「買う前に一度試しに使ってみたい」――。そんなニーズを満たす物の貸し借りサービス「アリススタイル」が今注目を集めている。運営するピーステックラボの村本理恵子社長に話を聞いた。

 アリススタイルは物の貸し借りを可能にするプラットフォームを個人や企業に提供するアプリサービスである。2016年にピーステックラボを設立した村本理恵子社長がサービスの特長について説明する。
 「一眼レフカメラなどのように高価な商品の購入を検討する際に、まずは試しに使ってみてから判断したいと思う人は多いと思います。試乗で実際に運転できる自動車のように、家電などの商品も『試してから買いたい』と考えている人たちのニーズに応えるのが、このアリススタイルです。レンタル期間は週単位で料金は貸主が決め、原則売り上げの15%を当社が手数料として得る仕組みです」
 商品カテゴリーはキッチン・ビューティー、AV・IT、フィットネス、ホーム、ホビー、ベビー・キッズの六つ。「男性より所有にこだわらない」(村本社長)女性の利用が多く、商品はヘアドライヤーや美顔器などのビューティー関連、炊飯器やトースター、ホームベーカリーなどのキッチン家電の割合が高い。アプリダウンロード数は18万を超え、1日当たり数百人がアクセスしているという。
 使い方は簡単だ。商品を借りたい人はアプリ上で配達希望日を選択し予約申請を行い、貸主がそれを承認すれば取引が成立。借り主はレンタル期間が終了したら商品を梱包(こんぽう)して送り返す。ヤマト運輸の匿名配送を利用しているので、お互いのプライバシーが漏れることなくアプリ上で貸し借りを完結することができる。商品の出品や発送作業を同社が代行する代行委託型(手数料は50%)の方法を選択できるのも便利だ。
 アリススタイルの特徴のひとつは、出品数の40%が企業からの出品が占めていること。実際に商品を試してもらう機会は、スーパーの店頭などで実施される試食などをのぞき、実はそれほど多くない。潜在顧客にアプローチする場として、アリススタイルのプラットフォームが企業にとって魅力的に映るのである。
 最近では新製品のサンプルを無料で貸し出し、使用した感想や課題点などについて市場調査を実施する場として使われるケースが目立っている。
 「先ごろ、パナソニックと連携し、発売前の新製品を1週間無料レンタルできるキャンペーンを実施しました。高級美容家電に分類されるヘアドライヤー『ナノケア』の新商品で、発売前の7月23日から9月30日までをレンタル期間に設定。レンタル完了後の商品評価に加え、利用者が自主的にインスタグラム等に情報をアップする効果も見込める新たなキャンペーンの手段となっています。想定を超える人気となっていて、今後も低コストでマーケティングに活用するプラットフォームとして企業からの引き合いは強くなっていくと考えています」(村本社長)
 一方個人の貸主にもメリットは大きい。めったに使わないのに場所をとっているものがどの家庭にもあるはずだが、高価な物を処分したり売却したりするにはそれなりの決心がいる。「取りあえず人に貸して少しでもマネタイズができれば」と考える人は少なくないだろう。貸主と借り主、個人や企業問わず大きな便益をもたらす力が、レンタル市場に秘められているのである。
 「これまでレンタルというと旅行にいく際のスーツケース、キャンプに出掛けるときのバーベキューセット、運動会におけるビデオカメラなど、1年に何度もないイベントに付随して借りることがほとんどでした。当社はこのサービスを通じ、レンタルが日常化する新しいカルチャーをつくっていきたいと考えています」
不動産や住宅で活発な協業
 村本社長の前職はエイベックス。ワンコインで映画やドラマが見放題の定額制動画配信サービス「dTV」事業をゼロから立ち上げた。同事業はクラウド上のデジタルコンテンツに自由にアクセスするサービスが一気に普及しはじめた時代の潮流にも乗り、最盛期の有料会員500万人、300億円規模のビジネスに成長する。村本社長はこの経験を通じ、コンテンツだけではなく、物も当然のようにシェアする時代がいずれはやってくると考えた。
 「私はモノに執着しないうえに面倒くさがりの性格です。できるだけ身軽に便利な生活を送りたいと思っているので、必要最低限のものしかないシェアハウスに住んでいるほどです。必要なものを必要な時にシェアできる機会がもっと増えれば、多くの人の利便性向上に役立つのではと考えたのが起業のきっかけになりました」
 上場企業での豊富な業務経験を生かし、積極的な協業を展開しているのも同社の特徴。レンタル期間中の事故などを補償するオリジナル保険を東京海上日動火災保険と共同開発し、サービス開始からレンタル品すべてに付帯している。また資本提携もしているアスクルとは物流面で協業。代行委託型で使用する専用の梱包箱「アリスボックス」を共同開発した。
 不動産会社との協業も進んでいる。8月から、東京建物のマンション「ブリリアイストタワー勝どき」「ブリリアイスト東雲(しののめ)キャナルコート」(いずれも東京都)で入居者向けのレンタルサービスを開始した。
 「このビジネスの大きな課題は、倉庫から商品を運ぶ時間と費用がかかってしまう点にあります。この配送コストの問題を解消するために、大規模マンションなどと一括して契約するスタイルが今後増えてくると思います。将来的には、マンションの住民同士でものの貸し借りができるようなサービスも検討していきたいと考えています」(村本社長)
 両マンションに居住するのは合計約1000世帯。住民はマンション内に設置された専用ロッカーでアリススタイルの商品を受け取ることができる。またマンションコミュニティーの催しなどを通じ商品を実際に使って試してもらうイベントも開催する計画だ。村本社長はアリススタイルのプラットフォームを用いた新サービスを次々と世に出していくという。
 「賃貸住宅の家賃にアリススタイルの利用料を組み込み、毎月定額で商品をレンタルできるサブスクリプションサービスや、旅行先で必要なものをすべてレンタルできるサービスを現在開発中です。またレンタルした商品を借り手が気に入った場合、そのまま購入できる仕組みも提供する予定です」
 個人間売買のアプリが爆発的に普及したように、貸し借りがより気軽に行える時代が到来するのもそう遠くないかもしれない。
COMPANY DATA
株式会社ピーステックラボ
設 立 2016年6月
所在地 東京都渋谷区渋谷2-21-1渋谷ヒカリエ8FMOV内
URL  https://www.peaceteclab.com/