三井住友DSアセットマネジメントが設定・運用する「三井住友DS日本バリュー株ファンド」は23年以上の運用実績を持つ代表的な日本株アクティブファンドの1つだが、近年は特にパフォーマンスが好調だ。8月末現在で過去1年半のトータルリターンは11.34%と、同期間のTOPIX(配当込み)の3.15%を大幅に上回っている。同ファンドの運用を担当する運用部バリュー+αグループ シニアファンドマネージャーの部奈和洋氏は、「常に企業の『変化』に注目して企業調査や分析を行ってきたが、当ファンドの20年以上の歴史の中で、現在ほど企業の変化を強く感じることはなかった」と話す。つまり、同ファンドのパフォーマンス向上の可能性を今ひしひしと感じているという。同ファンドの運用と市場環境について、部奈氏と投信営業部統括部長の田村一誠氏、運用部プロダクトスペシャリストの小金沢延行氏に聞いた。
 
 ――今年に入って、米国株が低迷していることと比較して日本株の底堅さが指摘されるようになっています。長らく日本株は魅力がないといわれてきましたが、何か変化が起きているのでしょうか?

小金沢 過去1年間のパフォーマンスを「TOPIX(東証株価指数)」と米国「S&P500」で比較すると、マイナスに落ち込んだ「S&P500」に対し、「TOPIX」はプラス圏を維持していて国内株のパフォーマンスでの優位性は明らかです。もっとも、「S&P500」は、円安・ドル高の為替差益が得られているため、為替ヘッジなしのファンドは表面上2ケタ成長している状況ですが、株価の水準では日米のパフォーマンスは日本優位に逆転しています。

 これは、国内株の売買動向にも表れていて、2022年4月以降、外国人投資家が日本株の先物を約1兆円買い越しています。昨年は1年間で約1.5兆円の売り越しでしたから、明らかな変化です。しかし、現物株式は買い越しにはなっていないため、本腰を入れた買いとはいえません。

 私は、外国人投資家の日本株への評価は、3つの段階を踏んで進むとみています。現在はまだ第1段階で、内外の金利、そして、景気の状況といったマクロの違いに着目した相対的な魅力を評価している段階にあります。今後、好調な企業業績に対する評価が進む第2段階に移っていくと見ており、そうなると、その好業績の背景に関心が高まり、日本企業の変化が注目され評価される第3段階に移行し、本腰を入れた買いに繋がっていきます。これはベストシナリオではありますが、このように中期的に日本株が再評価される可能性もあると見ています。

 ――海外からの評価を変えるほどの変化が日本企業にはあるのでしょうか?

部奈 日本企業の変化は大きいです。日本企業の調査を長年してきて、ここ数年で、その変化は大きくなっていると実感しています。特に、株主に対する意識が「欧米化」してきています。この変化は、日本独自の「株式持合い」が解消される方向に動いたことで企業買収への防衛を真剣に考える必要がでてきたこと、また、もの言う株主といわれるアクティビストの活動が活発化し、生保や運用会社などの機関投資家も株主還元や資本の効率化について厳しくチェックするようになってきたことなど、構造的といえる変化があります。たとえば、私どものような投資家に、伝統的な大企業のトップが積極的に面談してくださるようになってきました。IR(投資家向け広報)担当者に任せていたような面談にも、わざわざ社長が出席して私どもに意見を求めるというようなこともあります。

 データで示せる変化は、国内上場企業の約75%がROE(自己資本利益率)の目標を設定し、配当や自社株買いといった株主還元額を過去最高の水準にまで増加させるなど、ROE引き上げの動きを加速しています。ROEと株価のバリュエーション(企業価値や株価の評価)は、非常に強い相関関係があります。ROEが上昇すると、バリュエーションが上がる、すなわち、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が高まって株価の上昇につながります。これまで、日本企業は効率性が低いといわれ、その象徴としてROEの低さが課題とされ、日本株のバリュエーションは低いままに放置されてきました。その日本企業のROEが向上しつつあることは、日本株の株価の水準訂正が始まる兆しといえるのではないでしょうか。

 ――ファンドは、設定来ずっとTOPIX(配当込み)を上回るパフォーマンスを上げています。バリュー株への投資で継続的に高いパフォーマンスがあげられる理由は?

部奈 運用チームとして一貫して企業の「変化」に注目してきました。「変化」を見出すために、企業との直接面談を重視し、継続的に企業面談を繰り返すことによって、企業の変化を把握するように努めています。もちろん、企業の変化を見逃さず、より広く投資機会を確保するために、AI(人工知能)を使った企業情報分析など最新のテクノロジーも積極的に導入していますが、企業との深いリレーションが企業分析には不可欠だと思います。PERやPBRで企業をランキングすることは誰にでもできますが、企業の「変化」の大きさをスコア化できるほどに「変化」の情報を持っているところはほとんどないと思います。長年にわたって一貫した運用方針で運用を継続している当ファンドの強みです。

小金沢 バリュー株投資は、グロース株投資と比較されますが、グロース株投資は高成長が織り込まれた株価水準にあるため、いつ成長フェーズが終わりを迎えるかを意識しながら投資する必要があります。30%成長している企業が、20%成長に成長率を落とすと株価が急落するのです。2ケタ成長しているから立派な成績だとは評価されません。もちろん、事前予想よりも高い成長を実現することもあり、それがグロース株投資のだいご味なのですが、「成長鈍化」が大敵であることからは逃れられません。

 バリュー株投資は、部奈のチームが取り組んでいるような、「変化」を先取りする投資です。そのため、企業の「変化」に市場が気づくまで待っている忍耐が必要な投資でもあります。企業の変化は決算等の数字に表れてきますから、決算発表が楽しみな投資ともいえます。ファンドの形でいくつもの銘柄に投資し、市場の評価が得られた投資から収益を回収していくというサステナブルな投資といえるでしょう。企業の変化を的確に把握できる体制ができていれば、安定的な収益を継続していくことも可能です。

 ――今後を展望すると「三井住友DS日本バリュー株ファンド」のような日本株ファンドに期待が持てるということでしょうか?

田村 投信を取り扱う販売会社の間で、日本株ファンドのラインナップを拡充する動きが出ています。投信市場は、昨年の年末までは米国株式が圧倒的な主役でした。米国株式に投資すれば、比較的短期間で収益が得られるという環境でした。ところが、今年の1月頃から米国株式の先行きが怪しくなり、米国株式一辺倒では難しいのではないかという空気になってきました。大手証券をはじめとした証券会社では新しく日本株ファンドを採用する動きが出始めています。

 日本株のパフォーマンスは、日経平均株価が1989年に付けた史上最高値3万8915円に対して未だに2万8000円も回復できないダメな市場というイメージが強いのですが、日経平均株価もTOPIXも配当込み指数で評価すると史上最高値と変わらない水準にまで上昇しているのです。決して、日本株はダメで魅力のない資産クラスではありません。

 もちろん米国株など海外株に成長期待があることは否定できません。ポートフォリオとして保有資産を見直したときに、あまりにも米国株や日本を除く先進国株に資産が偏っていると感じられる場合は、ポートフォリオの分散を図るうえで、日本株を加えることも1つの方法です。20年以上にわたって市場の様々な変化を乗り越えて安定的な収益を重ねてきた「三井住友DS日本バリュー株ファンド」を、これからの投資の選択肢の1つとしてご検討ください。(グラフは、「三井住友DS日本バリュー株ファンド」設定来のトータルリターンの推移)(情報提供:モーニングスター社)