【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮が中国共産党の習近平総書記の特使受け入れを決めたのは、北朝鮮経済の生殺与奪権を握る中国をつなぎ止めようとするシグナルとみられる。ただ、国連制裁に同調した習政権への不信感は根深く、中朝の“雪解け”は予断できない。

 「習同志の特使として党対外連絡部長、宋濤同志が間もなくわが国を訪問する」。北朝鮮国営メディアは15日、ニュースでこう伝えた。同じ日、金正恩朝鮮労働党委員長のトラクター工場視察も報じられた。

 金委員長は自らトラクターを運転、「敵対勢力の封鎖を破り、経済強国を切り開く自力自強の鉄馬だ」と評価したという。9月下旬以降、それまでの核・ミサイル関連から一転し、工場や農場視察に力を入れている。国連制裁の影響がひしひしと迫り、経済分野の引き締めを優先せざるを得ない内情がにじむ。

 そうした中、北朝鮮はロシアへの接近を強めてきた。崔善姫外務省北米局長が10月下旬、モスクワの国際会議に出席。日米韓の当局者らも参加し、露側が仲介に意欲を示したが、崔氏は「米国がわが国の核保有を認めない限り、会談に応じない」との原則論を振りかざし、不発に終わった。

 北朝鮮にとって結局、ロシアは安全弁にすぎず、貿易額の9割以上や原油供給を依存する中国との関係維持なしには、体制の安定もままならない現実がある。習氏の総書記再選に祝電を送り、習氏からの返信を党機関紙の1面に掲載するなど、関係維持を望むメッセージを送ってきた。

 一方で、中国は制裁圧力を加える当事者でもあり、名指しこそ避けつつ、国営メディアで非難してきた。制裁対象となった出稼ぎ労働者の一部に対しても、中国やロシアからの帰国が指示されたとも伝えられる。

 中国が対話の枠組みとして重視してきた6カ国協議について、崔氏はモスクワで「米国が変わらない限り、実効的でなく、復帰しない」と一蹴した。金正恩政権の最終的な交渉相手は中国ではなく、米国しか念頭にないとの姿勢を如実に示している。