近い将来、発生が懸念される南海トラフ地震に備えて、国は「臨時情報」という特殊な情報を準備しています。現在の仕組みになって5年が経ちますが一度も発表されたことはなく、その存在や意味があまり伝わっていません。初めて発表されたとき、適切な行動はとれるのでしょうか。

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<静岡県 石川嘉延知事(2008年当時訓練)>
「静岡県全域を含む地域に訓練、警戒宣言が発せられました」

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長年、私たち静岡県民は南海トラフ地震の一つである「東海地震」について、2、3日または数時間前に「予知できる」可能性があり、異常を捉えた場合は国が「警戒宣言」を出す仕組みがあると知らされてきました。

ところが、国は2017年、方針を180度転換します。

<東京大学地震研究所 平田直教授(2017年当時)>
「現在の科学の実力では『3日後に確実に地震が起きる』とは言えない」

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南海トラフ地震の防災対応を「確度の高い地震予知はできない」との前提で進めていくことにしたのです。そこで2019年、新たに誕生したのが「南海トラフ地震臨時情報」です。

南海トラフ沿いでマグニチュード6.8以上の地震や通常とは異なる地殻変動が観測された場合に発表されます。

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そして、「巨大地震の発生する可能性が高まった」と判断されれば、その切迫度に応じて「巨大地震注意」または「巨大地震警戒」の臨時情報が発表されます。

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普段の生活を維持することを基本としつつ、「巨大地震警戒」が発表された場合は、津波からの避難が間に合わない一部のエリアや避難に支援が必要な人には約1週間、事前の避難が呼びかけられます。

臨時情報がいまの仕組みになって、間もなく5年が経ちますが、県民の理解はあまり進んでいません。

<関西大学社会安全学部 林能成教授>
「(臨時情報を)知らない人が多過ぎる。全然、情報の普及啓発・広報が進んでいないことが一番の問題」

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静岡県が2023年度実施した県民意識調査では、「臨時情報」について「内容を概ね理解している」と答えた人が37.0%と最も多かった一方、「聞いたことはあるが内容は知らない」と答えた人が32.0%、「聞いたことがない」と答えた人も31.1%いました。

2019年に静岡県島田市で行われた訓練ではこんなアナウンスが街中に流れました。

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「いまから1週間以内に南海トラフ地震が発生する恐れが高まっています」

<関西大学社会安全学部 林能成教授>
「これ、誰が聞いても、地震予知の情報のように聞こえますよね」

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巨大地震が1週間以内に発生する頻度は「巨大地震注意」で数百回に1回、「巨大地震警戒」で十数回に1回とされます。統計的に地震の発生する可能性が普段より高まっていることが言えたとしても、確率としては低いことを併せて伝える必要があると、関西大学の林教授は指摘します。

<関西大学社会安全学部 林能成教授>
「地震はいつ起きるかわからないが、普段よりは少し起きやすくなっている情報だと、相当丁寧に説明しないと、どう聞いても地震予知と聞こえてしまう」

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南海トラフ地震臨時情報は、まだ一度も発表されたことがありません。

<防災担当 岩崎大輔記者>
「臨時情報の認知度が相変わらず低いという現状をどう捉えてらっしゃるのか」

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<南海トラフ地震評価検討会 平田直会長>
「認知度が低いことも問題ですが、一番重要なことは、大きな地震が起きる前に情報が出て、それで備えるのではなくて、普段からいつも備えていなければいけないことが最も重要で、1回起きるとそれでひどいことが起きたんだから後片付けをしなければいけないと思ってはいけなくて、次々と、もっとひどいことが起きることが、この臨時情報の難しいところであり、重要なことだと思っている」

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臨時情報の第1号が発表された時、私たちは普段からの備えができているのでしょうか。そして、臨時情報の真意を理解して適切な行動をとれるのでしょうか。