米国をはじめ世界の株式市場が景気後退懸念によって調整色を強める中、史上最高値を更新するインド株式の強さが注目されている。インドは人口が約14億人と中国に匹敵する大きな人口を抱え、国内に大きな消費市場が育ち、世界の経済減速とは一線を画した成長が期待できる。三井住友DSアセットマネジメントが運用する「高成長インド・中型株式ファンド」は過去1年のトータルリターンが15.56%と、「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」の5.11%を大きく上回っている(円ベース、2022年10月末現在)。インド経済の現状や同ファンドの運用について、三井住友DSアセットマネジメント運用部プロダクトスペシャリストの三牧洋介氏(写真:左)と投信営業部シニアマネージャーの今田有一氏(写真:右)に聞いた。
 
 ――なぜ今、インドなのですか?

三牧 インフレに伴う急速な利上げによって米国景気の先行きが不透明となり、ウクライナでの紛争も長引くなど、世界の株式市場が不安定になる中で、インドの持っている成長ポテンシャルの高さに改めて注目が集まっているのではないでしょうか。インドのGDPは、現在は国別ランキングで世界5位ですが、2030年までに日本を抜くといわれ、2050年にはアメリカをも抜くと予想されています。この長期にわたるインドの経済成長が、投資をする上での大きな安心材料になります。

 インドは人口が約14億人で、所得の向上とともに豊かな生活を求めていますので、内需主導で成長ができます。世界の景気とは一線を画することができるのです。この成長を支えているのが、政治が安定していることによる政策面でのサポート、そして、海外でも成長が可能な優れた企業群です。

 足下ではコロナ禍で落ち込んだ経済を給付金などの政策によって立て直し、インド経済はコロナ前の水準に戻っています。世界的に景気の先行きが不透明な中で、内需主導で景気が持ち直しているインド経済の堅調さが際立って見えます。

 ――インドの株式市場は代表的な株価指数「S&P/BSE SENSEXインド指数」が11月に史上最高値を更新するなど堅調です。インド株式市場の特徴は?

三牧 インドはイギリスの資本主義をベースに国づくりをしてきましたので、古くから株式市場が発展しています。現在、インド各地の株式市場には5000社を超える上場企業がありますが、その中で流動性も高く財務内容のしっかりしている約500社が、外国人投資家も参加する主要な取引対象になっています。

 インドの市場の特徴は、内需関連に加えて、ITサービスや医薬品など海外で稼ぐことができるグローバル企業まで、幅広い業種にバランスよく企業が散らばっていることです。新興国の株式市場には銀行が時価総額の多くを占める市場や、韓国や台湾のように内需関連企業が薄い市場などもありますが、インドの株式市場は多様な選択肢があり、市場環境の変化を捉えたフレキシブルな運用ができる市場といえます。

 また、新興国市場は外国人投資家に左右されやすい傾向がありますが、近年、インドでは現地の個人投資家が積極的に株式市場に参加しています。特に、投信の積立を始める個人投資家が多く、2022年9月末の投信積立口座数は約5800万口座となり、増加が続いています。インドの人口が14億人で、生活にゆとりを感じ、さらに豊かになりたいという層が増えていますので、今後ますます、投信を通じた個人の投資は活発化すると考えられます。現在、株式売買に占める外国人投資家の比率は50〜70%程度に低下しています。

 ――インド企業の業績は?

三牧 インドの実質GDP成長率は2021年が8.68%でしたが、今年も6.84%が見込まれています。企業業績に関しては、たとえば、銀行の貸し出しは2ケタで伸び、個人向けのローンは年率15%程度で15年以上伸び続けています。また、自動車の販売台数は年間400万台に迫ってきましたが、同じ人口の中国の年間販売台数は2000万台です。まだまだ大きな成長期待があります。

 また、インフラ整備には国家的なプロジェクトが多く、道路、鉄道、港湾、発電所などの建設計画が目白押しです。さらに、発電に関しては、近年の環境問題の高まりから、インド国内においても風力発電や太陽光発電の巨大発電所の建設が計画され、関連企業が成長しています。そして、白物家電メーカーにも国内の有力企業が育っています。インドでは現地企業のブランド認知度も高く、今後の成長が期待されています。

 ――「高成長インド・中型株式ファンド」は、10年の年率リターンが17.22%とインド株式に投資するファンドの中でトップクラスの運用成績をあげています。なぜ、中型株式に投資するファンドを設定したのですか?

三牧 インドが内需主導で成長していく中で、最も恩恵を受けるのが中型企業です。一般的に大型企業は成熟化して成長が鈍化していく傾向にありますが、中型企業には国内経済の成長とともに大きく成長する期待が持てる企業が多く存在します。

 もちろん、中型企業の中には成長の限界を迎えた企業や成長の遅い企業もあります。その見極めは難しい部分があります。その点、当ファンドの運用を実質的に行うコタック・マヒンドラ・アセット・マネジメントは、インドを代表する総合金融グループの1つであるコタック・マヒンドラ・グループの運用会社で、投信ビジネスには1989年から進出しています。当ファンドの設定は2011年8月ですが、コタック・マヒンドラ・グループの現地に根差した調査で長期にわたる良好な運用成績を残してきました。

 また、コタック・マヒンドラ・グループは海外進出もする大手の金融グループですので、グローバルな視点も運用に取り入れています。近年はESG(環境・社会・ガバナンス)投資が大きな潮流になっていますが、当ファンドにおいてもサステナブル投資の視点を運用プロセスに組み入れています。インドでは社会的に環境保全の意識が高まりつつあり、サステナブル投資の観点がパフォーマンスにも良い影響を与えています。

 ――インド株ファンドに対する市場の評価に変化は?

今田 インド株ファンドに関心を持つ販売会社は増えています。世界中の投資家が堅調なインド株式市場に関心を高めている中、国内の投資家の間でも急速に関心が高まってきたことが背景です。ファンドの購入注文は、従来は特定の販売会社に集中していましたが、現在はネット証券をはじめ多くの販売会社に広がりが出てきました。この傾向が今後、大きな流れになる可能性があると考えています。

 前回、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)ブームが起きた2000年代前半は、ちょうど米国のITバブルが崩壊した直後のことでした。今回、コロナ・ショック後に起きたデジタルシフトで米国のIT大手を中心としたハイテク株式の大きな上昇が一巡した後で、インドに脚光が当たっているのは、かつてのBRICsブームを思い起こさせます。

 たとえば、ITバブル崩壊後の2001年1月末から2022年10月まで、世界各国の株価がどの程度上昇したのかを調べると、日本株式が2倍強に対し、中国株式は3倍強、米国株式は5.5倍という水準になっています。米国株式の強さが際立つ結果になっているのですが、この間、インド大型株は13倍になっています。そして、インド中型株は約25倍です。振り返ってみると、インド株式を選んで保有し続けていれば、一番良い結果を得られたということになります。これほど大きな変化をしたインドですが、まだまだ若い国ですから、今後の成長に一層期待が持てると考えています。

三牧 もともとインド経済が次の世界経済のけん引役として期待できることは多くの人々がわかっていました。中国と並ぶ14億人の人口で、若い労働力が多く、英語圏でもあり、ハイテク産業も育っている国というポテンシャルの高さは以前から注目されていたのです。その期待が、今、現実のものになってきたと捉えられているのだと思います。

 インドが中国と比較して成長のスピードが上がってこなかったのは、インフラが整っていない、製造業が弱い、政治が安定していないなど弱点があったためです。現モディ政権が2014年に誕生し、その後、継続して政権を担うという政治の安定の中で、かつて指摘されてきた弱点を一つひとつ克服してきました。そこへ、米中貿易摩擦の激化によって世界のサプライチェーンが中国から東南アジアやインドへと分散化が図られるようになってきたこともインドの追い風になっています。新たな成長ステージを迎えたインドに注目していただきたいと思います。