しゅれすた・しょうた
1989年ロンドン生まれ。父はネパール出身、母は日本出身のダブル。新潟県小千谷市で幼少期を過ごし、その後は東京都目黒区に在住。学生時代は建築を学びつつ、フォトグラファーとしても活動。2013年新卒で読売広告社に入社。営業、デジタルメディアバイイング・戦略立案、商品開発、マーケティングなどさまざまな領域で実績を重ねる。博報堂グループ社内ベンチャー制度を活用し、2019年にROOTsを設立。

日本唯一の体験特化型ふるさと納税サービス

 「地域に根を張るすべての人を支援する」をミッションに掲げる当社は、日本で唯一の体験特化型ふるさと納税サービス「さといこ」を提供しています。ふるさと納税は、応援したい自治体を選び寄付をすることで、寄付した自治体から返礼品を受けとることができる制度です。加えて控除額内であれば寄付額から実質負担額2000円を差し引いた金額が所得税と住民税から控除されます。「さといこ」は北は北海道から南は鹿児島県の屋久島まで約50の自治体で利用されており、地域の事業者と協力しながら体験型返礼品プログラムの企画開発をしています。体験型返礼品を100品以上開発した自治体もあり、国内では最大級になります。
 さといこの最大の特徴は、「エリア」「いつ」「何を」の三つの条件で、体験プログラムを検索できること。希望する地域、体験日、体験の内容でプログラムを選択できる仕組みです。
体験の種類はさまざまですが、ナイトタイムエコノミーなどの経済インパクトを鑑み、宿泊を伴う商品に特に注力しています。旅行サイト同様にカレンダーから日付指定で予約ができる使い勝手の良さが特長で、有力な観光資源以外にも川や海などの地域資源、自治体の特色や魅力を生かしたプログラムを開発しています。
 また返礼品提供者の紹介ページを設けたことで、返礼品事業者に「会いに行きたくなる」ことも他のふるさと納税サイトにはない大きな特徴です。例えば秋田県仙北市の地元農産品を用いてオンラインで料理づくりを指南するプログラムは、地域おこし協力隊の方を副業で採用し、返礼品を共同開発しました。地域おこし協力隊の方が入ってくれたおかげで、返礼品を提供してくれる農家のご夫婦の顔が見えるようになり、応援したいという気持ちから人気の企画となっています。
 またサイト内では体験の魅力をよりイメージしやすくするために、コンテンツの粒度にも気を配っています。集合から体験の段取りなど当日のスケジュールをできるだけ詳しく記載しているほか、「さといこ通信」という記事コンテンツでも積極的に地域の魅力を発信しています。
 さといこの利用者に感想を聞くと、「体験できるのが面白そうなので今後も継続したい」など、これまでふるさと納税を使っていなかった人たちが新たに利用を開始するきっかけになったという声が多く寄せられています。さらに「返礼品はもう十分もらったので別のものがやりたくなった」という既存ふるさと納税ユーザーの方、あるいはさといこのビジネスモデル自体に純粋に賛同していただける方などもいます。

都心部から地方へヒトの動きを
 既にふるさと納税サービスを利用した方はお気づきになると思いますが、「さといこ」は他社のサイトとは構造が全く異なります。ふるさと納税ユーザーは、その多くが首都圏や都市部に居住しており、ネットショッピングと同じ感覚で返礼品を選んでいることが大半でした。数年前、私がユーザーとして初めてふるさと納税のサイトを見たときに「日本人は本当にこんなに牛肉が好きなのか」という疑問がわくほど肉の写真がずらりと並んでいました。旅行好きかつ、特色ある地域を体験するのが何より好きな私にとって、当時のふるさと納税のあり方は、それぞれの地域が本来持っている競争力を放棄しているかのように映りました。
 私は建築を学んでいたのですが、ヒトが窓やドアを開けて風を通さないと建物はすぐに傷んでしまいます。この考え方は地域にも通ずるのではと思いました。都市部に向け、日本中からモノが一方的に集まる構造とは別の手法で、都心部から地方へヒトが動く逆向きの流れをつくり、地域にヒトとカネの風通しを生み出したい、そうした思いからこのサービスが誕生しました。
 伝わっていなかった地域の魅力を生かして生み出す体験型返礼品は、地域事業者の意見を聞きながら企画するため少し時間がかかります。しかし本当にステキな方々と商品を考え、彼らが出品してくれることは地域にとって大きな財産になっていると思います。まさに人材こそが地域のこれからの経営資源であり、さといこではその方々と体験を通してつながることができるのです。
 あくまでふるさと納税はきっかけの一つで、その関係性が未来につながっていくことを私たちは望んでいます。なかにはスマホの使い方が分からない方と地域の20代の方が連携して出品したケースもあり、より一歩踏み込んだ形での協業に取り組んでいます。一つ一つは小さな取り組みに見えますが、地域にとっての大きな前進を日々実感できることは非常にうれしく思ってます。
 さといこの取り組みに賛同し、契約する自治体も着実に増えてきたところに新型コロナウイルスの影響を大きく受けました。日本全体を自粛ムードが覆っていた4月上旬、コロナ禍における一つ目の打ち手として、ビデオミーティングツールなどを活用し、自宅にいながら地域体験を行える「おうち体験」のサービスを開始しました。さまざまな企業で取り組みが展開されていますが、当社はいち早くオンライン体験の提供を発表しており、自治体とも連携して素早い対応ができたと思います。
 コロナが経済に与える影響がすぐになくならないことは確かですが、海外旅行に行けない気持ちをぶつけるのは国内しかありません。8月には、日本航空、ジャルパックと連携し、JAL航空機と現地宿泊を組み合わせた「パッケージツアー」による寄付の受付も開始しました。マイクロツーリズムや「旅の地産地消」といった国内旅行市場の動向に合わせて、地域の事業者を支援していく方法を追求していきたいと思います。
 モノの返礼品が9割以上を占めているふるさと納税市場において、コト消費、体験の領域をまずは3割まで増やしていくのが当社の目標です。「旅行はふるさと納税で」という国内旅行の新しい需要を創造していきたいですね。