新型コロナ感染症が人々の口の端に上り始めた今年1月、アクティブリゾーツ裏磐梯(大和リゾート)の皆川大樹副支配人は、公益財団法人野口英世記念会(野口英世記念館)に野口由紀子課長を訪ねた。野口英世記念会の理事長は、元国立感染症研究所長の竹田美文氏。皆川副支配人は述懐する。
 「2年ほど前にグランデコリゾートさんとコラボしてスタートした『プロフェッショナルプログラム』に竹田先生の感染症に関する講演プログラムを付け加えれば、より多くのニーズが見込めるのではないかと考えました」
 プロフェッショナルプログラムとは、グランデコリゾートが展開する富良野自然塾(倉本聰塾長)とアクティブリゾーツ裏磐梯のロハス食育プログラムを組み合わせ、「SDGs+教育旅行」として学校などをターゲットに営業活動を行ってきたもの。
 「とはいえ、昨年まではなかなか受注が進まず、苦戦していました。そんなとき、感染症の大家である竹田先生の存在が浮かんだのです」(皆川副支配人)
 皆川副支配人から相談された野口由紀子課長は、さっそく竹田理事長に企画を提言。感染症の専門家としての参画を促し、快諾を得た。野口課長は言う。
 「竹田は年初から、新型コロナ感染症に対してかなりの危機感を持っていました。そんな流れのなかで、われわれにも何かできることがあるのではと、皆川さんの企画に賛同させていただきました」
 野口課長によると、竹田理事長の講演は「感染症とは何か」「人類と感染症の闘いの歴史」「流行中の感染症」「感染症に打ち勝つためには」という四つの柱からなり、学生の年齢レベルに合わせたかみ砕いた内容を用意しているという。
 皆川副支配人は、リニューアルされたプロフェッショナルプログラムを持って旅行代理店や近隣の学校を回った。すると、以前とは反応ががらりと変わった。SDGsという切り口だけでは、これまでなかなか教育現場の懐に入っていけなかったが、感染症を加えることで一気にニーズが沸き上がってきたのだ。5月中旬からわずか1カ月間で県内外の50校以上から引き合いがあり、受講者数は3000名超にのぼった。
 
「地球環境」「食育」を学ぶ
 竹田理事長による講義がプロフェッショナルプログラム躍進の起爆剤になったのは確かだが、もともと、同プログラムの二本柱の商品力は高い。
 まず、富良野自然塾。
 脚本家の倉本聰氏が提唱する自然環境プログラムで、演劇の手法を取り入れ、見る人を劇中に引き込みながら「地球を学ぶ」プログラムだ。
 裏磐梯グランデコ東急ホテル(グランデコリゾート)の小山徹さんは「震災後くらいに、倉本さんとお会いする機会があり、富良野自然塾を紹介いただきました。倉本さんの脚本に基づいて自然を学ぶ2時間のコースを実際に体験してみて感動し、ぜひここ裏磐梯にも開塾したいと……」
 2018年7月、富良野自然塾裏磐梯校がスタートする。当時からインストラクターをつとめる佐藤弘紀さんらが、1カ月間、富良野自然塾から主に演劇の指導を受けたスキルで参加者を引き付ける。
 「『緑の教室』『裸足の道』『石の地球』『46億年・地球の道』の四つのプログラムを楽しく演出し、最後は〝われわれはこのままでいいのか〟と深く考えさせられる構成となっています」(佐藤さん)
 ちなみに取材当日、佐藤さんが「デモ」を披露され、「楽しさ」と「分かりやすさ」「問題提起」などが凝縮されているプログラム内容を体感した。
 さて、プロフェッショナルプログラムのもう一つの柱が「ロハス食育環境プログラム」である。
 これは、アクティブリゾーツ裏磐梯で開催されるもので、ロハスアカデミー公認のロハスコンシェルジェが監修する食育プログラムである。ここでは「医食同源」「地産地消」「身土不二」など日本の伝統的な食のコンセプトや「もったいない」「命をいただく」といった日本人の独特の価値観に基づいた学びの場を提供する。
 「子牛は粉ミルクで育ち、母牛のミルクは人間が飲む」「牛肉100グラムのために畳2枚分の森林が破壊」「日本の年間フードロス約643万トンがあれば世界で飢えている7〜8億人の命を救うことができる」「次世代の注目食材は昆虫」などの事実をちりばめながら、2050年の人口100億人時代を見据えた食育環境を提言するプログラムになっている。
 
アートをテーマに思考力を養う
  アクティビティー(富良野自然塾)とロハス(食育)、感染症という三つのアイテムが相乗効果を上げながらニーズを掘り当てていく状況に、さらに加えられようとしているのが、シュルレアリスムの巨匠サルバドール・ダリの作品346点を収蔵していることで知られる諸橋近代美術館での「STEAM教育プログラム」だ。このプログラムでは、ダリの数式をもとにした作品や当時最先端の科学的知見を取り入れた作品を題材にして、学芸員と参加者が会話をしながら意見交換を行い、対話力や思考力、探求心などを養う。
 主任学芸員の佐藤芳哉氏は「STEAM教育は、まさにSDGsを達成するための人材に求められる能力を養成しうるものだと思います」という。
 今後、プロフェッショナルプログラムは、四つの柱で実践されることになる。当然だが、関わる組織が増えれば増えるほど営業力は強化される。皆川副支配人は言う。
 「裏磐梯の観光活性化のための協議会を共同で立ち上げるなど4者の連携もよく取れているし、なによりそれぞれが自信をもって生き生きと動いています。その熱がお客さまに伝わればいいですね」
 さて、この〝新生〟プロフェッショナルプログラムは、9月1日から来年2月にかけていよいよ実践される。ウィズコロナ時代に〝サステナブルツーリズム〟の切り口で立ち向かう「裏磐梯連合」に要注目である。