岡山市の旭川で11日、3人が流され、2人が犠牲になった水難事故で、岡山県警は12日、死亡した坂本秀雄さん(69)=同市南区福富東=が、川に落ちた女子中学生2人のうち1人を救出していたことを明らかにした。当初は、助かった生徒は自力で川から上がったと発表していた。

 死亡したもう1人は中学2年西原日菜乃さん(13)=同市中区原尾島。県警によると、助かった生徒(13)=同市、2年=や目撃者の聞き取りから、坂本さんはこの生徒を川岸に引き上げた後、西原さんを助けに再び川に入ったことが分かったという。坂本さんの死因は溺死だった。

 県警は生徒2人が河川敷そばの浅瀬で遊んでいた際に誤って転落したとみている。

 坂本さん方の近所の住民によると、坂本さんは町内会で衛生部長を務め、地域の清掃活動にも積極的に参加していたという。突然の死を受け、息子は12日、山陽新聞社の取材に対し「普段から正義感が強く、助けに行ったと聞いて『そうだろうな』と。今は何も考えられない」、いとこの男性(67)=同市=は「普段は物静かで、時折にっこり笑うのが印象的だった。年齢が近いから寂しい」と語った。

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 西原さんの周囲にも悲しみが広がった。「一緒に犬の散歩をしてくれた。誰にでも優しくかわいい子だった」と近所の80代女性。

 通っていた岡山市立の中学校では12日朝、臨時の全校集会を開き、校長が「このような悲しいことを二度と繰り返してはいけない」と呼びかけた。当面、市教委から派遣を受けるなどしたスクールカウンセラー2人が生徒たちの心のケアに当たるという。

水難事故多発季節 旭川の構造物付近に注意

 岡山県内では毎年20件程度の水難事故が起きており、川や海のレジャーが本格化する夏場は増える傾向にある。今回の旭川の事故は川の中の構造物近くで起きたとみられ、専門家は「特に危険な場所だ」と指摘する。

 県警によると、今年発生した水難事故(10日時点)は11件で、死者は6人。2020〜24年の5年間では計111件起き、68人が死亡した。このうち中学生以下は4人が犠牲になっている。

 11日に3人が流された岡山市の旭川。管理する国土交通省岡山河川事務所によると、事故現場付近には取水堰(せき)が設けられ、上流と下流の高低差で流れが速くなりやすく、川底が削れて深くなっている可能性がある。水深は深い所で2〜3メートルに達するといい、地元町内会の島村邦彦会長(78)は「過去に何度も人が流される事故が起きている」と証言する。

 事故原因は県警が捜査中だが、水難学会理事の斎藤秀俊・長岡技術科学大大学院教授は「水の事故で多いのが急な深みにはまるケース。堰など構造物の近くは特に危険」と指摘。「子どもだけで水辺では遊ばない。見かけた大人は危険を教えるなどしてほしい」と強調する。

 もし、流されそうになったらどうするか。斎藤教授は「呼吸を続け、あおむけの姿勢で背浮きをして救助を待ってほしい」と助言し、浮力となる靴や服は脱がないことを勧める。

 今回の事故と同様、救助に向かった人が死亡するケースも後を絶たない。県内では24年6月に玉野市の池に転落した女児を助けようとした曽祖父が溺死し、同8月には新見市の高梁川で流された弟を助けに入った兄が死亡した。

 水難事故を目撃した際の対応について斎藤教授は「速やかに通報し、空のペットボトルなど浮力となるものを投げ入れて」と訴える。