が1930年代のような大恐慌を完全に防げた中で、各国の金融政策の思い切った緩和の効果があったのは事実だ」

 日銀の黒田東彦総裁は12日、金融危機後の主要国の中央銀行が果たした役割に触れ、危機を“克服”したとの感慨をにじませた。

 過去のG20では、金融危機からの回復を優先し、中国やドイツなど貿易黒字国による財政刺激策にあからさまに期待を寄せる空気すらあった。だがある会議筋は「去年まで盛んだった財政支出を求める声は今年は影を潜めそうだ」と話す。

 ロイター通信によると、G20議長国、ドイツのショイブレ財務相の経済顧問からは「(参加国は)過大な負債を終焉させる力強いコミットメントを発すべき時期にきた」との声も出た。

 ただ、米欧が大規模緩和の縮小に向かい、金融政策を正常化させる中で、新興国に与える悪影響を懸念する声も高まっている。緩和マネーは現在、より高い収益を得ようと新興国の通貨や株などに流入しているが、正常化が進み米欧の金利が上昇するとマネーが一気に逆流し、新興国の通貨が暴落して金融危機を誘発しかねないからだ。

 これまでも1994年のメキシコ通貨危機や、97年のアジア通貨危機など、米国の利上げの影響が新興国に及び、世界的な市場の混乱につながったケースは少なくない。2013年5月に当時のバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、金融緩和政策の縮小を示唆した際に市場が混乱した「バーナンキ・ショック」も記憶に新しい。

 国際通貨基金(IMF)も11日公表の世界金融安定報告で、新興国から資金が流出して「世界経済の失速につながるリスクがある」と警告している。

 こうした事態に備え、新興国側も海外資金に依存しない体制を整えており、リスクは以前よりは低下している。しかし油断は禁物だ。SMBC日興証券の平山広太・新興国担当シニアエコノミストは「トルコや南アフリカなど外貨準備が少なく、経常収支の赤字が大きい国がまだある」と指摘。こうした国で通貨危機が起きれば、新興国全体の信用を押し下げて、投資資金の新興国離れを誘発する可能性もある。

 そうなると「安全資産」とされる円が買われ、大規模緩和により実質的に円安に誘導してきた日銀にとっても難しいかじ取りが迫られることになる。