「悩んだね」

二者択一を迫られた巨人・阿部慎之助監督(46)が選んだのは、坂本勇人内野手(36)だった。オープン戦で打率・115でも、17年間レギュラーとして戦い、現役最多の通算2415安打を誇るベテランに「スイッチの入れどころは知っている選手だから」と、28日のヤクルトとの開幕戦(東京ドーム)の三塁スタメンを託した。

対抗馬の中山礼都内野手(23)は昨季終盤から打撃面で明らかな成長を見せており、オープン戦も打率・304。阿部監督も高く評価しており、「(坂本は)体調を考慮しながらのシーズンになる。中山にも絶対にチャンスがある。そこでいいものを見せてほしい」と、若武者への期待は信頼に変わりつつある。

それでも指揮官は「実績だね」と決め手を明かした。安定した三塁守備、グラウンドでのリーダーシップ以上に、坂本が修羅場を味わってきた経験値が、中山のアピールを上回ったということ。オープン戦終盤には坂本の打撃に「駄目とは見えない。全く悲観してない、僕は」とも語っていた。坂本がオープン戦で結果が出ないのは、全盛期の頃から珍しいことではない。

就任1年目の初陣だった昨季の開幕戦も、阿部監督は「実績」に託した。新外国人、オドーアが開幕目前で急きょ退団。開幕戦に「3番・右翼」として抜擢したのは、萩尾、浅野ら若手ではなく、代打要員とみられていた当時35歳の梶谷隆幸だった。

昨季限りで現役引退した梶谷はダイビングキャッチでピンチのチームを救い、値千金の2ランも放った。阿部監督は監督初勝利の立役者となったベテランへ「やっぱり…ね。場数を踏んでいると違うんだな。素晴らしいと思って見ていました」と、最大限のねぎらいを口にした。開幕スタメンは3年ぶりだった梶谷の「自分の体ではないんじゃないかというくらい緊張した。せっかく開幕で使ってもらったので、なんとか結果を出したいと必死でやりました」という言葉が、開幕戦の特別さを際立たせた。

勝敗のどちらかに「1」が記録されるだけだが、「143分の1」というのは違う。19年目を迎える坂本も「今年どうなのかなという不安と、ワクワク感。またシーズンが始まるな、といういい緊張感がある」と胸をざわつかせる。プロ1年目のグアム合同自主トレから育ててもらった兄貴分、阿部監督の覚悟の起用に応えないわけにはいかない。(谷川直之)