フィットネスジムなど室内で運動をする施設は、ウイルス感染が拡大しやすい場所としてその多くが営業休止を余儀なくされている。そうしたなかで新たな需要取り込みに成功しているのが、SOELUだ。白土聡志COOとともに共同代表を務める蒋詩豪CEOは、ヨガやフィットネスレッスンをオンライン上でライブ配信する自社サービスの特徴について次のように語る。
 「当社は、講師と生徒が画面越しに互いの様子を確認しながらリアルタイムかつインタラクティブ(双方向性)にコミュニケーションできるライブレッスンを提供している国内唯一の企業です。定員は1レッスンで15名ですが、定員がいっぱいになった後でも、視聴だけできるギャラリー枠で無制限に参加することが可能です」
 ソエルは、ライブ配信のシステムを自社で構築しているのが大きな強みになっている。ベンチャーを中心にすでに同じようなサービスを手掛けている企業は少なくないが、ほとんどは「ズーム」など他社製のオンライン会議プラットフォームを活用したもの。蒋社長によると、そうしたオンライン会議システムは、ビジネスミーティングの場面での利用を前提としているため、見ず知らずの人が集う運動系のレッスンには適していないという。インターネットのライブレッスンは気軽に参加できる半面、特に女性利用者にとって「化粧をする前の素顔を見られたくない」「盗撮されて知らないところで公開されるのが怖い」など、プライバシーが公開されてしまうことに対する不安が生じやすいからだ。
 「自分の体の動きを先生にチェックしてもらうのはいいけれど、ほかの参加者からは自分を見られたくないというのが利用者の本音だと思いますが、それを回避する手法は既存のグループレッスンでは存在しませんでした。そこで当社のライブレッスンは、講師は参加者全員の動きを見ることができますが、参加者からは講師だけしか見えない仕組みにしたのです。この点が大きな強みになっています」(蒋社長)
 ライブレッスンは5時から24時までの間に1日約100本実施。内訳は7割がヨガで、残りが筋トレや有酸素運動系のプログラムになっている。新型コロナウイルスが猛威を振るう前から人気は高まっていたが、声高に「ステイホーム」が叫ばれるようになってからはさらに利用者が増え、月額約6000円で何回でもレッスンを受けられる12カ月の年間契約コースを選択する利用者も多いという。
 「2019年11月に男性向けプログラムの提供を開始し利用者層の拡大を図った結果、年明けから顕著な伸びがありました。もともと当社のサービスはフィットネスジムに通うのが物理的に難しい人や、通ってもなかなか続かない人の利用が多かったのですが、緊急事態宣言が発出されフィットネスジムが軒並み一時閉鎖を余儀なくされた後からは、ジムに通っていた人が無料体験で試しに利用してみて気に入って通い続けるケースが増えています。具体的な数字は開示していませんが、4月の売り上げは対前年同月比5倍を突破しました」(蒋社長)
 オンラインレッスンの特性に適した講師が多数在籍しているのも同社の特徴の一つ。リモートで指導するために必要なコミュニケーション能力を厳しく見極めており、「ポーズのきれいさやルックスの良さでリアルスタジオでの他のオーディションでは採用になる人材でも、当社ではコミュニケーション能力や接客力の観点で不採用になるケースもある」という。
 厳しい採用をくぐりぬけた300人を超える講師陣と、生徒のプライバシーに配慮したオリジナル配信プラットフォーム、1日で100を超えるリモートレッスンを提供できる運営能力を含めた総合力が、月次解約率1桁台前半という高いリピート率獲得につながっているのである。

大手ジムとの協業も視野
 14年4月に設立された同社は当初、アニメや漫画を対象としたキュレーションメディアの運営を手掛けていた。このメディアを軌道に乗せた後に事業譲渡し、「IPOを目指せるポテンシャルのある事業」(蒋社長)として白羽の矢を立てたのがフィットネス分野だった。各種調査で、ジム通いが続かないユーザーが多いという現実が明らかになっており、運動習慣を身に着けることができる持続可能なフィットネスソリューションへのニーズは大きいと判断したのである。
 折しもオンライン英会話サービスが定着してきていたご時世。具体的なビジネスモデルとして蒋社長は、ヨガをはじめとしたフィットネスレッスンをオンラインで実施する方法に可能性を見いだした。キーワードは双方向性である。
 「画面越しにトレーナーがいて褒めてくれたり、自分の名前を呼んでくれたり、体調を聞いてくれたり、その場で動きにアレンジ加えるアドバイスをしてくれたりすることで、自宅にいながら実際のレッスンを受ける体験ができると考えました。実際モニター協力してもらった生徒からは『ユーチューブの動画とは違った緊張感がある』『その場で動きを矯正してくれるのでスタジオで受けるのと同じような利点がある』との意見が多数寄せられました。モニター協力者からの意見に手ごたえを感じたのが、本格運用に踏み切る一つのきっかけになっています」
 こうして17年6月、女性向けのオンラインフィットネスレッスンとしてサービスを開始したSOELU。質量ともに充実したプログラムとリーズナブルな価格設定が評判を呼び、さらに新型コロナウイルス感染拡大にともない他人との接触を避ける機運が高まったことで急激に生徒数を増やしている。蒋社長は今後、50〜60代の中高年層へのターゲット拡大や大手フィットネスジムとの協業を検討していくという。
 「ユーザー層の拡大にともない、ダンスエクササイズなどの有酸素運動やダンベルを使った部位別の筋トレなどプログラムの幅も広げていきたいですね。さらに新型コロナウイルス問題が終息した後は、フィットネスジムとの協業も検討しています。ジムがユーザーの退会抑制を目的としてオプションプログラムとして当社のサービスを活用する形を想定しており、2030年にはリアル店舗とオンライン含め年間有料会員100万人の獲得を目指しています」

COMPANY DATA
SOELU株式会社
設 立 2014年4月
所在地 東京都港区六本木5-9-20 六本木イグノポール 507号室