新型コロナウイルスが依然として猛威を振るうなか、出羽紙器製作所が自社の経営資源を有効活用して製造・販売する段ボール製パーテーション「だんぱーて」が話題だ。製品の概要と開発の背景について小林正臣社長に聞いた。

 出羽紙器製作所は1964年創業の段ボールメーカー。顧客のニーズをつぶさに拾い上げる営業力、目的や用途に適した製品を素早く形にする技術力が強みで、食品メーカー、出版社、通販会社など業界を問わずあらゆる企業が同社の段ボールを活用している。SDGsに対する意識も高く、環境に配慮した素材を製品づくりに用いていることを示す「FSC認証」を2017年に取得。最近は脱プラスチックの流れをくんで段ボール製緩衝材の製作も手がけている。
 「当社は『お客さまの要望に最適な段ボール製品を作り上げる』ことを強く意識しています。例えば、『デジタルカメラを配送するための段ボール箱を作ってほしい』というオーダーを受けたときはカメラの個数は1個か複数個か、送り先は法人か個人か、どのくらいの耐久性が望ましいのか、などと細かいニーズをヒアリングしたうえで設計を行っています。また、注文品は1日でも早く完成させ、お客さまに納品できるようスピーディーかつ高品質な製品づくりを心がけています」(小林正臣社長)
 そんな同社も新型コロナウイルスの影響を受けており、物流用の段ボール需要が2月以降漸減。業績もじわじわと減退しており、従業員の手待ち時間も増加傾向。小林社長も「どうしていくべきか……」と今後の打ち手について考えあぐねていた。

わずか11日で製品化
 転機が訪れたのは4月3日。「鳥取県庁が庁内の感染対策の一環として市販の段ボールシートを衝(つい)立(たて)に利用している」というニュースを小林社長が偶然目にしたことがきっかけだった。小林社長は即座に「ウチでも作れるんじゃないか」と思い立ち、自社のデザイン部門に段ボール製パーテーションの設計を提案する。
 「はじめは社内で使うことを想定していましたが、試作品の出来栄えが想像以上に優れていたので『これを社内に留めておくのはもったいない』と思い、社外向けに提供することを決めました」(小林社長)
 「だんぱーて」の試作品が完成したのは4月9日のこと。その後、社内での製品テストを経て14日に完成品第1号を地元の医療機関、取引金融機関、自治体の窓口等に無償で贈呈。当時は緊急事態宣言が発出された直後ということもあり、コロナ禍でも職場に出勤せざるを得ないエッセンシャルワーカーの感染防止に役立てられた。あわせて取引先や一般企業向けの販売もスタート。贈呈先からの紹介やSNSでの情報発信が功を奏し、17日には販売数が1000個を突破。その後2週間足らずで1万個超を売り上げるなど、「だんぱーて」の評判は瞬く間に広がった。
 このように、製作開始から販売までに要した日数はわずか11日。短いスパンでの販売を実現した背景には、小林社長のモットーである「スピード重視」の意識が社内に浸透し、設計から製造、配送まで全従業員が一丸となって取り組めたことが大きいという。
 「従業員には『1日も早くお客さまに製品を届けるためにはどうすればいいか』を常に考えながら仕事をするよう口酸っぱく言い続けてきました。特に当時は新型コロナウイルスの感染者が日を追うごとに増えていたので、少しでも早く、1カ所でも多くの場所に『だんぱーて』を届けるために、従業員たちと意見を出し合っていました。例えば、パーツと手順書を同梱(どうこん)してお客さまで組み立ててもらうようにする、専用のECサイトを開設して受注管理しやすいようにするなど、完成品を一刻も早く使ってもらえるよう工夫を重ねた結果が短期間での販売につながったと思います」(小林社長)
 一方で、製品づくりに関してもユーザーや従業員の意見を参考にしながら適宜改良を重ねている。例えば、「ACアダプターを通す〝穴〟があれば便利」というユーザーからの意見が多く寄せられたことを受け、現在の「だんぱーて」にはすべてACアダプターを通すための空洞を設けてある。このように今取り扱っている製品にはさまざまなマイナーチェンジが行われており、今後も意見や感想等を取り入れながら改良を重ねる方針だ。
 また、注文が相次いだことで当初懸念されていた従業員の手待ち時間の問題も解消。それどころか現有人材だけではカバーしきれないほどに業務量が膨れ上がったため、短期のパート・アルバイトスタッフを新たに雇用。コロナ禍で仕事を失った高速バスの運転手やワーキングホリデーを利用する予定の若者などをアルバイトスタッフとして採用することで難局を乗り越えたという。

「今は社会に貢献するとき」
 「だんぱーて」の好評を受け、5月中旬には高さや奥行きを自在に調節できるサイズ可変タイプの「だんぱーてPlus」と小・中・高校向けの「だんぱーてSchool」という2種類の製品を相次いでリリース。ラインアップを充実させることでニーズの拡大にも柔軟に対応している。料金も385〜1560円(税込み)と市販のアクリルパーテーションに比べて低価格で販売しているが、ここにも「1カ所でも多くの場所で使ってほしい」という小林社長の強い思いが表れている。
 「『だんぱーて』だけでコロナ禍による収益減少を補てんしようとは考えていません。それよりも今は社会に貢献するとき。コロナ禍の終息に寄与することが、結果的に業績の向上につながると考えています」
 特許権や実用新案権を申請しておらず、「商機があるなら設計をまねて作ってもらっても構わない」と小林社長は補足する。
 段ボールはステンレスやプラスチックなど他の素材と比べてウイルスの残存時間も短く、処分も簡単。出羽紙器製作所が提供する「だんぱーて」シリーズは飛(ひ)沫(まつ)感染を防ぐための頼れるツールとして、これからも活躍することだろう。        

COMPANY DATA
株式会社出羽紙器製作所
設 立 1964年7月
所在地 東京都板橋区上板橋2-38-11タカマンビル3F
売上高 約20億円
社員数 約100名