ランサーズ

「クラウドソーシング」という聞き慣れない言葉を、最近ちらほらと見かけるようになった。クラウドは「群衆」、ソーシングは「外注」の意味。簡単に言えば、インターネットを活用して企業からの仕事を不特定多数の個人に仲介するサービスのことである。今年1月にはあのヤフーが参入したことで、はからずも有望市場であることを証明した形になったが、実は、この分野のパイオニアであり、ぶっちぎりの首位を走っているのはランサーズという会社である。2008年に秋好陽介社長が弱冠27歳で立ち上げた新進ベンチャーだ。現在、会員数は12万5000人、企業からの依頼の数は11万7000件(2013年3月現在)と他社を圧倒している。

信頼関係をどう担保するか

とはいえ「ネットを使った職業紹介サイト」なら、これまでもあったはず。どこが違うのか。

「発注から仕事の進行、納品、支払いまで、一貫して当社のサイト内で管理・完結することができるというのが最大の特徴です」(秋好社長)

従来型のマッチングサイトの多くは、実際には掲示板的な機能しかなく、とっかかりはネットでも、その後はリアルに会って商談を進めるスタイルだった。ところが、ランサーズのビジネスモデルでは、ネット上ですべての取引が行われるので、スピーディーで利便性が高い。

秋好社長がこのビジネスモデルを考えついたのは、大学卒業後、インターネット関連サービス大手のニフティに入社して3年目、ウェブディレクターとして制作の仕事を外注する際、法人相手の交渉において時間とコストが想像以上にかかっている現実に直面した時だった。つてを頼って個人の技術者に発注しようと稟議書を上げても、信頼度不足を理由に通らない。企業と個人をつなぐ仕組みは日本にはなかったのだ。

「それなら自分でその仕組みをつくってしまおうと独立したわけです」と秋好社長。

実は秋好社長、大学時代には自らビジネスを起こし、サイト構築やSEO対策のコンサルティングで年商1000万円超を売り上げるまでに成長させた実績がある。「中学生の頃から起業にあこがれ、会社に勤め続けるよりはチャレンジしたいと思っていた」(秋好社長)というだけに、ベンチャー精神旺盛。年度末をもって会社を辞め、すぐに行動をおこして起業した。

当初は企業や商品のロゴデザインの制作だけに絞って細々とスタートした。成功事例を積み上げることがまずは大事だと考えたのである。ビジネスコンセプトは「場所と時間にとらわれない新しい働き方の創出」。この目標を実現するための最大のポイントは、取引における発注側と受注側の信頼関係をどう担保するかにあると秋好社長はみていた。匿名でのやりとりが想定されるだけにここをクリアしない限り、ビジネスとしての成功は見込めない……。

定量化して見える化する

そのためにはどうすればよいのか。まず選択したのは「コンペ方式」というスタイルだった。企業がランサーズのサイト上で仕事を発注すると、複数の受注希望者が企業の意向に沿った成果物を提案する。発注者はそのなかから選択したものを採用すればよい。こうすれば、当然のことながら「まともな仕事をしてくれるのか」「本当に納品されるのか」などといった発注者側の不安は解消され、その分、高かった敷居がぐんと下がるというわけだ。

また、ネット取引の場合、決済面での不安も大きなネックである。ここを解決するために、発注者から代金を一時的にランサーズが預かり、納品を確認した時点で支払ういわゆる「エスクローサービス」を採用した。具体的には、発注時に企業のクレジットカードのショッピング枠を仮押さえして、取引が終了した時点で受注者にその枠から報酬が支払われる仕組み。これだと、金銭トラブルのリスクは最小化され、お互いに安心して仕事に取り組める。

このほかにも、信頼感を醸成するためのさまざまな仕掛けが施された。たとえば、免許証などで確認を行う「本人確認制度」、パソコンの状態やメール確認の頻度など働き方をチェックしてプロフィール欄に公開する「ランサーズチェック」、ヤフーオークションのように発注者と受注者がお互いに評価をし合う「仕事評価システム」などである。チェックの結果が公表されれば、素行の悪いユーザーはおのずと排除される。

それから、最近スタートした施策としては、会員を能力によってトップ、エキスパート、シニア、ビギナーなど5段階にヒエラルキー化し、上位2段階の人には電話面談を行う評価システムや、外部のレーティングテストを活用した各分野のスキルをはかる試験の実施などがある。これらによって発注側は、レーティングやスキルレベルを見ながら受注者をある程度選別することができる。

「定量化できるものは出来る限り見える化することが、お互いの敷居を低くするポイント」と秋好社長は強調する。

年収500万円超を1万人に

トラブルへの備えも万全だ。たとえば、どちらかの連絡がとれなくなった場合、「連絡催促機能」を使って連絡を促すことができる。そこに示された期限内に連絡がとれなければ一定のペナルティーが与えられる。また、悪い素行の続くユーザーに対しては警告や退会勧告が発せられる。

「トラブルには精鋭のサポートチームが対応しますが、出来る限り人を介さずにトラブルを防止できるよう、われわれのマーケットプレース自体の質を高めていくことが重要です。“リアルでの取引よりもランサーズの方が便利だし、トラブルも少ない”という状態をつくり出しさえすれば、自然とユーザーの支持は集まってくると考えています」

 現在は、コンペ型の他にも、1対1で交渉しながら仕事を進めていく「プロジェクト型」、比較的単純なアルバイト的作業が中心の「タスク型」が加わり、業種もイラスト、ホームページ制作、システム開発など70種類にまで広がってきた。

秋好社長はいう。

「将来的には、文具界のアスクルさんのようにあらゆる企業に使っていただけるビジネスプラットホームになりたいですね。また、現在、当サイトを使って年収300万円以上を稼ぎ出すユーザーは100人以上いますが、2016年までには500万円以上を1万人にしたい。私も学生時代、ネット上ではじめて仕事をやり遂げた時にはとても感動しました。ランサーズを利用して、時間と場所にとらわれず自由に働ける感動を、多くの人に味わってもらいたいと思っています」


会社概要
●設 立 2008年4月
●所在地 神奈川県鎌倉市小町2-7-32
●社員数 30名
●URL http://www.lancers.jp/