テーブル・フォー・ツー・インターナショナル

「ランチを食べる」だけで貧困国の子どもに給食支援

いま、世界の人口は約70億人。このうち10億人が貧困によって栄養不良や飢餓にあえいでいる。その一方で、ほぼ同じ数の人が過食や飽食による肥満や生活習慣病に悩まされているという皮肉な現象が起きている。

「つまり、食の不均衡ができています。この地球規模の課題を解決するには、開発途上国、先進国の両側からアプローチして、食べ物が余っているところから足りない地域に回すという食の再循環が必要です」

こう話すのは、NPO法人テーブル・フォー・ツー・インターナショナル(TFT)の小暮真久代表。日本発の取り組みとして2007年に立ち上げ、まず、現在の活動の中心である「社員食堂プログラム」を手がけた。

具体的には、企業の社員食堂で、通常の定食よりカロリーと栄養バランスに気を配ったヘルシーメニューを提供する。料金には、20円の寄付金が上乗せされており、1食ごとに、ウガンダ、エチオピアをはじめとするアフリカ数カ国に学校給食として寄付されるという仕組みだ。

小暮代表は「イメージとしては、日本とアフリカで「2人の食卓」を囲むことで、飢餓と肥満という双方の問題を同時に解消するわけです。これまで、大手企業や官庁、大学など合わせて550を超える企業・団体の食堂に普及し、延べ1950万食を送ることができました」と説明する。

NPOならではの“三方良し”

とはいえ6年余りで、これだけの実績を残すNPOは決して多くない。成功の背景には、TFTのしっかりとしたビジョンもさることながら、体制づくりをはじめ、運営やサポーターとの連携などを可能にしたマネジメント力があったはずだ。

その意味で、小暮代表のキャリアは興味深い。早稲田大学卒業後、オーストラリアのスインバン工科大で人工心臓の研究に携わった。同大学の修士課程を修了後、マッキンゼー・アンド・カンパニー東京支社に入社。ヘルスケア、小売り・流通業界などの組織改革、営業戦略立案に関わる。

「学生時代から取り組んでいた研究テーマを通して、人の命を救うことの大事さを肌感覚で知りました。その後、コンサルティングファームで仕事をしていたのですが、ビジネスの経験やスキルは、お金を稼ぐだけでなく、困っている人たちを助けることにも生かせると気づいたのです」

この小暮代表の言葉からもわかるように、めざす形態は、まさに政府でも企業でもない存在、すなわち非営利組織NPOの役割にほかならない。ただ、企業とNPOには共通性もある。

それは、事業領域の設定にはじまり、研究開発、マーケティング、そしてロジスティクスというプロセスの構築だ。その際、コンサルタントとして培ったノウハウは財産になった。

「あえて企業経営との違いをあげれば、目的がどこにあるかということ。もちろん、企業も?三方良し?という考え方で、売り手と買い手だけでなく、世間も視野に入れていますが、基本は利益の追求です。しかし、NPOなら社会を第一に掲げられます」

つまり小暮代表は、社会貢献をビジネスとして行い、一緒に働く仲間や仕事上のパートナー、資金を寄付してくれる支援者、商品・サービスを提供する相手と地域にウイン・ウインの関係を築こうというのだ。

だが、すぐにTFTのシステムが理解されたわけではない。むしろ、積極的に社員食堂にヘルシーメニューを加えようとする企業はまれで、最初の1年は、文字どおり鳴かず飛ばず。

理由は継続性に対する疑問だったという。これまで、多くのNPOが、高い理想でスタートするものの、人材不足や資金難で長続きしないことへの企業側からの懸念だ。それにどう答え、信用を勝ち取っていけるかが最初の関門だったといっていい。

当初、ターゲットにしたのは各分野のトップ企業。社員数も多く、効率的だと考えたのだ。交渉先は、CSR(企業の社会的責任)や総務の部門である。というのは、TFTのコンセプトを理解してもらえ、社員食堂のメニューを決められるセクションだからだ。提案と同時に、社内アンケートやヒアリングも行った。

小暮代表は「突破口は、大手商社の導入決定でした。当時、ビジネスマンのメタボの問題がマスコミで取り上げられたのも追い風になったかもしれません。けれども、会社でランチを食べると、人助けができるという実感が支持されたのだと思います」と振り返る。

その後も、家電・食品メーカーや金融機関、ゼネコンなど上場企業がこぞって参加。100社単位で増えて行った。さらに、省庁や自治体の食堂、大学の学食も加わった。

少数精鋭での効率的運営

もちろん、NPOといえども、利益を出さなければ、活動を維持していくことはできない。TFTでは、寄付金のうち20%、つまり20円のなかから4円を事業運営のための経費としている。それでも、単年度黒字を達成するには、数年かかったという。

現在の常勤は小暮代表を含めても3名、このほかに非常勤スタッフがおり、この6名が有給ということになる。このほかに理事と創設者会議のメンバーが複数いるが、こうした社会貢献意欲の高い少数精鋭での組織づくりが成功の要因と考えていい。

TFTの認知度が上がるにつれ、企業だけでなく、個人でもこの運動に参加したいという問い合わせも増えた。それへの一つの回答が自動販売機での売り上げの一部を寄付金に当てる方法だ。

「キリンビバレッジと共同で進めているもので、自販機にTFTのオリジナルデザインが施されています。これで低糖分、低カロリーの飲料を購入すると、1円が、アフリカの子どもたちの給食に役立てられます」(小暮代表)

これはキリンにしてみれば、本業で社会貢献に取り組んでいるわけで?顔の見えるCSR?ということができる。消費者にとってみれば、そんな企業こそ積極的に応援したくなるはずだ。これも、小暮代表のいう互恵の関係にほかならない。

自身のライフワークの今後について、小暮代表は「さらに一般の方たちに、知ってもらい、かつ参加してもらうことです。加えて、団体名にインターナショナルを明記していますから、支援の枠を、より多くの国々に広げたい。それには、いま以上に組織や体制を充実させることも必要でしょう」と語る。

目標としては、向こう5年間で事業規模を10倍に拡大していく。これまでの活動を通じて小暮代表は確かな?うねり?を感じているという。TFTの歩みを山登りにたとえれば、まだ2合目ぐらいだが、着実に前進している。

(ジャーナリスト・岡村繁雄)

法人概要
●設 立 2007年10月
●事業収入 1億5000万円(2012年)
●スタッフ 6名
●URL http://www.tablefor2.org
●e-mail   info@tablefor2.org