建設相互測地社は東北地方を地盤に補償コンサルタント業を営む会社である。補償コンサルト業とは、土地や建物の調査や評価、営業補償額の算定など、公共用地の取得業務全般を手がける国土交通省の登録業務だ。住民向け説明会や用地交渉などの業務も行うなど、地方自治体が公共事業を進めるにあたって必要不可欠な業務を担っている。

 社員数35人のうち60歳以上は10人、65歳以上が8人だ。最高齢はなんと82歳。ここ10年東北地方は東日本大震災後の復興事業の集中などで土地の買収がかなり進んだが、その間経験豊富な同社のベテラン社員は大車輪の活躍を見せてきた。

 なにせ用地交渉は経験とノウハウ、根気がものをいう業務である。百戦錬磨のベテラン社員の腕は欠かせない。「2019年度高年齢者雇用開発コンテスト」で厚生労働大臣表彰優秀賞を受けるなど、高齢者が生き生きと活躍する会社として知られるようになった同社だが、そこに至るまでは紆余曲折があった。安孫子健一社長はこう振り返る。

 「昨年ようやく20代、30代の人材を中途採用で3名採用できましたが、それ以前は10数年にわたり若手をなかなか採用できない期間が続きました。原因はなんといっても測量や土木関係を教える専門学校や高校の専門科が大幅に減少したこと。若い人材の獲得ができず技術の継承が難しくなる一方で、入札制度がここ10年で大きく変わりました。それまでの価格重視から、技術者資格や実績を重視するようになったのです。とはいえ勤務年数の非常に厳しい条件のものもあるなど資格はそんなに簡単に取れません。すでに資格を持っているベテラン技術者が担う役割が一層高まってきたことから、『生涯現役』という基本方針を定めた雇用制度に変えていくことにしたのです」

 60歳を過ぎた後も意欲がある社員については継続雇用する再雇用制度を2017年に見直し、継続雇用年齢を希望者全員65歳まで引き上げた。さらに翌2018年には定年年齢を65歳に引き上げ、定年以降も健康面での不安がなくやる気さえあれば年齢の上限を設けることなく継続雇用を実施している。

 仕事の見える化を推進

 定年後の継続雇用者は原則的に正社員として雇用しており、役職定年などの規定もないことから、70歳を超えた常勤管理職も存在する。従業員の処遇について若手との差はほぼなくしたことが、高齢者が高いモチベーションを維持できる大きな要因となっている。

 安孫子社長はさらに、ノウハウや技術を蓄積してきた高齢従業員に対しある大きな期待を寄せている。若手社員への技術承継に必要な「仕事の見える化」への取り組みである。

 「震災前に当社はISO9001を10年以上にわたり取得していました。震災後にいったん取り下げていましたが、最近若い人材も入社してきたことから、先輩社員が作りあげたISOに再びチャレンジすることにしました。そのために必要なマニュアルや作業手順書などの作成作業を高齢社員を中心に進めています」

 補償コンサルタントという業務の内容から、同社は公共工事関連の仕事が圧倒的に多い。総合評価落札方式の点数を上げるために、高齢者を中心に品質、コスト、納期の「QCD」を高い水準に保つQCD活動に積極的に取り組んでおり、発注者からの高い信頼獲得につながっているという。

 40歳以上は脳ドック受診

 高齢社員に対する健康面の配慮も特筆すべきである。全国健康保険協会福島支部が主催する健康事業所宣言事業に3年前からエントリー、健康づくりに取り組む企業であることを社内外に積極的にアピールしている。

 「全従業員が毎年人間ドックを受診していますが、60歳以上の社員については、動脈硬化の早期発見を目的に5年ごとに頸動脈超音波診断を行っています。さらに昨年から、40歳以上は5年ごとに脳ドックを受けることにしました。このほか社内の各事業所に血圧計や血管年齢を検査できる機器を設置しており、社員が自主的に健康管理できる環境整備に努めています」(安孫子社長)

 このほか測量業務での負担軽減のためドローンの試験的な導入もはじめた。安孫子社長は、今後も高齢社員の能力を生かせるような体制づくり、若い世代へのスムーズな技術継承に取り組んでいく。

 「継続的な若手の採用を計画しており、高年齢者の技術や知識をどのように伝えていくかは当社にとって大事なテーマであり続けます。いずれは高年齢者の方は70歳、75歳となっていくわけで、今のところは元気で定年前と同じ業務をやっても支障はありませんが、将来は体力的に難しくなってくる可能性もあります。年齢に見合った業務の見直しを行い、より健康で仕事に対するモチベーションを維持しながら取り組んでいける体制をしっかりつくっていく必要があります。山や川の調査など外へ出ていく仕事、書類作成など室内でやる仕事、それらを調整する仕事の人員配置を含め、ベテラン社員が蓄積した知識やノウハウを最大限に生かせるような若手と高齢者の組み合わせなど、社内の組織のあり方を将来に向けて考えなければいけないと思っています」

 

COMPANY DATA

株式会社建設相互測地社

創 業 1969年5月

所在地 福島県郡山市並木4-12-18

売上高 約3億円

社員数 35名