◎プロフィール
ほった・しげる●10年間の酒屋での御用聞き修業を経て、27歳で「宅配専門店ホッタ」を開業。1999年、お酒とお米の宅配専門店「ファミリー」のフランチャイズ展開を目的に、ファミリーネットワークシステムズを設立。経営哲学は「人のお役に立つ事業をする」「自分の強みを生かす」「決してあきらめない」「プラス発想でアレンジ思考」など。

味を極めた食品宅配サービスで 一次産業と地域社会に貢献

わずか3坪の自宅ガレージで28年前にはじめた食品宅配ビジネス。
堀田茂社長が創業したファミリーネットワークシステムズは、一般家庭向け一筋で累計100万食を販売するまでになった。高齢者世帯や共働き世帯の増加でニーズは年を追うごとに高まっており、さらなる飛躍の時期を迎えている。

 日経DUALが7月に発表した「2016食材宅配ランキング宅食サービス編」。調理済みのおかずや総菜を自宅に配達する食品宅配サービスについて日経DUAL編集部の独自指標にもとづいて上位5社を選定したランキングだ。大手食品メーカーや生協などがランクインするなか堂々の2位に選ばれたのが、累計販売実績100万食を突破したファミリーネットワークシステムズの「わんまいる」である。惜しくもトップには届かなかったが、審査項目の「商品数・品質」は対象企業のなかで第1位。品数が豊富で新鮮な食材を使ったおいしさが高く評価されたのである。堀田茂社長はいう。
 「一番注文が多いのは、主菜1品と副菜2品の『旬の手作りおかずセット』(5食分の定期購入で3480円)です。献立メニューは当社専属の管理栄養士が栄養バランスを考えてつくっており、セット平均で塩分3・5グラム未満、カロリー400キロカロリー未満ととてもヘルシーです」
 グルメカタログ859号で9月5日から9月10日提供メニューとして掲載されているセットメニューをみてみよう。「北海道知床産秋鮭の西京焼きセット」では、主菜の西京焼きと「ほうれん草とエリンギのお浸し」「高野豆腐の炊き合わせ」の組み合わせで、それぞれ重量とカロリー、塩分と糖質が明記されている。社長は、一品ずつの冷凍食品を販売する同社のスタイルと宅配弁当との違いについてこう強調する。
 「おかずは調理後に急速冷凍しているため、解凍してもおいしさを損なうことはありません。保存料を入れざるを得ない宅配弁当とは味の面で雲泥の差です。また一品一品湯せんしてお皿に取り出さなければならないという手間はありますが、おかずごとに最適な温度を調節できます。プラスチック製容器の弁当は電子レンジに入れると、常温のままがよいおかずも熱くなってしまいますからね」

野菜は国産100%を実現
 介護保険サービス利用者や買い物弱者、一般家庭など幅広い層が「わんまいる」を利用しているが、生活支援が必要な高齢者向けなどの用途でとりわけ引き合いが急増しているという。特に前述のセットは前年比300%の勢いで売り上げが伸長。人気の秘密は、旬の食材を新鮮なうちに調理して提供する徹底した「食」に対するこだわりにある。
 「使用する野菜は大阪泉佐野市の『4Hクラブ』、京都大原三千院の藤原農園などから購入し国産100%を実現しています。朝取りの野菜をすぐに工場に配送して調理しているので、中国などから輸入した野菜を使っている宅配弁当とは味のレベルがまったく違います。
 魚介類については全国各地の漁協などと提携し、大阪中央卸売場や兵庫県浜坂漁港、静岡県焼津漁港などから新鮮な食材を調達していて、競り落ちした魚を安く手に入れることが可能です。たとえばうろこに傷が付いているサンマなどはかなり割安になりますが、そうした商品をまとめて購入し総菜の原料にできることが当社の大きな強みになっています」
 調理を委託する工場も超一流だ。有名ホテルや料亭、百貨店などに納めている総菜・仕出し専門工場を厳選しているのである。
 「大阪、京都、神戸などの地域で味に定評のある企業に手作りでの製造を委託しています。いずれもすべて私が試食をして、納得いく商品しか取り扱いません。試食の様子は定期的にブログに掲載していますが、少しでもおかしなところがあればすぐに手直しをさせます」

ピンチをチャンスに変える
 社長が起業したのは1988年9月。大阪市西淀川区で9坪の建売住宅を購入し、そのうちガレージ部分3坪を改装した宅配酒店がはじまりだった。
 「当時はまだ珍しかった地酒などを積極的に取り扱って売り上げを伸ばし、3坪で年商1億8000万円稼ぐ酒屋として業界内で話題になりました。全国から見学にきた酒屋さんや酒問屋さんと一緒に共同仕入れグループを設立し、現在の『わんまいる』ネットワークの原型がつくられました」
 そして1999年、将来性を見込んだ大手酒メーカーからの後押しもあり、日本初の宅配専門店のフランチャイズ本部としてファミリーネットワークシステムズを設立。関西、四国、中京、九州、関東甲信越の計13道府県の酒問屋と業務提携し、宅配専門店「ファミリー」の業務を行うエリアパートナーとして認定した。酒や米、飲料水、日用雑貨、全国各地の名産品などを掲載したカタログを週に一度発行し、それをエリアパートナーのスタッフが自宅まで持参し御用聞きで注文をとる――という宅配サービスの仕組みが確立したのである。
 こうしてスタートした「ファミリー」事業だったが、わずか数年で軌道修正を余儀なくされる。2003年に酒小売免許が自由化され、酒類の売り上げが激減したのである。経営は大打撃を受けたが、堀田社長はユーザーからの声に耳を傾けることで打開策を見いだした。
 「その後もご利用いただけているお客さまからの意見を聞くと、今後の戦略が頭に浮かんできました。残ってくれたお客さまは足腰が悪くなって買い物に不便を感じている方や、お金に余裕があって『少々高くてもおいしいものが食べたい』と考えているアクティブシニアの人たち。またスーパーやコンビニで販売されていないような商品について『自宅にいながら地域の名産品を食べられるのはありがたい』という声が多く寄せられていることもわかりました。これらの意見から、これからは高齢者を対象にしたこだわりの食品宅配に注力すべきだと考えたのです」
 この方針を実現するため、ネットワークの再構築に着手。全国13道府県で100を超えるエリアパートナーがFC加盟店として配達業務を行っていたが、各エリアパートナーの在庫負担をなくし、本部で一括管理する手法に変更したのである。システム開発はコンビニの受発注システムの開発で有名だった伊藤忠商事開発戦略室に自ら電話し依頼した。こうして2005年11月、「商品1個から参上する」という意味を込めた「わんまいる」としてサービスを刷新したのである。

介護保険適用でヘルパー利用急増
 「わんまいる」がスタートして約10年。次のステップに向けたプロジェクトも進行中だ。まずは販売ネットワークの再構築と、さらなる食の安全安心を追求するための生産体制強化への取り組みである。
 「今年の4月から、湯せん解凍してお皿に盛り付ける支援が生活援助として介護保険に適用されるようになり、ヘルパーさんの利用が急増しています。そのため厚生労働省が推進する地域包括ケアシステムや総合事業への取り組みを強化するため、これまでのFC加盟契約とは異なった『わんまいる地域パートナー』の募集をはじめました。また生産面では食の安全安心を第一に考えた独自ガイドラインを策定し、委託製造業者や物流センターへの監査指導にも取り組んでいるところです」
 ウェブサイトやブランディングを大幅に刷新する作業も進めている。
「これまではFC加盟店主体で御用聞き宅配サービスを展開してきたため、インターネットやスマホからの受注対応が遅れていましたが、一昨年より強化し、注文が急増したため、来年の1月をめどにブランディングを含めた全面リニューアルを予定しています」
 株式公開を含めたさらなる成長を見込み、12月には中心地の梅田に本社を移転する予定だ。ITを活用し、介護事業者や調剤薬局、中小企業との連携を通じた新たなネットワーク「モノとヒトとヒトをつなげる『ファミリーネットワークシステムズ』」(堀田社長)作りを目指すという。

会社概要 株式会社ファミリーネットワークシステムズ
●設 立 1999年6月
●所在地 大阪府大阪市西淀川区福町3-1-53
●宅配供給高 約20億円
●従業員 28人(パート含む)
●HP わんまいる 検索