さこん・よしのり
1982年福岡県生まれ。東京農工大学卒業後、人材派遣会社のインテリジェンスに就職。その後2009年に、アグリゲートを設立。青果販売のノウハウを積んだのち、13年に「旬八青果店」の1号店をオープン。

都市部で規格外の野菜を売る青果店を展開

 ぱっと見は、昔ながらの八百屋さん。でも、私たちが展開する「旬八青果店」は、それらと一線を画している。通常の八百屋さんが「小売り」だけに特化しているのに対し、私たちは生産から小売りまで一気通貫のビジネスを志向する。全国の生産者(農家)に協力を仰ぎ、自分たちが売りたいと思う野菜や果物をつくってもらう。それを産地直送で仕入れ、都内で販売しているのだ。ユニクロはSPA(製造小売業)の会社としてあまりにも有名だが、われわれの事業もまさにそれと一緒。SPAならぬ「SPF」を標榜している。SPAの「A」はアパレルのAだが、SPFの「F」は、フードのF。いわば「農業界のユニクロ」になることが私たちの目標だ。
 ちなみに協力してくれている全国の生産者とは、こちらからお願いして取引をはじめたケースが多い。だがこの数年で、雲仙市のように市長自らのトップ営業により、取引が始まる場合も出てきた。2年連続で「雲仙市フェア」を実施したのは、その要望に応えてのことだ。
 旬八青果店の店内に並べている商品の中には、いわゆる「規格外品」も少なくない。要は、見た目(形)が悪いために納品基準を満たさないものだ。しかし規格外の野菜がおいしくないかというと、そんなことはない。新鮮であれば、正規品と変わらずにおいしい。そんな規格外の青果物を手頃な値段で販売している点も、店の大きな特徴の一つだ。
 実は、旬八青果店の粗利率は50%にものぼる。異常なまでに高い数値と言えるが、規格外品を直接産地から仕入れたり、通常スーパーには置かれていないようなサイズの規格を大田市場(東京)で仕入れたり、あるいは物流を工夫することで実現させている。

ドミナント戦略で集中出店
 旬八青果店の1号店(現在は閉店)を中目黒駅前に出したのは、2013年10月。間もなくして繁盛店になったことに手応えを感じ、その後、多店舗化を進めていった。今日では9店舗を展開しており、いずれも直営店だ。ドミナント戦略のもと、東京・城南エリア(品川区、目黒区、渋谷区など)を中心とした狭い地域に絞って出店している。効率的な商品配送(物流)をするうえで、そのほうが何かと都合がよいからだ。
 店のトレードマークは、白地に「旬八」と記されたのれん。野菜の売場にシズル感を持たせるために、おしゃれにはし過ぎず、シンプルなものを採用している。
 一方で、昔ながらの八百屋さんを強く意識しているのが、来店客とのコミュニケーションである。仕入れから販売までを一貫して手がける当社の場合、それぞれの商品に秘められた〝ストーリー〟を語ることができる。どんな産地で採れた野菜か、どんな生産者がどうやって育てた果物か──それらの情報をうまく伝えることで、店や商品そのもののファンを増やしていけると思っている。
 とはいえ、店員から話しかけられることを苦手とする人もいる。それぞれの商品に「POP」を立てているのは、そうしたお客さんに少しでも商品のことを知ってもらいたいからだ。「静岡県産・芽キャベツ 1袋180円 シチュー、ポトフ、パスタなどに!」といった具合に、段ボールに油性ペンで文字を記したPOPだが、店長やスタッフの思いが込められている。

都市と地方をつなぐ架け橋に
 私がいまの事業をはじめたきっかけは、大学生のときに全国各地を旅したことにあった。当時、都市部で暮らしていた私は、自分のライフスタイルに合わせた形でコンビニやファストフードでの「不本意な食生活」を繰り返していた。一方で、旅先で出会った地方の農家さんは豊かな食生活を送ってはいるが、高齢化や低収入で先行きに不安を感じていた。地方は経済を活性化させ、都市で不本意な食生活を送っていた人が豊かな食生活を取り戻せるようなビジネスができないものか──。大学を卒業し、就職してからもこの思いは消えなかった。やがてアグリゲートを設立し、「食」と「農」に関する仕事をするようになった。
 いま現在、旬八青果店の事業のほか、「旬八キッチン」の名前でお弁当の販売をしたり、そば屋(「さ竹・新宿店」)の運営もおこなっている。また、青果店経営で培った農業・青果・食に関する知識を社会に還元したいと考えて「旬八大学」を開講するようにもなった。旬八大学はもともと社内の人材育成(店長研修)を目的としてスタートしたが、今ではこれから農業に関するビジネスをはじめようと考えている人たちにも門戸を広げている。現在、青果販売のスキルを身につけるための八百屋の店長講座、仕入れや流通をマスターするバイヤー講座を開講しているとともに、農業を通した地域活性化を目指す地域商社講座についても開講の準備を進めている。
 当社では「未来に、『おいしい』をつなぐ」というキャッチフレーズで、自分たちの存在意義を言い表している。その言葉どおり、多くの人が豊かな食生活を続けられるようにするためのさまざまな取り組みを積極的に進めていきたい。