肺がんや塵肺、悪性中皮腫といった健康被害を及ぼす物質として広く知られている「石綿」(アスベスト)。従来は手作業で行われるアスベストの除去工事を国内で初めて機械化した会社がある。今年で創業30年を迎えるトッププランニングJAPANである。

 トッププランニングJAPANは東京都に本社を置く総合建設会社。1990年の創業以来、駅舎の建造やプラットホームの修繕といった鉄道建築、商業施設・オフィスビル等の天井防災工事、建物の解体・リニューアル工事など多岐にわたる建築工事に携わってきた。同社が標榜(ひようぼう)するのは「〝問題解決型〟の建設会社」。受注した仕事をただ黙々とこなすだけでなく顧客が抱える潜在的な課題やニーズをつぶさに拾い上げ、工事を通して問題解決を図るというのがモットーだ。なかでも特に力を注いでいる事業が「アスベストの除去工事」である。会社を率いる村山哲生社長はこう話す。
 「もともと当社はアスベスト処理に用いる溶剤の製造販売を手がけていました。多くの建設現場に溶剤を納めるなか、次第に『アスベストの除去もお願いしたい』という要望を耳にするようになったことから、工事そのものを積極的に請け負うようになったのです。その後、徐々に業容を拡大し、現在はアスベスト除去に限らず幅広い建築工事に携わっています」
 「建設業界のなかでも当社はまだまだ後発企業。だからこそ、自社ならではの強みをとことん追求する必要がある」と村山社長は補足する。が、トッププランニングJAPANは、ことアスベスト除去に関しては高い技術力と豊富なノウハウを誇る会社として、業界内で一目置かれているという。それもそのはず、同社は国内で初めてアスベスト除去工事の「機械化」を実現した会社なのだ。

独自の処理工法を確立
 アスベストを取り除く方法は数多く存在するが、なかでもオーソドックスなのが「?離剤を塗布し手作業で削る」というもの。しかし、このやり方では作業に膨大な時間がかかるうえ、塗膜の下地に含まれるアスベストを除去することが難しい。つまり、一般的な方法ではアスベストの含有建材を完全に取り除くことは不可能というわけだ。
 一方、同社が確立した方法(「バキュームウォータージェット工法」)の場合、超高水圧を利用し専用の除去器具を使って建材を削るため、下地に含まれるアスベストまで完全に取り除くことができる。除去工事に使った作業用水はバキュームカーで真空吸引し、同社が所有している専用の水処理プラントで適切に処理を行う。ちなみにこの工法は面積が1000平方メートル以上の建物を対象にしているため、大掛かりな除去工事でもスムーズかつ安全に作業を進めることができる。
 施工実績も豊富だ。2014年に首都圏にある大手企業の社員寮で行われた除去工事を皮切りに、民間企業のオフィスやテナントビル、公立学校の校舎などあらゆる解体現場でこの工法が用いられた。
 村山社長は言う。
 「バキュームウォータージェット(VAWM(バウム))工法では、従来の工法では困難だった工期の短縮と下地に含まれるアスベストの完全除去が実現できます。作業用水も当社独自の水処理プラントで厳重に後処理を行うので循環利用が可能となり、工事コストの削減につながっています。また、アスベストは最終処分場で処理するため、環境への影響もありません。ちなみに、この工法はJR西日本ビルトさんとパナソニック環境エンジニアリングさんと当社の3社で共同特許を取得しています」
 VAWM工法の確立にあたり、アスベストや工事技法に関する勉強会を何度も行ったという村山社長。「これらの技術を実用化するまで、言葉では言い尽くせないほどの失敗を重ねました。JR西日本ビルトさんやパナソニック環境エンジニアリングさんから適宜アドバイスをもらいながら試行錯誤を繰り返し、やっとの思いで実用化にこぎ着けたときはとてもうれしかったですね」と述懐する。

「技術の普及」に注力
 同社が本格的に建設業界に進出するきっかけとなったアスベストは耐火性、耐久性、防音に優れていることから、高度成長期を中心に主に外壁塗装用素材として用いられるようになった。しかし、1970年代に入り、アスベストによる健康被害が社会問題化すると政府は使用を規制。75年以降含有量が段階的に制限され、現在は使用禁止となっている。
 「アスベストを含む建物は今も全国に280万棟ほど存在すると言われています。そのほとんどが高度成長期に建てられたもので、耐用年数的にもそろそろ解体や改装工事が必要となる頃。さらに今年の5月には『大気汚染防止法』が改正され、建物解体前のアスベスト有無の調査と各都道府県への結果報告、含有率にかかわらずすべてのアスベスト含有建材への飛散防止対策などが義務化されました。アスベストの除去や処理に関するルールは今後より一層厳しくなることでしょう」(村山社長)
 そんな村山社長の次なるテーマが「アスベストの適正処理に関する啓蒙(けいもう)活動」だ。その一環として、今年の7月にVAWM工法の普及・啓発を行う組織(「一般社団法人日本アスベスト処理技術機構」)を設立し、代表に就任。アスベストの適切な除去工法を広めるための旗振り役となった。
 村山社長の話。
 「VAWM工法に類似した方法で除去工事を行う模倣業者が増えていますが、類似工法ではアスベストを適切かつ安全に処理することはできません。なかにはアスベストを含む洗浄水を解体現場にそのまま放流するという悪質な業者もいると聞いています。このままでは現場作業員はもちろん工事現場の近隣に住む人々までも健康被害にあう可能性があると思い、VAWM工法を普及するための組織を設立しました。現在は当機構への加盟企業を募っているところで、今後は座学や実地研修などを通してVAWM工法を広めていきたいと考えています」
 世間ではもっぱら新型コロナ感染症が取り沙汰されているが、健康被害への影響度を考えればアスベスト対策も見過ごすことはできない。同社がVAWM工法の共有に取り組む背景には、「誰ひとりとしてアスベスト被害に苦しむことのない社会」を目指すという村山社長の強い意志が表れている。

COMPANY DATA
株式会社トッププランニングJAPAN
設 立 1990年5月
所在地 東京都中央区日本橋小網町3-14 茅場町K1ビル7階-B
売上高 約20億円
社員数 約50名