2015年の日韓合意から約2年。慰安婦問題は収束どころか、世界中にまき散らされた。米サンフランシスコ市議会が慰安婦像受け入れを決める直前、ジュネーブの国連人権理事会で韓国代表団が日本を攻撃した。

 約100カ国が集まった対日審査。その会場で日韓合意を「被害者や民間団体は受容できないと訴えている」と主張した。見えてきたのは、政府ではなく「民間」を盾にとる韓国側の新手法だ。

 日韓合意は、慰安婦問題で「国連など国際社会での非難・批判は控える」ことを確認している。そこで批判の主体を政府から民間に置き換えたのだ。慰安婦像設置を進めたのも在米民間団体だった。だが国際社会には、韓国が北朝鮮や中国とともに日本を批判しているという印象だけが残る。

 韓国によるロビー活動も活発だ。先月の舞台はパリだった。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(世界記憶遺産)で、日中韓などの民間団体が登録申請した慰安婦関連資料の審査。ユネスコ関係者は「韓国側ロビーはすごい。民間団体は審査を担う諮問機関の専門家にも攻勢をかけた」と驚いた。

 ジュネーブの対日審査では岡村善文・人権担当大使が、慰安婦問題は日韓合意で「最終的な解決」を確認したと説明した。強制連行したという主張は根拠がないとして、「国際社会は正しい理解を」と訴えた。慰安婦問題が国際社会に浮上するたび、日本が反論するのは当然のことだ。

 一方、北朝鮮が核・ミサイル威嚇を強める中、日韓対立は各国の東アジア関与を躊躇させることにつながりかねない。

 米欧メディアは先週、訪韓したトランプ米大統領をもてなす料理に「独島エビ」が含まれていたことを一斉に報じた。独島は韓国が領有権を主張している竹島(島根県隠岐の島町)の韓国名で、日本側が抗議したことが黒い皿に載ったエビの写真とともに伝えられた。英紙フィナンシャル・タイムズは「トランプ氏が北朝鮮の核挑発に対する結束を強めようとする中、複雑な歴史問題を象徴した」と報じ、韓国は中国に接近していると指摘した。

 米国のアジア外交を支える同盟国の対立。その印象が広がるダメージは大きい。日本は慰安婦問題で主張を貫く一方、対北結束を強化するという難しいかじ取りを迫られる。(ジュネーブ 三井美奈)