労務管理上、マイクロチップの体内埋め込みが可能な人に限ります—。将来、従業員の採用条件にそんな一文が登場しはしないか▼まさかそれは、と思いつつ、考えさせられるニュースである。米国のIT関連企業が社員認証用の集積回路(IC)チップの装着を提案し、先日、呼び掛けに応じた人の手に米粒大のチップが埋め込まれた▼手をかざせば、ドアの解錠やパソコンのログインが可能になる。社内の売店で支払いもできる。いわば目に見えない社員証である▼一方で、勤務時間外も居場所を会社に把握されないか、健康に悪影響はないかと心配する声が出たのも当然だろう。そこで同社は、同じ機能を持つリストバンドや指輪を選べるようにしたが、約半数の40人以上が埋め込み処置を受けたというから驚く▼介護の現場では、徘徊(はいかい)症状がある高齢者の靴や財布に発信器などを付け、機械の目で見守る試みも行われている。技術革新が生活の安心に役立つのは大歓迎だ。だが、生身の体に集積回路を入れることには抵抗を感じる人が多かろう▼「まさか」ついでに空想を広げてみる。暮らしが便利になりますよ、といううたい文句の下、健康保険証や年金・預金といった個人情報を集約したチップの埋め込みが推奨され、やがて国民の義務に…。どうにも歓迎できない未来予想図である。(2017年08月09日08時00分更新)